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我、異世界にて暗躍ス  作者: 聖 ミツル
第1章 少年期

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第9話 首都へ




 ランドル男爵領からクロウ勇国に行くには、隣接している国境付近の山脈を超えなければならない。およそ2000メートルから3000メートル級の山脈は、頂上付近に雪が積もっており、春先にこれを超えるのは苦難の道のりである。


 あとは、男爵領の南方を経て迂回する行程がある。山脈越えより、日数が倍近くかかり、まして、強い魔物が蔓延る砂丘と化した経路を通らなければならない為、危険が伴う。


 俺達は、山越えを選択して4月から始まる学院に間にあわせる為、3月初旬に出発する事になった。


 俺とメリーナ姉さんと母さんの3人が行く事になり、護衛に冒険者を雇う事になった。


 出発の数週間前に父さんから片手剣を頂いたが、俺の身長では大剣並みになってしまい、扱いづらい。無理を言って、30センチぐらいの小刀を用意してもらった。


 出発の日、護衛してくれる冒険者達が屋敷に来た。


「今回の護衛任務にあたる『四面楚歌』Aランクパーティのシド、とメンデル、そして、ソーシャとカリウスです。宜しくお願いします」


「お早うございます。同じく護衛任務にあたらせて頂きます『クリフハンガー』のクリフとハンガーです。Dランクですが、腕には自信があります。宜しくお願いします」


 と挨拶された。


 しかし、『四面楚歌』って、まずいんじゃないのか? 周りが敵だらけなのか、こいつら。

 それに、『クリフハンガー』って名前からパーティ名をつけたのはわかるが、そんな危険な名前、普通、パーティー名につけないだろう……


 俺は、こっそりこいつらのステータスを見た。


ーーーーーーーーー

シド(人族) 28歳 男性

冒険者『四面楚歌』Aランク リーダー

Lv 32

HP 84/84

MP 38/38

祝福ギフト

 剣術(6)

スキル

 ブレイドフラッシュ

 盾使い

身体強化

ーーーーーーーーー

メンデル=ローレンス(人族) 21歳 女性

ミスティナ皇国 ローレンス伯爵家三女

冒険者『四面楚歌』Aランク

Lv 28

HP 76/76

MP 48/48

祝福ギフト

 槍術(5)

スキル

 疾風10槍

 気配察知

 身体強化

ーーーーーーーーー

ソーシャ(猫人族) 25歳 女性

冒険者『四面楚歌』Aランク

Lv 32

HP 86/86

MP 110/110

祝福ギフト

 風魔法(6)

スキル

 生活魔法

 回復魔法

 気配察知

 危機感知

 身体強化

ーーーーーーーーー

カリウス(ハーフエルフ)135歳 男性

冒険者『四面楚歌』Aランク

Lv 58

HP 123/123

MP 105/105

祝福ギフト

 弓術(8)

 森の祝福

スキル

 リーモートショット

 鷹の目

 気配察知

 身体強化

ーーーーーーーーー

クリフ(人族) 18歳 男性

冒険者『クリフハンガー』Dランク

Lv 21

HP 62/62

MP 45/45

祝福ギフト

 剣術(4)

スキル

 スラッシュ

 身体強化

ーーーーーーーーー

ハンガー(人族)18歳 男性

冒険者『クリフハンガー』Dランク

Lv 21

HP 62/62

MP 45/45

祝福ギフト

 剣術(4)

スキル

 スラッシュ

 身体強化

ーーーーーーーーー


 四面楚歌のメンバーは、パーティ名はともかく、バランスは取れている。それに、猫人族とハーフエルフまでいる。


 クリフハンガーの2人は、顔の造作からいって双子みたいだ。ステータスも見事に同じだ。


 名前は、どうあれ、さすが冒険者だ。出で立ちも風格がある。


「こちらこそ、宜しくね。あれ、貴女は、ローレンス伯爵のご息女ではないかしら? 間違っていたらごめんなさいね」


 母さんは、冒険者のメンデルを見ながらそう問いかける。


「はい。そうです。ですが、今の私は、冒険者ですので家名は捨てました。それに、こうして伝説の冒険者『業火の炎姫』にお会いできて光栄に思います」


「あら、嫌だ。昔の事よ。それに、今はただのおばさんですからね」

「そんな事はありません。是非、握手をお願いします」

「良いわよ。こちらこそ宜しくね」

「はい。精一杯努めさせて頂きます」


 メンデルは、母さんの手を握りながら嬉しそうに目をウルウルさせている。


 まて、さっき『業火の炎姫』とか母さんの事を言ってたな。母さん、冒険者として有名だったのか?


 メンデルだけではなく、他の冒険者達も羨望の眼差しで母さんを見てるぞ。

 何やったんだ。この人は……


 母さんのステータス覗いた事なかったからなぁ。ちょっと、覗いて……


「ラビス、女性をジロジロ見てはいけませんよ。母さんも女性ですからね」


 その微笑みが怖いぞ……

 今は、やめておこう……


「では、行きましょうか。クロウ勇国の首都までお願いね」

『はい。畏まりました! 』


 馬車二台で、首都を目指す。


 先行する馬車には冒険者達が、すぐ後ろに俺達、家族が乗っているが、俺達の馬車に護衛としてメンデルが乗っている。


 今回、侍女のエリスは、留守番だ。父さんとフリードさんは、皇都まで行っている。領地の報告と会計書を渡すためだ。そのあと、会議もあるらしい。戻ってくるのは、4月の中旬ごろだと言っていた。


 ガタゴト揺られる馬車は、乗りごごちの良いものとは言えない。


 すると、メリーナ姉さんが、メンデルさんに


「メンデル様は、どうして冒険者になったのですか? 」


「う〜〜ん。私は、父の第三夫人の娘なんだ。それに、学院を卒業すると共に、ある貴族への嫁入りが決められていてね。その相手が、どうしても好ましい相手とは思えなくて、家を棄て冒険者に身を落としたんだ」


「すみません。気が利かなくて……」


「構わないさ。それに、幼い頃から冒険者に憧れて、こうして冒険者になれた。そう夢が叶ったんだ」


「素敵です。メンデル様」


「様はいらないよ。メンデルと呼んでくれればいい。私は、皆様の護衛なのだから、様付はおかしいだろう」


「わかりました。メンデルさんとお呼びします」


 第三夫人の娘……この世界は、一夫多妻制なのか……

 まるで中世だな……


「君達は、勇国の学院に入学するのだろう? クロウ勇国は、自由で面白い国だ。何度行っても飽きないところだよ。それに、食事も美味しい。皇国の学院と違って派閥がないから過ごし易いと聞く。良い選択をしたものだ」


「そうなのですか。楽しみです」


 姉さん、猫被ってるな……


「メンデルさん。山越えの街道には、魔物が出たりするのですか? 」


「ラビス君だよね。そう、街道には魔物が出る。今の時期ならウルフ系が厄介かな。あの魔物は、個体ではそんなに強くはないが、徒党を組んで襲ってくるからね。数も多いし面倒な相手だ」


「そうなのですか。他にも魔物はいますか? 」


「滅多に出会わないけど、ベヒーモスがいるかもしれない。これは強敵だ。私達Aランクパーティがやっと勝てる相手だ。出会わない事を祈るしかない」


「強い魔物もいるのですね」


「でも、今回は、大丈夫だろう。何せ『業火の炎姫』様が一緒なのだから、確か単独でベヒーモスを倒したと聞いた事があるし」


「メンデルさん、私の昔話なんかつまらないでしょう? 」


 母さん、目が怖いぞ……


「うほっん! そうでありました。失礼しました」

「昔話より、今のお話がお聞きしたいわ」

「そうですね。そうしましょう」


 メンデルさん、ビビってるぞ……

 母さんも圧をかけるのはやめた方がいいと思う。


「母様は、昔のお話してくれないの。メンデルさんは、母様の事知ってるの? 」


 メリーナ姉さん、空気読まないと……


「直接お会いしたのは、皇都のパーティーでした。私が、まだ、メリーナさんと同じぐらいの歳でした。とても綺麗な黒髪の凛とした姿を覚えております。私とお話もして下さいました」


「そうですか、それで? 」


「姉さん、僕、魔物の話が聞きたい」

「もう、せっかく母様の事お聞きしてるのに〜〜」

「だって、これから行く場所に魔物が出るかもしれないんだよ。聞いといて損はないよ」

「しょうがないわね。ラビスは、臆病なんだから」


 これで、母さんの圧が消えるだろう……


「メンデルさん。うちの子達がおしゃべりでごめんなさいね」

「いいえ。大丈夫です」

「それなら良かったわ。でも、お疲れにならないように適当に相手して下さって構いませんからね」

「はい。心得ております……」


 メンデルさん、目が泳いでいるよ〜〜……


「それで、ベヒーモスが一番強い魔物ですか? 」

「この山にいるとすればな。でも、ベヒーモスよりもさらに強い魔物も存在する。それは、竜だ」

「竜ですか」

「あぁ、竜は強いぞ。下級竜でも、私達のパーティーだけじゃ勝てない。Sランク冒険者でも、五分五分だと言われている」


 確かに竜は、強いイメージがあるな……


「下級竜って言いましたけど、もっと上の竜もいるのですか? 」


「あぁ、いる。それは、黒竜だ。伝説では、その身体は、黒光りしていて、吐き出した黒い炎のブレスの後には何も残らないとされている。ここ、数百年は、目撃情報もない物語のような存在だが、もし、黒竜が暴れたら、国がいくつも滅びるだろう。いや世界が滅びるかもしれない。倒すのは、一国の軍でも難しい」


「そんな御伽話のような竜が存在するんですね」


「まぁ、数百年も見かけないと聞くし、黒竜が現れる事はないだろうからその点は安心すると良い」


「そうですね。そんな魔物に会いたくないです」


「メンデルさん。パーティー組まれて長いのですか? 」

「そうだな、もう、5年になるかな」

「みんなお強そうですね」

「強いぞーー。ラビス君も強くなりたい? 」

「はい」

「では、鍛錬あるのみだ。頑張って練習しなさい」

「はい。そうします」


「それと、パーティー名の四面楚歌って誰がつけたのですか? 」

「これは、メンバーの名前を入れて、縁起の良い名前を当てたのだ」

「四面楚歌って縁起がいいのですか? 」

「あぁ、四方向から敵に囲まれても、歌を歌えるぐらい余裕って言う意味だ」


 なんか意味間違ってるぞ……


「そうですか、素敵なパーティー名ですね」

「うん、私も気に入っている」


 本当の意味は教えて、相手を困らせるほど野暮ではない……


 馬車の中で、話をしながら情報を集め、俺は、この世界を知っていくのだった。





 今日の野営地は、山の麓にある街道から少しそれた草原だ。

 山から流れる綺麗な水が小川となって流れており、休息地としては言う事ない。


 だが、この寒さでどうやって一晩過ごすんだ……


 と思っていたら、母さんが、馬車を包む野営地の四方に魔石を置き、結界を張った。そして、空気を暖める。


 ほぉ、あの石にこんな使い方があるのか……


 10センチほどの大きさの魔石で一日ぐらいは暖かいらしい。魔力を込めれば再利用できるのだと聞かされた。


 冒険者達は、交代で見張りをするようだ。俺は、衛星を展開して周囲に異変がないか確認しておくことにした。


 しかし、母さんは、そんな俺を見て、


「大丈夫よ。ゆっくり休みなさい」


 と、微笑みながら俺の頭を撫でた。


 母さんの前で、能力を使うのは何故か危険だと俺は思った。







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