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我、異世界にて暗躍ス  作者: 聖 ミツル
第1章 少年期
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第3話 祝福




 俺が夜霧 啓吾としての記憶を取り戻してから、数日は、この奇妙な状況に狼狽していた。


 しかし、俺は、どうやら、死んで生まれ変わったのだという事は、理解出来た。だが、どうして、そうなったのかは、モヤのようなものがかかりはっきりと思い出せない。


 生まれ代りか……こういうのを転生とか言うと立花が言ってたな。

 立花と湯嶋は無事なのか? 車から距離もあったし、怪我はしてても死んだという事はないだろう……


 しかし、あの少年は俺だけ殺して満足なのか?

  本当は、立花や湯島も狙われていたのか?

 だとしたら、偶然拾ったあのタクシーの運転手もグルなのか?

 情報はどこから漏れたんだ?

 もう、済んでしまった事をグジグジと考えても仕方がないが……


 俺は、モヤモヤした気持ちを抱えながら宙を見つめていた。


 俺の隣には、メリーナ姉さんが一緒に寝ている。

 ラビスとしての記憶もあり、姉さんとはわかっているが、正直、姪っ子としか思えない。


 生前の俺は、独身だったので、心配をかけてしまうのは、両親と姉だろう。それと、部下の立花と湯嶋には、トラウマ的要素を与えてしまったかもしれない。


 でも、あの2人なら大丈夫だろう……俺は、そんな気がしていた。


 どうしてこうなったのかは、わからないが、これからは、ラビスとして生きていくしかないだろう……


 でも、今更、子供のように生きれるのか?


 不安だ……


 俺は、ラビスとしての記憶を辿り、俺の置かれている状況を整理した。


 俺の父親は、スミス=ランドル男爵、45歳。ブロンドの髪をオールバックにしている、少しキザな男だ。そして、母親はアマンダ=ランドル、42歳。黒髪、黒目の東洋美人だ。元、冒険者をしていたと母さんが言っていた。


 レナード=ランドル、14歳。この男爵の長男だ。皇都の王立学園に通っており、今は、寮住まいだという事だ。


 メリーナ=ランドル、9歳。今、俺の横で気持ち良さそうに寝ている姉さんだ。ブロンドの髪や青い瞳も父さん似なのだろう。少しソバカスのある美少女だ。


 そして、俺。ラビス=ランドル、5歳。正確には、4歳なのだが、この世界では、歳の初めに年齢が加算されるようになっている。誕生日で変わる元の世界の感覚では、少し異質だと思う。来月の11月5日が俺の誕生日だ。

この世界では、誕生日を祝う事はないらしい。そして、誕生日は、贖罪の日として、忌み嫌われるようだ。その日は、教会に行ってお祈りをするのが一般的である。


 ラビスとしての黒目黒髪は、母さん似だ。レナード兄さんは、ブロンドの髪なので、この家では、母さんと俺しかいない。


 まぁ、この方が俺としては違和感がなくて助かるが……


 これが、この世界での家族に当たる。


 因みに、父さんはランドル男爵家の二世代目だ。先代、つまり俺の祖父さんが功績を立て男爵の爵位を授与されたようだ。だが、2代目とはいえ、新興貴族としての位置は変わらない。ミスティナ皇国としては、最下位の部類に入る貴族的立場のようだ。


 ランドル男爵領は、領館のあるこのロクトの街を中心に近隣に2つの村がある。ミスティナ皇国領としては、辺境地に当たるが、隣国とは、割と高い山脈を隔てているので領兵を抱える程ではない。それに隣国クロウ勇国は、500年程前、魔王を滅ぼした勇者が建国した完全なる中立国なのでミスティナ皇国とも友好関係を結んでおり、少なからず戦争の心配が無いのが理由の1つに挙げられる。


 しかし、ランドル男爵領も問題はある。それは、資金面の事である。領地経営となると、それだけでも資金繰りが大変らしい。皇都に収める税金や貴族としての付き合いで、いくら資金があっても足りないそうだ。


 そんな父さんは、いつも書斎で頭を抱えている。


 また、屋敷には、護衛騎士のフリードが5つ歳下の奥さん、ミリーと一緒に住んでいる。子供は、まだいないが、31歳で結婚しているなんて、生前の俺と同じ歳で綺麗な奥さんがいるなんて、羨ましい限りだ。また、奥さんのミリーは、主に、屋敷の厨房の仕事をしている。料理のとても上手な人だ。


 そして、侍女のエリス。25歳の独身だ。俺が生まれてからは、主に、俺のお世話を担当してくれている。頭のキレそうな委員長タイプに女性で責任感が強く、それ故に、少し厳しいのがたまに傷だ。


 眼鏡をかけたら良く似合いそうだ……


 他には、通いで門兵をしている人達がいる。見知った顔で2〜3人だが、たまに冒険者を雇っているようだ。


 屋敷の規模としては、もう、少し人がいても良いと思うが、資金面の都合でこれ以上は雇えないらしい。


「ラビスとしての記憶はこんなものかな……」


「ラビス、起きてたの? 」

「あ、姉さんおはよう」

「うむ、なんかラビス、雰囲気変わったわね」

「そ、そう? 前からこんなもんだよ」

「具合悪いんじゃないわよね? 」

「大丈夫だよ。元気だから」

「ふ〜〜ん」


 メリーナ姉さんは、俺を覗き込むようにジロジロ見つめている。姉さんとは、わかっていても、何だか気まずい……


「ところで、なんでここで寝てたの? 」

「ここで寝ちゃいけないの? 」

「僕が聞いてるんだけど」

「寝ごごちが良いからよ。ラビス、もう、起きれる? 今日は、食堂でみんなと一緒に朝食を食べようか? 」

「うん、わかった」


 俺とメリーナ姉さんは、起き上がり、着替えを済ませて朝食を食べに行く。




◇◇



 俺が食堂に着くと、父さんも母さんも先に座っていた。


「ラビス、もう良いのかい? 」

「大分、顔色が良くなったわね。それに、怪我した時よりも血色が良いわ」


 父さんと母さんがそう話しかけてきた。


「うん。何か調子がいいんだ」


 確かに、以前のラビスは、重度の病弱児だった。特にどこが悪いというわけではないのだが、週に一度は高熱を出し、殆ど外に出られる事が出来なかった。沢山のお医者さんや司祭様に見てもらったが、原因不明と言われていた。


 だけど、頭を怪我した日は、割と体調も良く、雑技団の演武を見たかった事もあり、数ヶ月ぶりの外出だった。そして、橋の上で立ちくらみを起こし川に落ちてしまったのだが、今では、あの時か体調不良が嘘のように回復し、フルマラソンでも耐えられそうな気力に溢れていた。


「う〜〜ん。ラビス、何か雰囲気変わったわね」


 母親の感なのだろうか……そういえばメリーナ姉さんにも言われたな。

 気をつけなければ……


「前からこんな感じだよ」

「そうね。そうよね」


 アマンダ母さんは、納得したようだ。


「そういえば、来月は、ラビスの5歳の生誕祭だ。豪勢にお祝いしようじゃないか」


「えっ!? 誕生日は、忌み嫌われてるんじゃなかったっけ? 」


「5歳の誕生日は、特別さ。そういえば、メリーナの時は、まだ、ラビスは小さかったからわからないのか。5歳の誕生日には、教会で神様から祝福を受けるんだよ。そうすると、その人に合ったギフトがもらえるんだ。そのお祝いに家族で祝うんだよ」


「祝福? ギフト? 」


「能力の事さ。私は、剣術のギフトを五歳の時授かったんだよ。アマンダは、火属性の魔法を授かっている」


「えっ!? 魔法? 」


「あれ? ラビスには、魔法の事、話してあげてなかったっけ? 」


「小さい頃、お話したはずだけど、5歳までは魔法使うのは危険だから見せた事はなかったわね」


「私もお父様達の言う事きいて、ラビスには、黙ってたわよ」


 そう言えば幼い頃、物語として母さん話してくれてたっけ……

 でも、魔法を使えるのか? 何だ、この世界は……

 立花が大喜びしそうだ。


「じゃあ、メリーナ姉さんも魔法使えるの? 」


「そうよ。凄いでしょう? 」

「うん。凄いと思う」

「えへへ」


 メリーナ姉さんはドヤ顏だ。


「メリーナは、水魔法を五歳の時、授かったんだ。その時は、部屋をビショビショに濡らして大変だったんだよ」


「お父様、余計な事は言わないで下さい」


「おっと、すまん。すまん」


「じゃあ、僕も魔法を使えるようになるの? 」


「神様の祝福で与えられたらね。ラビスは、魔法を使えるようになりたいのかい? 」


「うん。使えるようになりたい」


 使えるものは使えた方が便利だ……


「良い祝福が貰えると良いね」

「うん。楽しみだよ」


 父さんの説明では、教会の祝福で神様からギフトという能力をもらえるようだ。


 しかし、神様がいるのか? この世界は……

 全くとんでもない世界だな……


 俺は魔法の事よりも、この先、ラビスとしてどうやって生きてけば良いのか悩んでいた。






 俺の生誕祭の日、馬車で家族一同、教会まで行くことになった。


 でも、たった5分程度で着いてしまうのだが……


 同じ日に生まれたのであろう領民の子供が2人ばかり、家族と共に先に待っていたようだ。


 領主の子供より、先に祝福を受けるのは、気が引けたのだろう……

いや、教会の配慮なのか?


 俺は、司祭に連れられて、同じ歳の子供2人と並んで拝殿室に入る。ここからは、司祭と祝福を受ける本人達しか入れないらしい。


「では、スミス=ランドルとアマンダ=ランドルの息子、ラビス=ランドル。

前に」


 司祭に呼ばれ、俺は一段と高くなっている場所に上がり、片膝をついて頭を下げた。


 すると、司祭は、頭に金色に輝く酌のようなもので水瓶の中から水を掬い俺の頭に浴びさせた。聖水というらしい。これで、身を清めるとメリーナ姉さんが言っていたが、


 マジか……真冬なら風邪を引いてしまうぞ。


 そして、目を閉じて祈るように指導された。

 そうすると、何だか身体が暖かくなってくる。

 薄眼を開けて見ると、俺は、淡い光に包まれていた。

 でも、その光が突然、どんどん大きくなって、辺りを眩く輝かせた。

 薄眼でも、目を開けていられないほどだ。


 すると、突然、真っ白い部屋のようなところに周囲が変わる。

 俺は、祝祷しながら、その状況を見ていた。


「やぁ、また、会えたね」


 何処からか少年の声が聞こえる。俺は、周りを見渡すと、正面に10歳ぐらいの子供が立っていた。


「夜霧 啓吾君」


 夜霧だと……俺の生前の名前だ。何で知っているんだ。


「知ってるも何も、君と会うのは2度目だよ。あっ、そうか。前に私と会った記憶を封印してしまったんだよね。うっかりだ」


「記憶を封印? 何を言ってるんだ? 」

「では、その封印を解いちゃうね」


 その少年の言葉が終わる頃には、俺は、目の前の少年が何者か、そして、何故、異世界に転生したのか、理解した。


「君は、アステルだったよな」


「正解、これでも神と呼ばれているんだから、もう少し敬意を持って接してくれても良いと思うんだけど、どうかな? 」


「その顔で言われても、俺としては思い出したくない顔だ」


「前にも言ったと思うけどこの姿を描いたのは夜霧君の方だよ。私達は、実態のない集合体だ。これは、君の記憶が想像した姿なのにね」


「今更、何を言っても仕方がないが、死ぬ原因になった少年の姿の君に、できれば会いたくなかったよ」


 目の前にいる神と称するその少年の姿は、夜霧が死ぬきっかけとなった自爆テロを起こした少年の姿だった。


「他の転生者には、美しい女神の姿をしていると言われたのにね。君は、本当に規格外だよ」


「で、俺に何の用なんだ? 」

「特にないよ。能力は既に渡してあるし、ただ、会いたかっただけかな」


「よく言うよ。あんな能力を与えたから、ラビスとしての俺は病弱だったんだぞ。前の時は、5歳まで生きられるかな? とか、言っていたじゃないか」


「うん、そうだね。君が頭を打って封印した記憶を取り戻すとは思わなかったし、正直、今まで生きられるとも思わなかったよ。本当、君は、良い意味で私の期待を裏切ってくれるよ」


「5歳までのラビスとしての人生は、正直、大変だったよ。週に一度は高熱でうなされるし、体も思うように動けない。外に出られる日は、1年で数回しかなかった」


「身体に魔力が馴染んでなかったせいだよね。でも、これからは、大丈夫だよ。魔力は、もう安定しているし、君にもそれは、わかっているんじゃないか? 今後の君の活躍に期待してるよ」


「活躍などしない。前にも言ったと思うけど、俺は自由にさせてもらう。その約束だ」


「それで構わないよ。君が、魔王になって、あらゆる生物を皆殺しにしようが、また、勇者になっても多くの人を救おうが、君の自由にするがいいさ」


「魔王や勇者になるつもりは無い。身の丈にあった生活ができれば十分だ」


「身の丈ねぇ〜〜今の身の丈だと、勇者か魔王だよ。または、神だよ」


「そんな身体に生まれさせたのはアステルだろう? 」


「確かにね。でも、必要だったしね。君のいる世界には」


「何が起こるというんだ? 」


「それは、お楽しみにね。そろそろ時間かな? 私に会いたくなったら教会に来ればいい。積もる話もしたいしね」


「出来れば遠慮する」


「ツレないね。じゃあ、またね……」


 その言葉を最後に、俺の視界は、元の教会に戻っていた。

 目の前には、司祭が俺を見つめている。


「ラビス=ランドル。君には、神アステル様の祝福が与えられました。恩恵を大事にしてこれからの人生を歩んでください」


「はい。ありがとうございます」


「では、次、父ジョンソンと母ミレイユの娘 カリーナ。前に……」


 司祭は次の子供を壇上に上げた。その子と入れ替わるように俺は、元いたところに戻り、片膝をつく。


 しかし、あいつは、困った事をしてくれた……

 このステータスどうすればいいんだ?



ーーーーーーーーーーー


ラビス=ランドル(人族マナ生命体)5歳


Lv 1


HP 100/100

MP  ーー/ーー


*祝福ギフト


全魔法適正(10)

全魔法耐性(10)

物理耐性(10)

異常状態無効(10)

精神耐性(10)


*神級ギフト


衛星(1)

鑑定(1)

隠蔽(1)

言語理解(1)

スキル自動習得(1)



*スキル


ーーーー


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アステル神の使徒


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