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"Your Own Story"  作者: 音夢
第1章『激突』
17/43

Story:16『大好きだから、大嫌い』

皆様の意見を見て今後の参考にしたいと思いますので、気になったらぜひ気軽に感想や評価をお願いします!

■■side:snow vs シグレ■■


「"多重展開(マルチ)/フレイムランス"!」

「ちょっ、さすがに数が…」


杖を頭上に掲げた雪、赤色の魔法陣(砲門)が唸りを上げて真紅の槍を無数に射出し、MPを大量に消費して時雨を強襲する。雨の如く降る炎槍、これが氷槍なら直接破壊ができることは実証済み。が、意表をつかれたとはいえメルドに対して暴威を奮った燃焼ダメージを見た後でそれをするのも躊躇われる。そもそも殴る蹴るをして固体でないものを破壊できるかも些か疑問だ。


「それ!いっけぇぇい!!」

「うわぁ!?」


時雨はひび割れたアスファルトを力強く蹴りバックステップで距離をとる。雪の挙動を見てみれば自動で追尾してくるタイプのものでないらしく、どうやってかは拳闘士の時雨には上手く理解できなかったが雪が意識して動かしているらしいことがなんとなく分かった。最大10から数が増えることがないのを加味すると、スキルの仕様もあるだろうが相当に難しい操作を要求されるだろうと時雨は推察する。


(これならまだ今のところ避けれそうだね)


ステップを踏み、走る、止まる、飛んで避けるといった基本的な動きで様子見をしている時雨だが、ゲーム内ゆえそれでも相当なスピードだった。しかし、まだ本気で動き始めていないとはいえ雪はそのスピードに適応し始め、時雨の方が後手に回るようになってきた。時雨が5分程回避に専念した頃、ほんの僅か前に時雨が居た地面からはプスプスと煙が上がり、雪の頭上では炎槍が1つ補充される。


「どうしたの、そろそろ当たっちゃうよ?」

「いやぁ、流石にこの数の攻撃をいろんな方向から受けるっていう格闘技は経験したことがないからね。悪いけど慣らさせてもらってる」

「余裕そうだね?じゃあ今のうちに一気に畳み掛けさせてもらう…よっ!」

(うわぁ…まだ増やせるんだ…)


炎槍は一度10本全てが纏まると、先程までとは比べ物にならないほど大きく膨張して時雨の視界を揺らめかせた。分裂、膨張、分裂、膨張───総数32。2人の頬にプログラムの汗が伝い、仮初の心臓が早鐘を打つ。震える体と心は表裏一体の恐怖と好奇心。負けるかもしれないが、互いの越えたい壁が目の前に立っている。


「ヨイショーッ!!!」


スズカの落陽を彷彿とさせる()の雨が時雨に向かって降り注ぐ。ここまでの数になれば流石に細かい制御は利かないらしく、物量で圧倒する代わりに機動性を失っていた。


時雨は〈追憶〉を発動しつつ避けようかとも思ったが、元々そこまで多いわけでもないMPのせいで基本的には数回しか発動できず、連発するには敵にダメージを与えて〈鬼人の吸魂〉の効果でMPを回復するか《仙才鬼才》で時間をかけて自動回復しなくてはいけない。


だが、時雨は未だに雪にダメージを与えられていないだけでなく、近づくことすら出来ていなかった。〈追憶〉を発動して直接的に近づくことは不可能。自動回復で時間をかけて攻略するのは相手の余力を測りきれていない上、殲滅系攻撃の嵐の中ではかなり厳しい。それでも…フレイムランスより遥かに機動性を失った今の攻撃なら、なんとか避けきって近づくことも出来なくはないはず。そう希望を見いだした時雨は飛び出した。


(最初の攻撃は私の動きをある程度見極めるためのブラフ……その後に上から来るのは次に仕留めるための誘い込み、本命はそれを避けた後っ!雪の狙い通りになる前に一気に転移候補場所を塗りつぶす!!)


眼前に迫る雪の攻撃を一気に左に数十m逸れて回避し、続く上からの追撃を前に走り込んで着弾点から離れる。そしてそれは雪の誘い込み。確実に倒せるという保証は無いし思ってもいないが、手傷を負わせる、若しくは体の動きと思考を僅かだとしても縛ることが出来る。これが雪の狙いだった。もちろん時雨もそれには気がついているし、本来なら分かっていて態々雪の狙い通りに動く必要も無い。


(いまっ!!)

「っ…」


炎の波が1列になって時雨を正面から襲い、逃げ場を固定された瞬間にリズムダウンで雪の思考に余計な選択肢をわざと与えるためだった。敵の攻撃の目の前で足を止めるという愚策に見える対処に、先読みして左右や背後、上空から時雨の到達点を狙っていた炎槍が雪の意識に同調するようにガクッと動きが乱れ、雪自身でも把握しきれない意識の歪みが生まれる。そして、まさに消えた(・・・)ように雪の意識と視界から時雨は姿を霞ませた。


「"追憶"」


雪はどうにか制御した炎槍を時雨の逃げ場を潰すようにして包囲陣形で飛来させ、確実にダメージを負わせたという確信を持つ。黒煙が上がる着弾点の炎の勢いが失われ、メラメラと燃えていた場所の詳細が顕になれば、より黒く色を変えたアスファルトの地面。そこに時雨は居ない。


「…………」


逃げた?不可能。倒せた?その可能性が高い。確実に?恐らく。死亡エフェクトは?炎で見えなかった。いくつもの問いが雪の中で生まれ、その1つ1つに今考えられる答えが当てはめられていく。どう考えても確実に仕留めたという確信が湧いてくる現状、それでもぽつぽつと疑念が雪の心に広がった。


(最後に呟いたのはスキル…?いや、でも、あの全方位から囲まれた状況で逃げるなんて…あ、タブを開いてログを確認すれば───)


「"轟撃"」

「っ!?"フレイムアーマー"、"フレイムランス"!」

「"追憶"」

「はぁ!?ぐぅ…痛った…!」


先程までとは違う場所に現れ攻撃スキルを発動しながら突き進んでくる時雨。いや、明確にいえば先程まで居た(・・)場所に現れていたことに雪は驚愕した。急いで炎を体に纏って防御の構えを取り、反撃用の魔法を宙に浮かせるがまたしても時雨は消え、約1~2秒後には右脇腹に鈍い痛みが走る。どうにか補正の入ったDEFで一撃は耐えきれたが瀕死なことに変わりはない。


現実世界だったら骨が骨折、下手したら内臓にもダメージを与えてしまうかと思うような重い一撃を受けた雪はゾッとし、体を強ばらせた。痛覚軽減機能が搭載されているというのにこの痛み、怖がるなという方がどだい無理な話でもある。


「はぁ…はぁ……"フレイムサークル"、"ヒール"、"ヒール"、"ヒール"!」


殴り飛ばされた勢いのままたたらを踏んで後退した雪は、自身の周りに灼熱の結界を作り出し、その中で回復魔法を行使してHPをひとまずの安全圏まで回復させる。薄れていく鈍い痛みと共に消えていく恐怖。だが、それと反比例するようにして謎や疑問は膨れ上がり思考を加速させた。


(どうして!?いや、でも確かルヴァンが最初に時雨ちゃんを見つけた時に…これが瞬間移動?AGIを引き上げただけの瞬間的な超高速移動だと思ってたけど……違う、これは全然違う!これは転移スキル!!いつの間にそんなスキルをシグレちゃんが!?ていうか実装されてたの!?ただ早いだけならいくらでも対策できる、けど、転移スキルの対策なんて……なにか弱点の1つくらい…それより、なんで最初から使わなかったんだろ…?)


「まさかsnowも一撃で倒せないとは思わなかった」

「魔法使いは攻撃も味方のサポートも魔法スキルで出来るから最初に狙われやすいんだよ。だからHPとDEFは高めに振ってあるんだ。それに、防御系の魔法も使えばシグレちゃんの攻撃でもなんとか耐えられるようになってるわけ(たまたまだけど…」


時雨の言葉に毅然とした態度で答える雪。そんな彼女に対して「まぁ、snowのことをそんな簡単に倒せるなんて私も思ってないけどね」と、深い仲だからこそ言える元仲間の現敵キャラに送る言葉の様なセリフを話す時雨。底を感じさせない薄く冷たい笑みを浮かべるが、内心では雪と同程度くらいには相当焦っていた。冷や汗どころかナイアガラの滝である。


(まっず…今までダメージなんて全然受けなかったから問題なかったけど、さっきの火の鎧?は攻撃したらダメージ受けるみたい。多分あの炎の結界もだよね。一気にスキルのデメリットでステータス下がったしHPが減った…今日はもう《仙才鬼才》と〈鬼人演舞〉が3回目だからHPとMPの最大値も低いし…って、えぇ!?HPゲージ超真っ赤!次にsnowの攻撃当たったら死んじゃう…あ、しかもそろそろ10分経つじゃん)


時雨はバトルロワイヤルイベント開始直後のスタートダッシュに1回、ジル達との行動時に1回、そして雪との戦闘に1回ずつ時間制限や回数制限のあるスキルを使っていた。数十人と戦っていく中で基本的には《仙才鬼才》や〈鬼人演舞〉、〈孤軍奮闘〉を発動しなくても素のステータスに〈追憶〉を絡めるだけで勝ててしまっていた。それこそ殺られる前に殺るか、気が付かれる前に。


だが、時雨は雪との戦いを楽しんでしまった。今までに魔法使いとも何回か戦ったが、雪の様に緻密な操作を必要とする長期的物量戦にはならず、MPの消費をなるべく抑え、味方の補助をしている程度だった。少し前に戦った魔法使いが雪に近い戦いをしていたが、魔法の同時展開でないがために僅かなタイムラグが生まれ、それは時雨からすれば大きな隙でしかなかった。


そんな風に他のプレイヤーといつの間にか比べてしまっていた時雨は、雪と対峙しても数手先を読み合えるだけの力を持つ大きなメリットにしか目が行かず、最大の問題点であるデメリットがすっかり頭から抜けてしまっていた。いつもならこんな事は有り得ないのに…と唇の裏を軽く噛み、いつの間にかここ数日で興奮体質になってしまっていた自らの心を律しようと落ち着か───


「シグレちゃん。今、ダメージ受けたよね?」

「えっ、あ、うん」

「シグレちゃんのスキルってどれも凄い強いけど、デメリットもヤバいよね?」

「…そ、そうだったっけ?」

「それと、今シグレちゃんと戦い始めて約7分30秒なんだよね。それについてはどう思う?」

「……一瞬に感じたけど結構な時間戦ってたんだねぇ」


これはまずい。と、時雨は内心で激しく動揺していた。自分はゲーム初心者であり、そういう意味では先輩にあたる雪に色々なアドバイスを貰い、自らの体験したことや持っている情報を公開して知識を得たのだ。それはつまり敵になった時の厄介さを意味する。


最後に自らのスキル等に詳しく触れた機会を思い出せば、時雨の全体的な内部情報の半分ほどしか雪に知られてはいない。だが、この場合は半分()知られている、という言葉が適切だろう。そして、残り半分に当たる唯一雪の裏をかける決め手(追憶)も今まさに顕にし、仕留め損なってしまった。


無理矢理にでも詰めよればそれこそ倒すことは出来たであろうが、まともに受けたのが初めてになるプレイヤーに起因したダメージに僅かばかりか臆してしまったのが時雨の本心であり、自分でも気がつくのは難しい深層心理。それこそ自分の今置かれている状況を理解してしまった現在はなおさらである。


「さらに言えば、シグレちゃんがさっき使ってた転移系スキル。驚異的なスキルだけど、やっぱりそっちも使うのに縛りとかデメリットあるよね?」

「………」

「シグレちゃん…沈黙は肯定だし、めっちゃ目が泳いでるよ。泳ぎ放題だよ」

「あ」


落ち着くどころか動揺は大きくなり、雪には決して小さくない情報を戦いや今のやり取りの中から抜き取られてしまった時雨。雪は雪の方でまるで全部分かりきっているかのような態度で接することにより、少しでも情報を抜き取ろうとした。結果は成功。自分自身も実際はMP関連がかなり厳しいことになっているが、そういった部分を隠すポーカーフェイスという点では時雨の1歩も2歩も先に進んでいた。


「シグレちゃんには悪いけど今ので作戦はいくつか思いついたし、勝ち筋も見えた。もう負けるなんて思わない」

「…ずるくない?」

「えっ、私が……ずるい?」


時雨の言葉に雪の目が細くなり、口の端が下がる。どことなく辺りの気温も低くなったような気がするほどその表情には暗い影が見てとれ、放たれる存在感、威圧感といったものが桁違いに跳ね上がった。


「だってさ、そっちは私のスキルのこととか前々から色々知ってるのに、フェア(・・・)じゃない(・・・・)気が───」

「フェアなんてないんだよ!!」


雪の張り上げた声に時雨の体がビクンと震える。時雨としては別段そこまで深く追求するつもりはなく、冗談…とも言わないが、本気で責めるつもりで発した言葉ではなかった。だが、それでも雪の心を大きく揺さぶるには十分な意味を持っていたらしい。


「じゃあ聞くけど、例えば見た目が綺麗な人、力が強い人、頭が良い人、人付き合いが上手い人。そんな風に、誰かよりも優れてる部分がある人が人生楽しめるように出来てる。それって全然フェアじゃなくない?」


両手を広げて演説をするように並べられる雪の言葉。優れている者を優遇するという事はたしかに存在する待遇であり、世界(リアル)に確立されたルールの1つでもある。アイドルは容姿を問われ、格闘技では力と技術が必要とされ、学問では知識と見聞の広さが武器になり、ご近所ではそつなく付き合う社交性の高さが求められる。


そんな優れた何かを持っていることで人は優位性を得る。なら、もしそういった優れた何かが何も無い人がいたならば……極端な例を出せば下位互換と言われ、無価値と評価され、周囲と比べられ、そして落ちこぼれの烙印が押される。なんの優位性が無いとしてもそれだけで人の全てが決まる訳では無いが、学生という1つの隔離された学校(世界)の中ではそんな彼ら落ちこぼれが蔑まれるのは仕方の無い現実でもあった。


だが、その現実は武技という優位性を持っている時雨にはまだ深く浸透しない。それこそ、才能だけでなく努力で結果を積み重ねてきた時雨には大きな一撃とはなり得ない。


「確かにそういった部分が評価されることはあるけど、その人達だって努力してる訳でフェアじゃないなんて事は…」


なにも、万人が産まれた時から優れている訳では無い。多くの人が努力し、涙流して得た結晶。努力が報われた結果(結晶)


「じゃあ、才能がない人は努力してないって言いたいの?」


残念なことに努力が報われず、得るものが乏しかったらその人の努力は否定されるのだろうか?


「いや、そういうわけじゃ…」


否。努力したという事実は存在する。が、結果が努力と比例していないだけだ。それは当人の力不足なのか、単に向き不向きなのか、それともまだ努力が足らないのか…答えはそう簡単に見えてこない。ただ、報われる人もいれば、報われない人もいる。理由の見つからない、事実。


「努力したって報われない人は沢山いるんだよ。それでも、頑張って頑張って頑張って頑張って!なのに、才能がある人は横から私達を笑いながら追い抜いていく!!なんで…?私だって頑張ってるのに」

「………」


そして、雪は報われなかった側だった。溢れ出す感情の奔流が時雨の頭に響き、その重みがはっきりと伝わる。そのせいでどういう風に反応し、言葉を返すべきか見つけられずに数秒の間黙ってしまった。


慰めは現状最悪手、同情や哀れみは論外、繰り返し話を聞くのもどこに感情の堰が切れるポイントがあるか分からないため、出来ればしないに越したことはない。


つまり、今の時雨にはどうしたらいいか分からない、どうすることも出来ない。さらに、雪の大きな悩みに今まで気がついてあげられなかったという負い目を感じる。


「っ…」


加えて時雨はバツが悪そうに俯いた。負い目。救ってあげられなかった。私が気がついてあげれば。そんな考えは酷く傲慢なのではないだろうかと。自分が気がついていれば助けてあげられたという過剰な自信は、相手を助けられる側として下に見ているのではないか…?混乱に動揺と自責の念が加わる。


(私は……雪のことを…)


「シグレちゃんだってそうだよ」

「え…?」

「可愛くて、なのにかっこよくて。それにすっごい強い。それこそ男の子よりもさ。私はそんな時雨ちゃんが友達でずっと誇らしかったよ。でも、いつからか羨ましくなって、今では私の心を苦しめる。ずっと大好きな親友で、なのに大嫌いって言えるぐらい妬ましくて」

「そんな…」


ぐるぐると頭の中をかき乱され心ここに在らずといった状況から、雪の一言で何度も体から引き剥がされそうになる意識がまた引き戻される。自分が親友に疎まれていたのか…という衝撃が頭を殴りつけたかのようで、ぐらっと視界が揺らぎ体がよろめいた。


「だから…私は負けられないし、負けたくない。私にだってシグレちゃんに勝てるものがあるんだって、証明しなくちゃいけない。大好きなゲームですら、クソゲー(・・・・)になったら私は耐えられない」


笹森 雪が持つ心の最後の砦は"ゲームが大好き"であるということ。今までの十数年という時間の中で、雪は多くのものをその身から切り離してきた。運動は人並み以下、勉強だって自慢ができるようなものではなく、自分と相手との距離感を掴むのが苦手なせいで深い人付き合いも片手で数えられる程度。


努力しても平均以下だったそれらを「私には無理だから」と諦め、切り取り、穴が空いた場所には継ぎ接ぎにした新たな可能性をはめ込む。そして、また何かを切り取る。パッチワークのようにバラバラの不揃いな平均値を下回る素材(経験)が集合してできたのが今の雪で、唯一ずっと残り続けているのがゲーム(希望)だった。


「そうじゃないと、私は私に意味(価値)が見つけられなくなる。分かってる…これがただの我儘だってことは。でも、ゲームだけは負けられないの、どんなことをしても。だから、情報収集の過程が私にとっての努力なのに…それをズルなんて言わせないっ!」


勝つためには何でもする。作業じみた周回育成も、心を(から)にしてひた走る素材集めも、事前に行う敵の情報収集も、自身の実力の秘匿も……全てが勝ちに繋げるための前準備であり、唯一雪に許された結果を出すことの出来る努力。


それを面と向かって「ズルい」と、一言言われた。


許せるはずがない。許せるわけがない。許したら、今までの…これからの全てが、終わって(クソゲーになって)しまう。


「シグレェェェェ!!」

「っ!?」



薄く藍色に染まり始めた空の下、満月に照らされて淡く輝く雪女(ゆきめ)が鬼のような形相で吠える。血のような眼と人とは思えないほど青みがかった白い全体像は、凍えるほど冷たい死を連想させた。


「っ…………、スノォォォォウ!!」


苦虫を噛み潰したような表情の後、赤黒い時雨()は青白い()に呼応して叫ぶ。


その表情はどこまでも悲しそうで、辛そうで、今にも泣き出しそうな、報われることのない顔をしていた。


雪にはそんなことに気がつく余裕は、ない。

Story:16は今までに明確にしてこなかった小ネタ等がいくつか出てきました。分かりますかね…?17でも同様に小ネタ&伏線(?)回収があります。


一部小ネタ紹介:キャラの場合

"(ヒイラギ) 時雨"

赤黒い装備の(時雨)→赤鬼連想/鬼とヒイラギの葉/赤鬼の赤という色が表す意味/強くなりたいと力を求める心(貪欲)/鬼と時雨という言葉(鬼時雨や時雨鬼と言えば分かる人もいるかも?)


"ササ森 雪"

青白い見た目の()→青鬼+雪女連想/鬼と笹(笹団子、笹苞山)の昔話/青鬼の青という色が表す意味/馬鹿にされてきたことへの怒りや憎しみの心(瞋恚)/一部地方では雪女を山姥()と考える伝承がある(満月の夜)

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おかげさまで総合評価1800↑、総PV12万突破致しました。これからも末永くよろしくお願い致しますm(_ _)m

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俺は姉と妹が大好きなのに、姉と妹は俺が大嫌いらしい
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