表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
"Your Own Story"  作者: 音夢
第1章『激突』
3/43

Story:3『鬼』

皆様の意見を見て今後の参考にしたいと思いますので、気になったらぜひ気軽に感想や評価をお願いします!

固有(ユニーク)スキル/仙才鬼才を獲得しました』


(なんだろうこれ…ゴブリンの動きがすっごいゆっくりに見える…ゴブリンにあるあのマークは一体何?取り敢えず殴ってみればわかるかな)


「ギッ!?」


(あっ、なるほど…じゃあこのゴブリンのここを蹴れば…)


「ギィア!?」


(やっぱりそうだ。それにしても、心なしか力が溢れてくるような…スピードも上がってる気がする…)


「グギャァッ」「ゴゲギャギャ!?」「グゴガッ」「ゲガッ!」「アギャ…」「──!」「──ッ!?」「──…!」………………………………


時雨は超高速に加速された思考世界に没入していた。つい先程までゴブリンキングとその眷属のゴブリンに瀕死になるまで追い詰められていたはずが、急にゴブリン達を屠る力が湧いてきた。


薄れゆく意識の中で突然システム音声が響いた瞬間、異常なまでに力が漲ってきたのだ。目に見える世界はまるでスロー再生されているのかと思うほどゆっくりになっているが、時雨の体はいつも以上の速度で動いている。ゴブリン達が遅くなったのか、それとも時雨が早くなったのか…はっきりと分からない。


さらに、視界に映るゴブリンの集団の中に1匹だけ体のどこかに赤いマークを付けたゴブリンが居て、そのゴブリンを倒すとまた他のゴブリンに赤いマークが出現する。


攻撃した瞬間の感触から、赤いマークは恐らくそのゴブリンの急所となる場所を示していて、マーク付けされる順番は倒す優先度なのだろうと時雨は考察した。


「なっ……なにが起こっている!?」


怒気と焦燥を孕んだ声でゴブリンキングが叫ぶ。無理もない…つい今しがた甚振っていたはずの女のHPはほぼ0だったはずなのに、なぜか驚異的な力と速度で眷属のゴブリン達が蹂躙され始めたのだ。それどころか、何故か女のHPバーがグングンと増え始めている。


荒れ狂う竜巻のように、全てを飲み込む大海のようにゴブリンを薙ぎ倒して時雨は殲滅していく。1匹…また1匹と無駄な手を全て省いた、ただ倒すために効率を上げた動きは機械のようでもある。


(あっ、マークが増えた…連続か同時攻撃かな?)


すると、先程まで1つだったマークが2つに増えてそれぞれ違うゴブリンに付き始めた。右手・左手・右足・左足を状況に合わせて使い分けてその時その時の最適解を導き出しながら連続、もしくは同時に攻撃を加える。必然、倒すスピードは2倍になった。


眷属召喚を連続で発動されて100体以上はいたであろうゴブリンは、時雨の猛攻によりプログラムの肉体を光の粒に変え、数十分ぶりにこの空間を静寂が包んだ。


「ばか…な…」


『孤軍奮闘を獲得しました』


またシステム音声が頭に響く。ゴブリンを全部倒したら新しくスキルが追加されたようだ。スキルの内容を確認する暇は無いが、また能力値が上がっているのかさらに力が漲ってくるのを時雨は感じた。


「くそっ!倒されたならまた発動すればいいだけだ!眷属召か──は?」

「遅いよ」


再びゴブリンの集団を召喚しようとゴブリンキングが詠唱を始めた瞬間、時雨はゴブリンキングの目を潰した。相手にとってそれが一瞬、それどころか時が飛んだように見えても時雨にとっては数秒経ったように感じられた。時雨が踏み込んだ地面は激しくへこんでいる。


「ぐあぁぁぁぁぁ!?目がっ…我の目がぁぁぁぁ!?!?」


瞬間移動と言われても信じてしまうほどに時雨の姿を捉えることは不可能。何が起きたのか分からないままゴブリンキングは視界を奪われた。


その隙にいくつか突きや掌底、回し蹴りを決めてゴブリンキングのHPバーを先程とは比べ物にならない勢いでゴリゴリと削っていく。


「ぐっ…見えなくとも回復すればいい!今度こそ眷属──」


ゴブリンキングは回復手段を持っているらしく時間稼ぎのために数秒前にも阻まれたのを忘れたのか、もう一度眷属召喚を発動しようとした。


「だから遅いって。もう貴方に私は倒せないよ」

「あがっ…………け………ぞく…」


が、そんな事を時雨が許すはずがない。詠唱されるのが嫌なら詠唱を出来なくさせてしまえばいい……時雨はゴブリンキングの喉を潰した。そのせいで満足に発声出来ないようで目から光の粒子と口から涎を垂らしながらのたうち回っている。


「ありがとう、貴方のおかげで私は強くなれた」

「あ…………ご……す」


もがき苦しむゴブリンキングの前に時雨が立ち、感謝の言葉を述べる。この戦いは望んで始まったものではなかったが、得たものは大きかった。止まっていた時雨の心は強者との本気の命のやり取りで動き始めたのだ。


「さようなら」

「あがっ…………」


そして、時雨の今出せる全力を注いだ一撃で心臓部分を貫き、ゴブリンキングもゴブリンと同じように全身を光の粒に変えて完全に消滅した。


『中級ダンジョン:鬼の王/ゴブリンキング討伐完了』

『戦闘終了、蓄積された経験値の換算をします。シグレのLvが17に上がりました』

固有ユニーク装備:鬼人シリーズを獲得しました』


「お、終わったぁ〜……」


終わりを告げる声を聞いて時雨は地面に背中をつけて倒れ込んだ。最終的に勝てたとはいえ気力の消耗は激しく、すでに立っているのも厳しい状態だった。HPバーは完全回復されているが失われたスタミナまでは戻っていないのが原因だ。


やっと安全にしていられる時間ができたので時雨はステータスと獲得した2つのスキル、装備の確認をする。なんとこのダンジョンでLvが5から17まで一気に上がっていた。恐らく、本来ならパーティーで挑戦するため個人の経験値量は少なくなるが、時雨はソロだったため多くの経験値を得られたのだろう。それに、ボスのゴブリンキングを含み100体を優に超える量のゴブリンを殲滅したのだから経験値量もお察しである。


【シグレ:拳闘士 Lv17】‬

|ステータス|120pt

HP:40

MP:10

STR:70(+5)

DEF:0(+15)

AGI:70

DEX:0

INT:0

|スキル|

〈毒耐性(小)〉〈麻痺耐性(小)〉《仙才鬼才》〈孤軍奮闘〉

|称号|

【羅刹】

|装備|

レザーアーマー・レザーグローブ・レザーパンツ・レザーブーツ


《仙才鬼才》

全てのステータスを元の数値から2倍にする。10分経つと元の数値に戻り10分間被ダメージが2倍になる。(再使用まで30分)

副次効果:優先対象の選定。知覚能力向上。自動HP&MP回復。(10秒で1%回復)

獲得条件/瀕死状態(HP1割以下)でボスモンスターと戦闘し、30分以上生存する。全プレイヤーから1プレイヤーのみ獲得可能。

特殊条件/スキル、アイテムの使用無し。単独。

獲得称号/【羅刹】


〈孤軍奮闘:passive〉

倒したモンスターやプレイヤーの数×元のステータスの1%ステータスを上昇させる。30分経つと元の数値に戻る。(上限:10体まで)

獲得条件/100体以上のモンスターを10分以内に倒す。

特殊条件/アイテムの使用無し。単独。


「うわぁ、何このスキル。2つともすごい強そうな感じ…けど反動が大きかったり制限があるのか」


《仙才鬼才》は10分間被ダメージ2倍のデバフ、〈孤軍奮闘〉は10体までの制限が付いていた。恩恵が大きい分その後に受ける被害もそれなりに大きく、制限もあるようだ。


が、それを鑑みても破格の性能である。異常なまでのステータス上昇に加え拳闘士の懸念であった回復手段、自動HP&MP回復が手に入ったのは非常に大きい。


「この固有(ユニーク)装備っていうのは…」


|鬼獄:鬼人シリーズ│所有者:シグレ/譲渡&強奪不可

一式装備時AGI+50 DEF-50%

装備スキル/〈鬼人演舞〉

獲得条件/"鬼の王"単独での初討伐者のみ獲得可能。


|夜叉:鬼人シリーズ|所有者:シグレ/譲渡&強奪不可

一式装備時STR+50 DEF-50%

装備スキル/〈鬼人の吸魂〉

獲得条件/"鬼の王"単独での初討伐者のみ獲得可能。


〈鬼人演舞〉

HPとMPの5割を消費して他ステータスを2倍にする。10分経つと元の数値に戻る。(回数制限:1日5回まで)(消費されたHPとMPは他ステータスと違い元に戻らない(回復可能))


〈鬼人の吸魂:passive〉

モンスターやプレイヤーに攻撃した際、与えたダメージの1%HPとMPを回復する。装備者がダメージを受ける度にHPとMPを除くステータスが5%ダウンする。ダウンしたステータスは10分経つと元の数値に戻る。


「DEF-50%が2つか…でも、元々DEFは0だしAGI+50とSTR+50だから私にぴったりの装備だ。装備にもスキルが付いてるってことはすごいレアな装備なのかな?」


時雨はインベントリを開いてドロップした装備を確認する。どうやら装備するとステータスに補正がかかるようで、-補正の割合が大きいが元々時雨のDEF数値が0のためいくら下がっても変わらない。それどころか重点的にptを割り振っているSTRとAGIが一気に上がるという時雨のために存在すると言っても過言ではない性能だった。


そして、装備スキルもまた異常と言える性能。デメリットも大きいがメリットも大きく、さらに問題のデメリットは《仙才鬼才》と〈孤軍奮闘〉で相殺できる。偶然にも手に入れたスキルは奇跡的に噛み合い、不遇職と評される拳闘士を鬼へと昇華させた。


「スキルも装備もすごいもの手に入れちゃった!snowに後で話したら驚かれるかなぁ」


もちろん、時雨がそんな異常性に気づくはずもない。今あった心ときめく出来事を雪に話したらどんな反応をしてくれるか、それが一番重要なことだった。


時雨は手に入れた装備を取り敢えずインベントリにしまったままにし、ゴブリンキングを倒したことで部屋の奥に現れた転移魔法陣に乗った。転移した場所は洞窟の入口ですっかり陽が落ちて辺りは夜の帳が下りている。


「うわ、もう夜じゃん!疲れたし取り敢えず街に戻ろうかな…えっと、"ファストテレポート"」


雪の時と同じように時雨は淡い光に包まれて【始まりの街】へと転移し、ダンジョンで大量に稼いだ金で宿に泊まった。仮想世界で感じる柔らかな布団の温もりに感動しつつ、濃密な初日だったなと思い出しながらブログラム上の睡眠についた。


そして、時雨が転移した後のゴブリンの根城である洞窟と、それを囲う森は静寂に包まれる中、木と木の隙間から月光に照らされて妖しく光る鎧が呟く。


「ま、まじ?」


■■


【Your Own Story/最初の難関ダンジョン"鬼の王"を初日でソロクリアした美少女拳闘士現るwww】


1:どこぞの廃人剣使い

やべぇもん見たわ


2:どこぞの廃人弓使い

嘘情報乙


3:どこぞの廃人魔法使い

圧倒的不遇の雑魚職で有名な拳闘士が初日ソロクリアは流石に話盛ってるでしょ。Lvもスキルも装備だってこの時間ならまだ充実してるはずもない。上位プレイヤーですらまだLv上げとスキル回収、装備作りしてるだろうし。


4:どこぞの廃人剣使い

いや、まじなんだよこれが

草原に人が溢れすぎてて鬱陶しかったから森まで狩りに行ったんだけどさ、近くに"鬼の王"の中級ダンジョンがあるのβで知ってたから様子見しに向かったんだよ。


そしたらさ…

「あはははははははははははは!!!!」

とか高笑いしてる女プレイヤーの声が奥から響いて聞こえて来てさ…


↓続く


5:どこぞの廃人剣使い

さすがに怖すぎて中に入れなかったから外で見張ってたんだけど、クリアした人だけが使えるダンジョンの入口に転移させられる転移魔法陣で拳闘士が1人だけ出てきたんだよ!しかも初期のレザー装備一式で!!


それとめっちゃ可愛い黒髪の女の子だった←ココ重要


6:どこぞの廃人鞭使い

気になる所いっぱいあるけど取り敢えずその女の子の容姿についてkwsk


7:どこぞの廃人大盾使い

高笑いとかwww

魔王系女子なのかな?www


8:どこぞの廃人弓使い

魔王系女子は草www


9:どこぞの廃人魔法使い

草に草を生やしてはいけない(戒め


10:どこぞの廃人剣使い

容姿については設定でいじれるからリアルの見た目と違う可能性が高いけど、取り敢えずキャラの見た目とかを書き込んでくわ


・見た目年齢は高校生くらい ・黒髪ロング

・少しタレ目気味 ・めっちゃ小顔

・割と身長高め(160~170cmくらい) ・スタイル抜群

☆巨乳 ☆くびれはすごいけど太腿はちょっと肉感的

・洞窟の外に転移した後少しだけ喋ってるのを聞いた感じは可愛い系(高笑いは聞き間違い…?(困惑))


今ある情報はこんな感じ


11:どこぞの廃人鞭使い

お前の性癖はよく分かったわ…


12:どこぞの廃人大盾使い

話戻すけど実際初期装備で尚且つ拳闘士、初日で満足なステータスもスキルもないであろう状況で"鬼の王"がクリア出来ると思うか?


13:どこぞの廃人魔法使い

普通に考えれば無理ゲー

元々格闘技を習ってる人だったりしたら立ち回りに差があるだろうけど、それでもβで多くのプレイヤーを苦しめた"鬼の王"をクリアするのは流石に無理……なはず……無理だよな?


14:どこぞの廃人剣使い

俺も苦しめられたプレイヤーの1人だから自分の目を疑ったわ。でも事実なんだよ…ハメ技でも見つかったのかもしれん


15:どこぞの廃人弓使い

正直信じきれてないが可能性があるならハメ技を偶然見つけたか相当強力なスキルを獲得してるかだな

疑問としては【始まりの草原】と【始まりの森】付近でそんな強力なスキルが手に入るとは思えないことがあげられる


16:どこぞの廃人大盾使い

ハメ技って言ってもボスのゴブリンキングは"眷属召喚"スキルあるよな?1対1特化の拳闘士がどうやれば…もしやβで不遇すぎて運営がかなりの上方修正を入れたのかもしれん


17:どこぞの廃人剣使い

現状だと情報量少なすぎ問題

新しくなにか分かれば随時更新してくからこの掲示板は残すわ

お前らもそれらしき女の子見つけて分かったことがあったら教えてくれ

幸いにもβ不遇評価で拳闘士は少ないだろうから一目で分かるはず


18:どこぞの廃人弓使い

( ̄^ ̄)ゞ


19:どこぞの廃人魔法使い

( ̄^ ̄)ゞ


20:どこぞの廃人鞭使い

( ̄^ ̄)ゞ


21:どこぞの廃人大盾使い

( ̄^ ̄)ゞ


22:どこぞの廃人斧使い

今来たんだが謎の魔王系美少女拳闘士の情報と無駄に統率の取られたお前らに俺は困惑してる


23:どこぞの廃人剣使い

ようこそ魔王系美少女拳闘士ストーカーの会へ(ニッコリ)


24:どこぞの廃人弓使い

それはお前だけ


25:どこぞの廃人魔法使い

俺らを巻き込むな


26:どこぞの廃人鞭使い

オレハチガウ(動揺)


27:どこぞの廃人大盾使い

風評被害


28:どこぞの廃人剣使い

お、お前ら!?


29:どこぞの廃人斧使い

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

新作始めました!ラブコメです
俺は姉と妹が大好きなのに、姉と妹は俺が大嫌いらしい
ぜひ読んでいただけたら嬉しいです!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ