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我、異世界にて暗躍ス  作者: 聖 ミツル
第1章 少年期
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第5話 検証




 あの頭の怪我を負ってから、メリーナ姉さんは、俺から離れようとしない。そして、侍女のエリスも前にも増して、俺に目を光らせている。


 これでは、ギフトの検証が出来ない……


 それに、ラビスとしての身体は、貧弱すぎる。いくら、手に余る程の能力を持っていても、それを行使するには、身体がもたないのではないかと思う。


 実際、少し走ろかと思って、屋敷の周りを回ってみたが、息切れはしなくなったが、足の筋肉が悲鳴を上げた。


 魔力で補完できるようだが、俺としては、この状態は好ましくない。


 体力づくりをしなければ……


 だか、それも、ままならない。屋敷の周りを走っていた時に、侍女のエリスが駆け寄って来て、すぐにやめさせられた。


 今まで、寝てばかりの生活だったから、心配するのは仕方ないとしても、これでは、いつまでたっても貧弱のままだ。


 さて、どうするか……


「ラビス、パンとって? 」

「あ、う、うん」


「ラビス、食事中にボーっとしてたらいけませんよ」

「はい、母様」


 すると、父であるスミスから、


「そういえば、今日、レナードからラビス宛に手紙が届いたぞ」

「レナード兄さんから? 」

「そうだ。きっと、祝福を授かったお祝いだと思うけどね」

「そうなんだ。ありがとう」

「レナード宛にお礼の手紙を書くといい」

「うん。そうするよ」


 この世界の紙は貴重品でとても高いらしい。普段なら羊皮紙を丸めた手紙が一般的なのだが、お祝いとして紙の手紙を送ってくれた。きっと、無理をしたのだろう……


「私もレナード兄さんに手紙を書いて送る」

「そうだな。レナードもきっと喜ぶよ」


「あとで一緒に書こう。ねっ、ラビス」

「うん」


「メリーナも来年は学院だな。そろそろ準備しないといけないな」


 父さんの言葉に、俺は目を光らせた。


 メリーナ姉さんが学校に行けば、自分の時間が作れるのではないか……

 それより、俺が学校の寮に入れば自分の時間が作れるのでは……


「父様、僕も学校に行きたい」

「ラビスも学校に行きたいのか? でも、あと5年経たないと皇都の王立学院には入れないぞ」


 という事は、10歳にならないと入れないって事か……

 隣のメリーナ姉さんが、何だかとても嬉しそうな顔をしてる。何故?


「ラビスは、私と離れたくないのね〜〜。もう、可愛いんだから〜〜」


 そう言う事か……

 もちろん、そんな事は無い。


「あと、5年か……10歳にならないと無理なの? 」

「皇都の学院はそういう決まりだからね」


「あら、私が通っていたクロウ勇国の学院は、5歳から入れたわよ」


 アマンダ母さんは、隣国のクロウ勇国の出身だ。それなら、そこに行けば、自分の時間を作れるかもしれない……


「僕、クロウ勇国の学校に行きたい! 」

「えっ、確かに、ラビスは、二男だから、隣国の学校でも構わないが、身体の事もある。もう少し大きくなったら考えてみよう」


 やはり、身体の心配をされたか……

 仕方ないが諦める訳にはいかない。


「もう、僕は大丈夫だよ。祝福を受けてすっかり、健康になったんだから」

「確かに、熱は出さなくなったけど、今は、まだ、時期尚早だ」


 結構、頑固だな。父さんは……

 まぁ、俺が父親でもきっと同じ事を言っただろうけど……

 でも、チャンスはこれしかない。


「でも、お願いします。熱も出さないし、それに体力づくりもしますから」

「ダメだ。この話はもう、おしまいだ」


 ダメだったか……


 俺は、無理もないと理解していたが、結構ショックだった。


 でも、そんな俺の様子を母親アマンダが見ていた事をその時は分からなかった。




◇◇



「ラビス〜〜そこは、もう、ダメ。むにゃ、むにゃ」


 メリーナ姉さんは、どんな夢を見てるんだ?


 相変わらず、俺のベッドで寝るメリーナ姉さんの寝顔を見て、俺は、彼女が絡ませている手と足を起こさないようにそっと外した。


 完全に抱き枕の代わりにされてるな……


 俺の自由になる時間は、メリーナ姉さんが寝たこの時しか無い。

 時間は、有限だ。有効に使わなくては……


 俺は、メリーナ姉の拘束を解き、ベッドから起き上がる。

 そして、窓から抜け出し、屋敷を後にした。


 向かう先は、ロクトの街の北側にある森の中だ。護衛騎士のフリードさんに「この近辺では、北の森が一番安全です。魔物も奥まで行かないといませんし」という情報を事前に聞き出しておいた。


 夜中なので、周囲が暗くて良く見えないのが難点だが、身体は子供でも中身は大人である。怖いという感情は無かった。もしかした、ギフト『精神耐性』があるからかもしれない。


 森を少し行くと、切り引かれた場所があり、ここでギフトの検証を使用と思う。


 もちろん、身体を魔法で強化してある。そうしなければ、ラビスの身体能力では、ここに来るのにも厳しいと思う。


「身体強化の魔法は、何とかコツを掴んだ。今日は、魔法を放ってみよう」


 俺は、風魔法をイメージする。最初は、風を起こして、先にある木に当ててみよう。


 この世界の魔法がどのようなものか俺は知らない。だが、イメージすれば発動するって事は、理解できている。


 右手を木に向けて集中する。身体に熱いものが手の先に集中してきた事がわかる。すると、突然、手の先に膨大な魔力が大気中から集まってきた。


 マズい……


 そう感じたが、遅かった。

 それは一気に放たれてしまった。

 凄まじい風が吹き荒れ、目の前の木々を薙ぎ倒して行く。


 止めなくては!


 俺は、手を空に向けてた。

 魔力を拡散するイメージをして、その風は消え去ったが、先に放たれた風は、雲に穴を開け、星空をのぞかせた。


 これは、とんでもないぞ……


 自分がやってのけた魔法という事象を恐ろしく感じた。


 威力を抑えなくては、魔法は使えない。まして、これを人に向けたらどうなることやら……


 俺は、そこに座り込み、どうやったら上手く制御できるのか考えていた。

すると、背後で『ガサッ』と音がした。


 マズい。誰かに見られたのか?


 俺は、音がした方を向いて、誰かいるか探した。

 しかし、誰もいない。


 良かった。さっきの風で木の枝が落ちたのか?


 俺は、もう、その音の事など気にしなくなり、次のギフトの検証を始めた。


「魔法は、しばらく封印だ。次は『衛星』を使ってみよう。


 俺は、『衛星』のギフトを使う。すると、ステータス表示のような表が表示された。


ーー《擬似衛星》ーー

観測衛星

※航行衛星

※気象衛星

※偵察衛星

※軍事衛星

ーーーーーーーーーー


 俺は、まず、観測衛星の項目をイメージしてみた。

 すると、この星の形が視界に広がりだす。


「おーーこれは凄い。まるでグー◯ルアースのようだ」


 俺は、まずこの星の大まかな概略を掴むため、表示されている球体を回してみる。


「大陸と海があるのは、地球と同じようだが、北極に等しい大陸のものはあるが、南極大陸は無いようだ。いや、規模は、小さいが、島はある」


 星の球体をグルグル回して、大まかな概要を掴む。


「さて、拡大ができるのか? 」


 何処を基点として中央と呼べば良いのかわからないが、ひとまず大きな大陸に近づいてみる。


 すると、赤い点を発見した。それをさらに拡大してみると、


「あ、これ、俺の頭だな。ここまで、詳細に見られるのか」


 これは、便利そうだ。


 表示されている右上に数字でデーターが表示されている。さらに調べてみると、どうやらこの観測衛星は、この星の経度、緯度を表示し、標高を始め温度や湿度、また、その大気中の酸素量や魔力量を測れるようだ。


「指定した場所の観測結果が表示されるのか。よし、次だ」


 次は、航行衛星をイメージする。しかし、何度やっても表示されない。それは、気象、偵察、軍事も同じように表示されなかった。


「レベルを上げれば見れるようになるのか? 」


 軍事衛星という物騒な衛星を除けば、これは『鑑定』と同じで部屋で試せそうだ。


 魔法は、今は、封印するとして、あとのギフトは、試した事のあるものばかりだ。


「そうと決まれば、体力づくりだ」


 俺は、この場所で、基礎体力をつけるための一通りの訓練をして、屋敷に戻った。



◇◇



 俺とメリーナ姉さんは、日中は、母様や侍女のエリスにこの世界の簡単な歴史や成り立ち、それと文字の読み書きや貴族としての礼儀作法を習っている。


 これは、学校に上がるための試験対策でもあるので、貴族の家庭では、家庭教師を雇って就学前に一通りの知識を学ばせるためだ。


 我が男爵家は、家庭教師を雇うお金が無い為、手の空いてる人がこうして、俺とメリーナ姉さんに勉強を教えてくれる。


 午後は、ダンスをレッスン練習をするらしい。メリーナ姉さんは、喜んでいたが、俺は、魔法の勉強がしたかった。


 午後になるとメリーナ姉さんがドレスに着替えてきた。


「姉さん、ドレス着て踊るの? 」

「そうよ。ラビスも着替えるのよ」

「えっーー! 」

「当たり前でしょう? さぁ、早く、早く」


 どうやら、俺は、メリーナ姉さんと踊らなければならないらしい。

 ラビスは、病弱だった為、ダンスを踊った事がない。もちろん生前の俺もだ。


「こうやってラビスと踊りたかったんだ〜〜」


 俺は、メリーナ姉さんと手を繋ぎダンスの真似事をする。侍女のエリスが足の運び方、姿勢などをその都度、教えてくれる。


「はい。1ー2ー3、1ー2ー3」


 と、エリスが、手を叩きながら調子をとる。


 俺は、メリーナ姉さんの足を踏まないように気をつけてる。もし、俺が足を踏んだらどんな目に合うか想像もつかない。


「いたっ! 」


「ごめん。ラビス」


 踏まれたのは、俺の方だった。





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