Story:7『災厄試練/4.募る不安』
皆様の意見を見て今後の参考にしたいと思いますので、気になったらぜひ気軽に感想や評価をお願いします!
更新が物凄く遅れてしまいごめんなさい...
〔狂鬼化〕依代/夜叉
魔神の領域に到達する神力、魔性スキルの内の1つ。
『悪が悪と成り得るのは誰かに不幸をもたらした時である。では悪とは何か?人・時・場によって悪は変成し、その意味も変わっていく。貴方にとっての正義が他にとっては悪である事もあるのだ─────それを忘れているならば貴方の正義は酷く狂っている』
──────────────────
HPが75%未満の時に強制発動しSTRを元の数値から最大???倍、DEF・AGI・DEX・INTを-???倍する。また、プレイヤーの主人格に変わり擬似人格が身体の所有権を得る。
「なに...これ...」
そこに表記されていたのは〔狂鬼化〕の効果内容。以前、限定的な入手方法でほんの少しの間だけ扱ったことのある〔神足通〕と同じようなものだった。
こちらも"?"だらけの謎なスキルであり、今回の場合六陣痛の内の1つではなく魔性スキルの内の1つとなっていて、魔に通づる代物らしい。
だが、そんな───そんなちょっとした謎や、魔に通づるという事実が霞むほどに異様な存在感を放つ一文が添えられている。
"また、プレイヤーの主人格に変わり擬似人格が身体の所有権を得る。"
そしてそいつは時雨の声ではっきりと言った。
『全てを喰らう者...称を大嶽丸』と......
「擬似人格...?いや、それよりも大嶽丸?うそ...なんで、なんで?あの時確かに、でも、え...」
薄暗い部屋の中でドラマか映画を見ているような感覚だった。自分の体が、声が、意識が...何もかもが自分以外のことに思えて、第三者としてそれを傍観しているような。そんな不思議な感覚。
時雨が言っていた記憶はあるのに、自分自身が言ったという実感の伴わない恐怖と焦燥が時雨を支配する。改めて今は時雨自身が体の主導権を握っていると理解すると、急速にその事実が脳を撹拌した。
「落ち着け、シグレ。HP依存でアレが強制的に出てくるってんならまずは対策をしないといけない。まずは装備を切り替えよう」
「それって一式装備なんだろ?他には持ってるのか...?」
ごちゃ混ぜになった思考がジルとメルドの声で少しずつ熱を落としていく。
「あ...えっと、一番最初の装備なら」
「レザー装備か...性能は相当落ちるんだろうが、とりあえずレザー装備に変えておこう」
インベントリを開いてみれば、そこにはキャラクター登録時に最初から身につけていたレザー装備が静かに眠っていた。
鬼獄一式に比べれば心許ない性能なことに変わりないが、現状分かる事が少なく、唯一明らかになっている一点の危険性が高すぎる。
結果的に弱くなったとしても、まずは装備を変更しないといけない。
「直近の問題はそれで解決するかもしれないけど根本的な解決にはならないよな?それに、発動条件は分かってるが、なんで元に戻ったかとか」
「あ、元に戻ったのは一応私のスキルのおかげだと思う。自動で少しずつだけど回復する効果を持ってるから」
「なるほど」
「75%未満で発動するなら、75%以上で元に戻るんじゃないか...ってことか」
そもそもの原因は反魂鏡というアイテムのせいで発動してしまったこと自体は理解出来る。なぜ擬似人格から時雨本人に戻れたのかとなれば彼らが首を傾げるのも必然だった。
だが、実際は時雨の《仙才鬼才》が関係しているだけでそこまで難しい秘密はない。それを知らない2人に時雨は簡単にだがスキルの効果を教え、納得してもらえた。
「だけども、今は迷宮内...しょうがないとは言え装備が変わって弱体化するのは不味くないか?」
「確かにそうなんだが仕方ないだろ...」
「こ、この先大丈夫かな...?」
まだまだ迷宮に先はあり、試練も続いている。
そんな中での時雨弱体化は非常に厳しい展開となった。




