Story:12『災厄試練/9.僕はあなたを藍したい』
皆様の意見を見て今後の参考にしたいと思いますので、気になったらぜひ気軽に感想や評価をお願いします!
落ちて。落ちた。落ちる。
上って。上った。上る。
右へ。左へ。そして、意味も忘れてその果てへ────
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[ワールドクエスト〈外伝:復讐者〉:禍福を糾い、死を贖う]
|参加人数|
1人~
|必要レベル|
制限なし
|クリア条件|
【Normal】評価:A
無間ノ塔を踏破
【Hard】評価:S
無間ノ塔を踏破+**の討伐
【Extreme】評価:SS
無間ノ塔を踏破+**の討伐+???
|備考|
クリア時の評価によって報酬とストーリーの進行度に変更あり。
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【無間ノ塔】
■■side:**■■
灼熱の大地に佇む塔は、夢幻の夜空を内包していた。ひとたび足を踏み入れればその美しさに目を奪われ、そして、手に入れることを望んでしまうだろう。
蝋で塗り固めた翼で空に焦がれた彼のように、無数にある棺が夢を抱き夜空を飛ぶ。この世界唯一の普遍に、超常に、無限の彼方へ辿りつこうと、神すらも想いを馳せる。その夢の成れの果てが、幻の夜空を駆け巡っていた。
あぁ...この空は、誰のものなのか。
広く美しいこの空は、凡百の儚い希望を全て飲み込む。神すらも、そこではただの個だった。ただ1つ、死した者達の魂のみ、死んでも尚募る思慕の想いを葬列に乗せて...光り輝く大河は空を翔る事を許される。
あぁ...気に食わない、なぜ奴のものなのか。
死の淵でもがき苦しみ、その在り方に絶望する者には完全なる死の救済を。生にしがみつき、魂を燃やし続ける者には完全なる蘇生の救済を。彼の神は言った。生こそ救いであり、死すらも救いである...と。
あぁ...傲慢だ。なぜ陰気な神力しか持たない奴が、あろう事か死者を裁定するのか。
死に行く者を心の形1つで見定め、死に向かって歩く者と生に向かってひた走る者を選ぶ。それは神にだけ許された傲慢であり、それは、神にすらも許されない傲慢だ。
あぁ...なんて傲慢なんだ!死の裁定者、奴の一存でこの空には魂の葬列が輝く。許せない、まるで...この空が奴の物みたいじゃないかッ!
そして───
ならば───
神は殺された。
自分自身が傲慢の体現者である事も忘れて......。
【???】
■■side:イ*ス@〒いな€=族&???■■
「全てを識るからこそ、全ての救済が許される。全ての救済が許されるからこそ、全てを識る。時を渡ることもまた英知の一端なり。恩讐にかられる貴様ごとき弱神が手を出していい領域を超えている」
「僕は彼を救いたいだけだ。そのためなら、インディゴにだって手を出す。彼に愛され、彼を愛するためにね。母と彼が共に歩めなかったその先を願う者として、僕は偽親よりも優れていると証明し続け、機会を伺うことにしよう」
「復讐者よ───貴様の望みは傲慢である」
「神はそもそも傲慢だよ。
それに...僕は酷く我儘なんだ」
「しかし、貴様は干渉を禁じられて───」
「だったら、下界にだって根を伸ばすだけさ。これでも、アレの義息子なんでね」
【災厄試練/蠱惑の湖畔:迷宮第??層(無間ノ塔)】
■■北side:シグレ&メルド&ジル■■
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
「うざい、うざすぎる...風が語りかけてくる...」
「あはは...あは...アハハハハハHAHAHAHAHA」
3人はそれぞれ特徴的な絶望の仕方をしていた───
ジルは頭を抱えて蹲りながら怨嗟の声を漏らし、メルドはどこまでも澄みきった曇りのない目だというのに焦点があっておらず、時雨は光の抜け落ちた瞳が見開かれた状態でただ笑っている。
なぜこんな事になっているのかというと、それは突然転移されられた砂漠の中心にあった塔に入ったことが理由だった。
数十分前に話は戻り、3人は「おー、また砂漠かぁ」とバトロワイベントの時を思い出しつつ、軽い気持ちで目の前にある塔に入る。すると、入った瞬間にサスペンスドラマかと思う勢いで入口の扉が音を立てて閉まってしまう。
それと同時に異形の犬頭が再び現れてこう言った。
「彼の過去を知り、彼の今を理解し、彼の未来を救ってほしい。この塔の入口は、全ての始まりで全ての終わり。行きたい場所も、願い事も、全てが叶う別天地。それ故に神は直接の干渉を基本的に許されない。だからこそ僕は願うけれども叶えない。君たちだから、あの空を昇ることが出来る。最果てを目指して...そうすれば、きっと」
そして彼は消える。
「つまり、彼とかいう何某の事を深く知って、そいつを助けてくれ...って話だよな?」
「たぶん...」
「で、そのためにはまずこの塔を登らないといけないってことか。え、階段とかないんだけど?」
3人は天井の見えない塔の上を見つめた。しかし、最上階へ続くような階段は見えず、真っ暗な夜のような闇が広がるだけ。異常なまでのその高さを無視すれば階段がないただの塔。
ただ1つの違和感があるとすれば、なぜか高速軌道しながら塔の中を飛び交っている棺桶があるということ。
「いや、え?嘘だろ?もしかして...あれが足場?」
引きつった顔で飛び交う棺桶を眺める3人。
このままぼうっとしてても仕方がない!とジルを筆頭にそれぞれがゴールへ辿り着くと信じた棺桶に飛び乗る。塔の上を目指して。
「うぉぉあ!?」
「は...はやっ!ちょ、次の足場待ってー!」
「なんだよこれ...なんで棺桶がびゅんびゅん飛び回ってるんだとかそういう話をするつもりは無いけごふぁ!?」
「「メルドーッ!」」
そうやって登ろうとしては足場となった棺桶の速度に耐えてしがみつき、登れたと思えば次の足場となる棺桶が高速で飛び去ってしまい、登ったと安堵したら後頭部に棺桶が飛来したりと、3人は数十分の間棺桶と戦っていたわけだ。
「くっ...ここまで悪質な当たり屋がいるなんていでぇぇ!?」
「ぶははっ、当たり屋は違うだろ!ひき逃げだよひき逃げ!」
「なんでかぶつかるのはメルドだけだね...大丈夫?」
後頭部の痛みに震え怒りを露わにするメルド。しかもなぜかメルドの近くを飛んだ棺桶が、ルートをいきなり変更して再度突撃してくる始末。
それをケラケラと笑いながら見ているジルと苦笑いしながらメルドを労る時雨、「おぉ...メシアよ...そなたは魔王などではなかった...」と時雨を拝みながら泣いているメルド。場は混沌としていた。
「"虚実が紡ぐ偽りの真実"」
「2人とも、何か言った?」
「なんも言ってないぞ」
「同じく」
気のせいかな?と時雨は首を傾げ、きっと気のせいだとジルとメルドが適当に聞き流す。
謎解きみたいで楽しいな!と笑い合い、再び最上階を目指して3人は棺桶を足場にしてぴょんぴょんと飛びながら上へ進む。
アスレチックみたいで楽しいな!と嗤い合い、再び夜空を目指して3人は夢の残滓をぐりぐりと踏みつけて足蹴にしながら果てへ向かう。
楽しいな!と嗤い藍、自分達は神すら昇ることが許されない空を駆けているのだと、自分達が神より優れているのだと歓喜し嗤い鳴く。
そして一等星のその先へと手を伸ばし、宵闇の美しい装いをその身に纏うと、浮遊感、全能感...全てが自分の思い通りになるという確信が心を支配していた。
ふと、眉間に熱が刺す。焼けるように熱くて、蕩けるように暖かくて、脳漿で弾け飛ぶ鮮烈感。
「貴様らはインディゴの器に相応しくない」
そして3人は最下へ死に戻った。




