その二
ーあ、落ちた。
それを見たウィル・フィルの第一印象だ。
空高く待っていた大鷲の頭に兄が投げた小石がクリーンヒットどころか大ホームランであたったのだ。
ちなみにウィルの兄が狙ったのは およそ3メートルほど離れた木の上にいた鳩である。
落下してくる大鷲と楕円形の物体。
「ウィル、逃すな鶏肉だ!」
兄が叫ぶ。
もちろん、久しぶりの鶏肉だ。
牧場が家業だが養鶏はしていない。
卵を産んでくれる鳥はいない。
ウィルは鶏肉より卵が大好きな少年である。
なので
ーぽすっ。
と、受け止めた。
となりをズドンと大鷲が地面に突き刺さり完全ノックアウト。
ウィルの手の中というか腕の中に、どっかの世界にあるラグビーボールをひとまわり大きくした金色つやつやの卵をしっかりキャッチした。
ーそう卵を。
鷲はおちても食べれるが卵は割れたらたべれない。
「でかしたウィル!よくやった俺!さすが名投手」
いや、あんたが狙ってたの鳩だから。
とは思っても、優しい兄を大好きなウィルは言わない。
(金の卵、はじめてだ。どんな味なんだろう)
頭の中ではもう母に作ってもらう卵料理でいっぱいである。
大好物すぎてヨダレがでそうだ。
やばい、ヨダレなんかあの娘に見せられない。
口元を拭おうとした時。
ーピキッ、メリッ、ビシッ。
なんか卵が動いてる。
「ーん?」
まるで少女のように大きな黒い瞳がパチクリと瞬く。
「ぎゃあおっ!」
卵が割れて、ウィルに負けない大きな瞳と目があった。