終わり。
少女の楽しげな声が中庭に響く。
ふわっふわっの金髪に優しい緑の瞳がキラッキラッ。
とても愛らしい、エドワードが目に入れても痛いはずがない程に溺愛しているお姫様。
ティアラ・ベル・リオン。
可愛い笑顔でにこっにこっに、空を飛んでいる。
なんかでっかい羽の生えたトカゲに乗って。
そういや、飛竜って火は吹くのかな。
のんきに空飛ぶお姫様をみながらボマスは思う。
「姫様、はしたないのでそろそろ降りてきて下さい。ドレスで動物に乗るのは禁止です」
ボマスの隣で女官長(俺のできた嫁!)が言う。
「えーっ、空飛ぶティアも可愛いのに?」
少年よ、妻に口答えなんて勇気あるな。
その勇気ちょっとくれ。
「ドレスではダメなだけです。騎乗用の服をつくりましょうね」
その優しい笑顔も俺にもちょーだい。
新婚の時は確かにあった妻の優しい笑顔。
いつのまにか笑顔が怖い俺ってなんだろう。
ぼんやり思ってるボマスの耳に、
「なんで、飛竜にティアが乗っているんだーっ?」
ー落ちてきたからに決まっている。
ちなみにウィルは、食べれなかった卵料理を王宮の一流シェフに作ってもらえて大満足。
美味しそうな、幸せそうなその顔にティアもにこっにこっに。
若いカップルにまわりはホンワカ。
リオンの1番偉いはずの王様だけが不機嫌なのは、まあこの先もずっとだろう。
また白目をむいて倒れたエドワードの顔に、はっきり雑巾をなげつける妻を見ながらボマスは空を見上げた。
優雅に飛ぶ竜と姫。
「きょうも平和だなぁ」
「平和が1番でしょ」
ご丁寧に口も鼻も濡れ雑巾で覆いながら妻も空を見上げて笑った。
ーあっ、やっぱ俺おちてる。
出会ったときからずっと、ボマスは妻に落ちている。