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魔物とは

作者: 神崎翼

 リスポーンという言葉を御存じだろうか。ざっくり説明すると、殺されても同じ場所で再スタートするという意味だ。『スポーン』は産卵とか放卵という意味で、そこに『RE』、つまり再びという意味の言葉がくっついて出来た言葉である。

 魔物はリスポーンする生き物だ。死んだって生き返る。殺されたって生き返る。同じ場所で何度も何度も生まれ直す。死なないわけではない。どんなものにも終わるは来る。終わらないものしかない世界では、生まれることすらないのだから。ただ、きちんと死ぬまで生き返る。それだけだ。

 経験値稼ぎだとたくさんたくさん殺された。死ぬときに落とすアイテムがほしいからと何度も何度も殺された。はした金だなと悪態をつかれながら殺されて、一日何度も生まれ直した日もあった。まあ、そういうものだろう。人間にとって魔物は害悪、狩る対象でしかない。何回も何回も殺されて、でも死なないのだから、まあこちらとしても別に、という感じだ。

 何度も何度も殺されても、魔物はそういう生き物だから、もう一度生まれ直して人生の続きがある。何回だって甦る。それは、魔物にだけ許されている祝福だ。生まれたときに、きちんと死ぬまで生き続けられるようにと与えられた祝福だ。人間にも祈る神様がいて、その神様に正しく祈れば冒険の途中でも蘇れると聞いたけれど、魔物は元々そういう生き物だ。

 今日も殺された。生き残る日も来るけど、人間は賢しらな生き物だから、自分より弱い魔物しか狙わない。そして数が多い。徒党を組む。ときどき戦争をして数を減らしているようだけど、生まれるのも早い。でも、弱い。

 たくさんたくさん殺されることに、人間は耐え切れないらしい。だから殺されないようにと、いつもびくびくしている。可哀想だなと思う。魔物に生まれていれば、死ぬことを怖がることもなかっただろうに。魔物は生まれた場所で甦る。何度だって生まれてきておいでと、世界に祝福された生き物。人間は一生懸命祈って祈って、どうか救ってほしいとはいつくばってようやく生の続きを得られる。得られない人間もいるらしい。ますます可哀想だ。

 魔物は正しく死ぬ日を知っている。そこにあるだけでいいと世界に祝われていることを理解している。人間は生まれる時に生まれた理由を忘れるらしい。世界の上にただいるだけだから、自分と違うものを殺して、利用して、安心を得たいと怯えている。安住の地をもたない一族。たくさんたくさん殺して同じ種族同士でも争って数を減らして増やしてなんとか繋いで、今、心を折った冒険者が、冒険の書を破り捨てた。

 ああ、魔物に生まれて良かった。

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