Story:18『災厄試練/15.手を伸ばして一等星、駆け抜けて夢の果て=前章=』
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「何度…何度、我を害すれば気が済むのだッ!腐れ下等生物共がァァァァ!!!」
異星の神の激しい怒りが溢れ、空間を満たす。
その瞬間、意識が逸れたのか自分達を押さえつけている力が弱まったことに気がついた時雨達は後方のルナ達の元へ移動した。
「シグレちゃん、何あれ?」
「う、うーん…違う星から来た神様…らしい?」
「なぜに疑問形。しかもゲームの中なのに違う星と来たか。ま、見た感じ敵ってことでOK?」
「うん、今まで戦ってたところ。あそこにいる犬頭の人と、角の生えてる人は味方だよ」
「ていうか、なんで初期装備…?」
「あぁそれはね───」
ルナの質問に答えるシグレ。インディゴやアヌビス、ゼブルについて容姿をまじでて簡単に説明する。
インディゴは巻き戻しの能力を使い、アヌビスは死霊を操り、バアルの時は光を操りゼブルの時は雷と蝿を用いて戦う。今戦っている敵はインディゴであり、他2人は味方として戦っている。
そして敵であるインディゴにはその能力のせいで決定打を加えることが出来ないでいることを話した。
初期装備の事については呪いのアイテムのせいで…と簡潔に終わらせる。
「下等生物は等しく我の前に跪けば良いのだッ!いち惑星で台頭しただけの劣等種、何を付け上がったか宙にまで手を伸ばしおって…だが、時の流れに対し基本不干渉でいる事が我の矜恃。だと言うのに、貴様らは禁忌に足を踏み入れたッ!時詠みは我の領分だッ!」
時詠みの神は溜まりに溜まった怒りを吹き出し、怒髪天を衝くかのように怒鳴り散らした。
「故に浄化する。我はこの惑星を、世界を…進んでしまった物語を浄化しなくてはならない。それが、我の使命なのだッ!」
彼の使命は時の秩序を正すこと。そして広大なセカイを統一し支配し、律する事。
「なら…僕は僕の願いを叶える為、どこまでも君の障害となろう。変えられなかった未来を、過去となってしまった今…変えてみせよう。義父の虚言も、母の哀願も、実父の妄執も全て。僕は…酷く我儘なんだ」
そして彼の使命は…望みは全てを取り戻すこと。失った家族と再び言葉を交わし、疑問を投げかけ、怒りを叩きつけ、憎悪を浴びせる。そして…最後には許しあえたなら。
そうするしかなかったのだと頭では理解していても、心では納得することの出来なかったその問いの答えを得ることこそがアヌビスの全て。
「どちらが正義かを決める戦い、その最後を今ここに始めようじゃないか!"思慕の想列"!」
塔に内包された夜空に輝く星々が、矢となり弓となり番えた死念をただ一点に向けて放つ。
数え切れないほどの必滅の矢が亡者の葬列から死を運び、インディゴを消し去るためだけに降り注ぐ。
「"双世時計"!」
が、矛盾を引き起こす時計が1つまた1つ、一瞬のうちに次々と矢を消滅させた。
「君達も手伝ってくれ!……ゼブル!君はまだまだやれるだろう!?」
「へぇへぇ、雇い主の命令は絶対さ。"加速場"。ちと痛いかもしれんが…まぁ、速くなれるんだから文句はないだろう?」
空間一帯を満たすようにして紫電が迸る。円形状に広がった紫電はその場にいる味方全員に恩恵とその代償をもたらした。
HPゲージが毎秒1ずつ、限りなく最小限のデメリットではあるが無視し続けることは出来ない。
だとしても、そのデメリットを補ってあまりあるだけのAGI補正というリターン。
「くっ…スリップダメージの代わりにAGIに補正か」
「ニック、ジル、デリン。私とクライスが後ろで援護するから前で自由に走ってきて。メルドは自己判断で自由にカバーに入っていいよ。回復はこっちで何とかするから!」
「「「「「おう!」」」」」
ルナが脳筋達に向けてオーダーを飛ばし、それを受けた彼らは気合十分に前線へ躍り出た。ルナとクライスは後方支援のためにアイテムを用意し始めている。
「ルナ、私は…?」
弱体化を余儀なくされ、今までのような力でねじ伏せるタイプの戦い方が出来なくなってしまった時雨が心配そうに、申し訳なさそうにルナに指示を貰いに行った。
「シグレちゃんはね」
「うん…!」
「うん、好きに暴れて高笑いしてればいいと思うよ!」
「……アッ、ハイ」
「子供達、早くしてくれないかな!?」
要は前線でいつも通りにとはいかなくとも、好きに戦えばいいとの事だった。出来ることが減ってたとしても、そのサポートを私達が請け負うから、と。
出せるダメージ量が著しく下がっているシグレにとって出来ることは、主力になる《仙才鬼才》等を封じた状態で場の撹乱をすることぐらい。
出来ないことを嘆く暇はない。
今出来ることを、目の前の敵に向かってやり遂げるだけだ。
今回は導入で本格的な戦闘については次の中章とラストになる終章で書きます。




