Story:8『災厄試練/5.魂と臓物』
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邪ンヌ復刻...だと...!?
時雨達3人が突然の弱体化にあたふたしているその頃、他のルナ達4人は特に問題が起こることもなく、着々とその足を進めていた─────
【災厄試練/蠱惑の湖畔:迷宮第2層(下層)】
■■南side:ルナ&ニック&クライス&デリン■■
「"剣舞"、"一閃一心"、"華斬"!」
ニックの剣線が踊るように舞う。サポートスキルの〈剣舞〉によってSTRとAGIが上がり、さらに〈一閃一心〉によりDEXが上昇する。
高められたステータスを存分に生かした剣が、風にあおられる華のように不規則な動きで無数の軌跡を描いた。急所を的確に狙い、上昇しているDEXの補正でクリティカルダメージを量産して一瞬のうちに敵を切り伏せて進む。
「これだけ道が狭けりゃ星落としも山薙も不味いか...なら、"万斧不当"!」
そんなニックでも打ち漏らし...というより手の届かない相手が出てくると、後方にいる2人へその魔の手が伸びないように巨漢が間に立ち塞がった。
本来の斧による攻撃は一対一を力技で押し勝つ戦法が一般的で、俊敏さの無さから一対多が好ましくない状況が多い。
どうしても鈍重で大振り一辺倒な動きになりがちで、一対多では一撃で全てを薙ぎ払う力が要求され小回りは利かず、それなりの広さがある空間でなければそもそもの動きに大きな制限がついてしまうのだ。
つまり、細道が入り組んだようなこの迷宮内で、溢れかえるようなモンスターを相手にするのにははっきり向いてないと言える。
が、それを解決するのがデリンの今使った《万斧不当》だ。
一撃の重さではなく軽さと速さ、鋭さに重きを置いた物質置換スキル。豪腕の戦斧が彼の手でスキルの発動とともに鈍い輝きを放つと、フォルム自体に変化は無いただ縮小化した形の手斧が両手に握られる。
デリンの持ち味であるSTRが大きく下降する代わりに、AGIとDEXが上昇し、縮小化して双剣のようになることで取り回しが遥かに楽になった。
尖った長所を折ることになってしまうが、これならば狭い通路内でも自由に振り回すことができ、限られた空間の中でも一対多を得意とすることが可能になる。
「んー...全てを捩じ伏せる!って感じのが好きなんだが、まぁ、こういうのもたまには悪くないな!」
振り回される一対の手斧が敵の外殻をを削り、1つ、また1つと少しずつ体の一部を切り飛ばしていく。普段の叩き潰すような粗暴な立ち回りが、害となる全てを切り落とす精密さを帯びた。
「ニック!討伐数で勝負しないか!」
「お、いいねぇ!やってやる!」
「ハハハハハ!!そうこなくちゃなぁ!?」
そうやって2人が倒した敵の数を「おらぁ!」とか「ガハハハ!!」とか叫び、雄叫びを上げながら倒している姿を後ろでクライスとルナが見守っていた。
「のうきんこわい」
「あの2人は脳と筋肉が直結してるよね」
クライスは1階層で魔法による面制圧をしたため現在はデリンと代わり休憩中、ルナは特に仕事がないため待機していた。
本当なら4人全員で一緒に戦った方がスピードは早いのだが、効率化出来て消耗を減らせるならと脳筋2人だけで前に出ているのである。
前で筋肉達が戦い、残った2人が後ろで謎解き要素を解き進めるという役割分担だ。
「おし、46で俺の勝ちだな」
「はぁ?46は俺、ニックは45だ」
「いやいや、いやいやいや。勘弁してくれよまったく。脳みそ筋肉で算数も出来ないのか?小学生からやり直せ?」
「あ?」
「お?」
今いるモンスターを全て倒し終わった2人が戦績を比べて張り合う。「どっちにしろたった1しか違わないならよくない?」とルナが問えば「「1違えば全部が違うのと一緒だ!」」と鬼気迫る顔で熱弁され「あっそ...」と引き下がった。
「ん、ここにも壁画があるな。また鋏のある生き物と壺か...結局これはなんなんだ」
「おい、クライス!俺が46だよな!?」
「はぁ!?俺だぞ!」
「はぁ〜...2人とも、ケンカしてないで早く進も──」
我関せずと通路に描かれている壁画を端から端まで慎重に調べるクライスに詰め寄る筋肉達に、いつもは自分がトラブルメイカーであるルナですら呆れて先を促し始める。
と、とてつもない威圧感を伴う冷淡な声がすぐ側から響いた。
『形ヲ歪メラレタ守護者ヲ屠リ、魂ト臓物ヲアルベキ場所ヘ還セ』