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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ゆめのせかい

作者: なも

世界はある時からメルヘン〜でフワフワ〜な世界になってしまった。

その事実に気づいたのは私だけで、大事な友達とか、学校の先生にも相談したけどみんなメルヘン〜でフワフワ〜な世界を生きてるから分かってくれない。

だから私は旅に出ることにした。この世界を作った者を探し出して、世界を元通りにして貰うんだ。

旅は何年もかかったけど、私はやっとその根源を見つけ出すことができた。

世界の中心部のそのまた中心部。10畳ほどのキラキラとした部屋の中心で彼女は玉座に座っていた。

「あなたが全ての元凶ね!世界を元にもどしなさい!」

「どうして?なんでそんなことしなきゃいけないの?ここはみんなが幸せになれる場所なんだよ?」

「こんな甘い夢のような幸せは本当の幸せじゃない!幸せっていうのは、辛さや苦しみがあって初めて成り立つ。それが本当の幸せなんだ!こんな世界壊してみせる!」

私は部屋の奥にあるレバーに向かって駆け出した。きっとあれが世界を元通りにするスイッチなんだ。

「やめて!私はただ!幸せになりたかっただけなの!」

彼女の言葉を聞かずに私はレバーを引いた。

すると世界が崩壊して、全く新しい世界が再生されていく。

「ああ……アア……ァァァアアアアアアアアアアアアアンアああああぁぁぁぁぁああぁ………………」


世界は元通りになった。


気がつくと、私はアパートの一室にいた。

刃が出たままのカッターナイフと丸まったティッシュが散乱している物だらけの家。まさにゴミ屋敷と呼ぶに相応しい場所だった。

部屋のベッドの上に彼女は泣きながらうずくまっていた。

「夢の世界は終わった。これからは辛いこともあるかもしれないけど君は生きたいように生きるんだ。そうすれば現実世界でもきっと幸せになれる」

私はそう言い残して、部屋を出ていった。

しばらく外を歩くとすぐ近くに駅があることが分かった。綺麗な私鉄の駅だった。

初めての路線、駅だったが首都圏なので路線図さえ見れば帰り道が分かる。

私は家に帰ってメルヘンになる前の日常を過ごし、平和な日常に万歳をして眠りについた。


翌朝、朝食の時間にメルヘンでフワフワな世界のことを両親に話した。

案の定、「それはただの寝てる時の夢だろう」、と言われた。

だがあの時私が気がつくとアパートにいたこと、それがあの世界と地続きになっているなによりの証拠だ。

私と彼女以外はあの世界のことを覚えてないのだとこの時理解した。

私は朝食を食べ終え学校の準備をし、電車通学なので最寄り駅に向かった。

そこの電光掲示板には人身事故の情報が乗っていた。

昨日の私鉄の駅だった。

まさかと思って私はスマホでその人身事故についての情報を調べる。

彼女とぴったり一致していた。

私は学校と逆方向の電車に乗り、彼女の家を目指した。


遅延のためとてつもなく混んでいて大変だったが、無事彼女の家に到着した。

そのアパートの部屋の周りには沢山の警官がいた。

「あの、私この人の友達なんですけど……」

「ああお嬢ちゃん、遺書の相手はおそらく君だね。これを読んでもらいたい」

警官に手渡された原稿用紙3枚にも及ぶ遺書。

私は夢の世界を終わらせたものとして、それを読む義務があるだろう。

遺書を読み進めていくと、そこには彼女の生い立ちや考えが事細かに記されていた。

そうか、こんな人生では夢の世界にしか救いを求められなくなるな。

ちょっとの辛さも彼女には耐えられなかったんだ。甘えとかじゃなくて本当にこれが彼女の限界だったんだ。

そういう者は本当に夢の世界でしか生きられないんだ。


私は人間を、殺した。

そのままであれば救われたはずの人間を、殺した。

わざわざ辛い世界に連れ戻し、殺した。

人殺しだ。自分勝手なエゴで人を殺した。


こんな人間に生きる価値なんてなくって、


「まもなく1番線に電車が参ります 黄色い線の内側までお下がりください」


飛び込んだ。

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