Story:15『好敵手』
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ネロ祭前にまさかのZero復刻だとは思ってませんでしたけど初参加なんで興奮状態です。イベントアイテム交換のケイネス先生が可愛くて「誅伐してくださいぃぃ!」ってなったのは私だけじゃないはず( ˇωˇ )剣ディルもイスカンダルも当たらなくて私は膝を折りましたが皆さんは引けたでしょうか?え?引けました?敵ですね。
「いました。廃都市に入ってから見失ってましたけど、さっきの激しい戦闘音が彼女達だったみたいです」
「本当に便利だよね、ルヴァンの視覚共有」
「最初にルヴァンが従魔にしたのがシャドウ・ホークで正解だったわね」
ルヴァンと呼ばれる男の右目には青色のペンタグラムが輝いており、どうやら自身の従魔となっている鳥類系モンスターとその視界を共有しているらしい。本人達はとある高層ビルの一室に身を隠し、従魔のシャドウ・ホークが上空から1つのグループを観察していた。
共有されている見下ろすような視界の先には陥没した地面と吹き飛ばされた外壁の元建築物、その中心に6人1パーティーとソロがくっついた7人のプレイヤーが立っていた。そんな7人の中にいる1人の女プレイヤー、赤黒い装備を身に纏って異様な存在感を放つ彼女がルヴァン達の目的の様子。
「ん?もう1人の女の子がウィンドウ…を開いて、膝をつきましたね。なんだか…がっかりしている?」
「え、さっき戦ってた敵には勝ったんじゃなかったの?」
「そっちは圧勝ですね、誰もやられていません。女の子は今さっき開いたウィンドウを拡大して読み始めたみたいなんですけど、そしたらそうなりました」
「ふあぁぁ……おーい、残り1時間30分になったみたいだしそろそろ動き出そうぜー」
「あっ…うん、そうだね。じゃ行こうか」
ソファーに深く座り戦況を確認する者、流れてくる情報から少しでも有益な情報を抜き出そうとする者、机の上で自身の装備の手入れをする物、数時間の疲れをベットで少しでも横になり回復しようとする者など、それぞれが自由に時間を使っていた彼らは1人の女の声で一斉に立ち上がった。
ダンッ!!と音を鳴らして飛び出すは地上100mを優に超えるビルの割れた大きなガラス窓。自由落下に始まり、ビルの壁をヒビ割れを生みながら蹴りつけ反対のビルの壁へ、風魔法が使える者は落下体勢を調整し、結界魔法が使える者は応用して足場を作り、身体能力に自信がある者は街灯・電柱・広告塔を自由に跳び回って降りていく。
そんな現実離れした、仮想世界だからこそできる人並外れた集団は次の獲物へと狙いを定めて走り出す。統率の取られた動きは彼らの長い付き合いからくる信頼と実績に裏打ちされた完璧な動き。それぞれが多重に展開したウィンドウでいくつかの役割を分担、並行して作業、その練度は軍の小隊にも引けを取らない。
「全員戦闘準備、気配遮断始め」
リーダーの掛け声によりすぅ…と、空気に何もかもが溶けてしまったかのように希薄になる彼らの存在。音が消え、匂いが霞み、姿形は目の前に立たれても意識の外にあるかのような、そんな状態。
「目標地点まで残り500」
「ねぇ、出会い頭に仕掛けていいのかしら?」
「いいよ。でも、あの子は私のだから」
「わかってるって。なら、俺は斧と剣をやりてぇなぁ」
「なら私は鞭の子で」
「なら僕は弓と魔法ですね」
「その前にまずは盾の人から。お願いね、Alicia」
「任せてちょうだい」
従魔から流れてくる視界と展開したマップを見比べて対象までの距離を把握し、数十秒後に遭遇することを仲間に知らせるルヴァン。全員が武器を手に持ち、気を引き締める。そして、少ない会話で相手を割り振った。
「残り300、次の交差点を右に曲がって150、左に曲がって接敵です」
全員に共有されたルートがマップに光る。光る道筋を辿るは風を切るプレイヤー達。秒読みならぬ距離読みが始まり、宴の会場へと迫っていく。
「200…………150……100……」
「さぁ、みんな。行こうか!!」
そして、このゲームにおいてトップと呼ばれるグループと、運営にも目をつけられているソロのプレイヤーがついに遭遇した。
出会うべくして出会い、己のエゴを通してでも勝ちたいと思う両者がついに視線を交わす。
■■
「"燐火"」
「は?」
「"カバーリング"!!っっ!が…ぁ!?」
「メルドっ!」
「全員ひとまず下がれ!!ルナはメルドに多少ダメージを入れても構わん、こっちに引っ張って来い!」
「わかったよ!」
怪しく輝きゆらゆらと燃える燐火が突如時雨達を囲うように現れ、それにいち早く対処したメルドが青白い炎に包まれた。どうやら燃焼状態を強制的に付与するらしく、メルドは《覇城》によって0になったDEF値の上から受けたダメージに付随して燃焼スリップダメージをくらい、HPが恐ろしい速さで削られていく。
ニックの指示により後退し、背中合わせに互いの死角を補う。そして奇襲によって瀕死状態になったメルドを、ルナが簀巻きにして陣形の中央まで担ぎ、すぐさま症状を確認した。が、まずいことに彼らの中には自分以外を回復させるスキルを持つプレイヤーがいない。本来ソロとして活動するのを基本としている彼らは自分自身の回復手段を持っているのは必須、だからこそ、自分以外に干渉するスキルをほとんど獲得していない。
(ったく、やっちまった……一言で表すなら"慢心"だな)
ニックは苦笑しながら己の考えの至らなさを悔やんだ。ソロが多数の敵を相手取る場合、瞬間火力で押し切るか、高い耐久力でジリジリと差を詰めるのが基本となってくる。それを半々にしてソツなくこなそうという考えはまず成立しない。VRMMOというジャンルで受ける数の暴力に対してそう簡単に敵うはずがないからだ。もし両立させる可能性を秘めていたとしても、正式サービス開始1週間でそれを体現できるほどVRMMOは甘くない。
慢心。彼らはパーティーを組むという形をとっただけのソロだった。嘘偽りなく仲間と思っていても、戦い方はソロに寄っていた。メルドに関しては職業上仲間のプレイヤーに干渉するスキルは多いが、それでもソロで戦っていけるような構成でキャラを育てている。それ以外の5人は言わずもがな自分優先のスキル群。それは全員が気づいていたが「俺らなら、私らなら大丈夫だろう」という考えが先行してしまった。そして、自分達がゲームにおいてトップ勢であるという自信がそれをさらに助長させた。
「だめ、メルドの燃焼状態が解けない!」
「メルド、燃焼の自己回復はできるか!?」
「DEF値依存の耐性スキルしか……しかも今は0だからもう止まらない。くっそ…盾職として失格だな。先にあっちで待ってる、がんばれ────」
メルドだった光の粒が、ルナの腕から零れ落ちるように風に運ばれ消えていく。他職業よりも圧倒的に高いDEFを誇る大盾士が持つ、通常の耐性スキルから派生した特殊耐性スキル。大盾士の高いDEF値に依存して効果を発揮するその状態異常耐性は、現状多くある職業の中でも最高位に位置するほどのものだった。
だが、《覇城》により0になったDEFが意味するのはDEF依存耐性スキルの大幅な弱体化。そして、その耐性スキルの情報を独自に仕入れ、検証し、メルド自身の人柄を調査していたルヴァンにより大きな弱点とされてしまっていた。「彼ならこういった場面で《覇城》を使い、こういった危機に陥ればすぐさま〈カバーリング〉を使うでしょう。状態異常を付与できればそれからは一瞬です」と。
ただ普通に攻撃しただけなら盾やスキルで防がれて終わってしまう。だが、メルド以外の味方に対する状態異常攻撃だったためにこの状況を作り出すことが出来たわけだ。さらに言えば現環境で状態異常攻撃は数ある職業全体で見ても両手で数えるほどしかなく、総じて素のダメージ量が低い。そのせいで使用者は少なく、耐性値が圧倒的な盾職には不向きの攻撃方法。だからこそ、メルドの虚を突くことに成功し、職業上の不利を覆して下克上をすることに成功したのだ。
「そろそろ攻撃し始めてもいいですか?」
「うっわ…ソロじゃなくてパーティーだったのか。てか、あんた…ルヴァンか」
「おや?僕を知ってくれていましたか、ジルさん」
仕掛けられた攻撃は1つ、なら相手はソロかもしれない。という淡い期待は、先程燐火を使ってきたらしい魔法士の女の後ろから聞こえてきた声で呆気なく消え去った。右目にペンタグラムを浮かべて左目にはモノクルをかけ、ローブとも白衣ともつかない服装のいかにも研究者のような金髪の男は、ジルが何度か顔を見かけたことのあるトップ勢の1人、ルヴァンだった。
「あんたもこっちの事知ってるんだな」
「えぇ、もちろん。それに、うちのリーダーがあなたを良く知っていますからね」
「リーダー…?」
同じレベル帯になれば狩り場が重なることが増え、高性能の装備を揃えようとすれば頼る生産職も被り、前線で戦っていくための知識を得ようとすれば至る所のサイトで互いの名を目にする。そんな関係の彼ら。嫌でも手に入る情報だが、なら必要ないのかと問われれば当然NOであり、今後自分が成長していく中でも貴重な情報源の1つとなる。
トッププレイヤー達はプレイヤースキルも当然だが情報量でも大きくその力量が左右されるわけで、さすがに自分の事は知られているか…と、表情には出さない情報戦の殴り合いが密かに始まる。多くを知れば多くに対処し、多くを見破れば多くを揺さぶれる。今回、その軍配はニックでなく、ルヴァン達に上がった。
「久しぶり、ジル」
「…………へぇ、snowとルヴァンは仲間だったのか。知らなかった」
「言わなかったし、サービス開始からはほとんど一緒にいなかったからね。クラメンに本格的に会ったのはイベント直前だよ」
一瞬目を大きく開き驚きを隠しきれなかったジルだが、すぐに表情を元に戻してなんてことのないように雪に話しかけた。それに対する雪は屈託のない柔らかな笑みを浮かべて答えているが、それが気の抜けた雰囲気でないのがジルの頬を伝う冷や汗が如実に物語っている。
野生の勘とでも言うのだろうか、仮想現実の世界ではそう感じることの出来ない圧倒的重量感を持つプレッシャー。目の前で直にそれを感じたジルに、優しく頬を撫でるsnowの手から伸びる死神の鎌を容易に連想させた。同時にジルは混乱する。なぜ、初めて出会ったあの時に見抜けなかったのかと。そして、単に見抜けなかったのではなく、絶対に悟られないように完璧に隠し切られたのではないかという恐怖に戦く。
(snowには悪いがシグレに寄生してるだけ……なんて思って全く気にせず目を離してたのは失敗だったか。どう見ても、どう考えても、この4人の中でsnowが一番………ヤバい)
じっとりとした空気が2人を包み、直後、ふいっと雪はジルから目を離した。そんな自分の横を素通りしていくプレイヤーの背中を見つめ、彼は思ってしまった。本命が自分じゃなくて助かったと。そのままその場に残されたジルを背後に真っ直ぐに進んだ雪は口を再び開いた。
「ま、私の目的は────シグレちゃん、会いたかった!まさかジル達と一緒だとは思ってなかったけど。むっはぁー!この柔らかさだよ!!」
「そっちこそ。クランっていうのに入ってるとは聞いてたけど、まさかリーダーとは思ってなかったよ。あと胸触らないで」
張り詰めた緊張感を切るようにして雪は時雨にガバッと抱きついた。それに一瞬驚いた時雨だったが、普段通りのことだと思い出すと逆にほっとして頭を撫でる。それでも今は敵同士、時雨が思考を止めることはない。
(リーダーとは思わなかったなぁ。普段ふざけてるけど雪はゲームに関して本当に凄いんだ…むしろ、私に実力がバレないように一緒にいる時はセーブしてるくらいだったのかも?)
「あんたらは剣士のニックと斧士のデリンだよな?俺が相手だ、広いとこでやろうぜ?」
「2対1、随分とやさしいんだな」
「あんたら2人でも役不足だ、少しは楽しませてくれよ?」
「言ってくれるなぁ?半殺しにやるから覚悟しろ」
「デリン、あんまり熱くなりすぎるなよ?どうせならだ、これは特別会場でモニタリングされてるんだから二度とフィールドをまともに歩けなくなるような滑稽な負け方をさせてやろうじゃないか」
時雨がふむ…と考え事をしながら雪をナデナデ、雪は時雨の胸にグリグリと顔を押し付けていると、横で少し小柄な男がニックとデリンに喧嘩腰で宣戦布告をし、「おっ?上等だやってやらぁ」と青筋を浮かべた2人が睨みを利かせていた。笑顔で無駄に怖いことをニックが言い始めている。顔が劇画調である。
「ジルさんと魔法士のクライスさんは僕がお相手します。期待通りの実力なら嬉しいですね」
「あ、あぁ。望むところだ」
「爆殺してやるよ」
「あなたは私が相手よ、よろしく。軽く遊んであげるわ」
「うへぇ…私はそっちの若くて可愛い子が良かったなぁ」
「……言ってくれるじゃないの小娘。リーダーには先約がいるのよ。優しくしてあげるから疾く死になさい」
その流れに感化されたのか他の面々もバトルロワイヤル中で今も尚誰か他のプレイヤーに狙われているかもしれないというのにかなり自由に対戦相手の割り振りを始める。それだけ他の一般プレイヤーに遅れを取るわけがないと自信を持っているということなのだろうが「なぜ皆喧嘩腰なのか…」と時雨と雪は顔を見合わせて苦笑した。
「…………」
「…………」
「ごめんね、奇襲をかけちゃって。でも、あの盾の人がいると面倒そうだったからさ」
「まぁ、それはしょうがないかな。気が付かなかったこっちも悪いし。そんなことよりさ、気配が感じられなかったのってスキル?」
「あ〜…まぁ、そうだね」(大盾士の人のことよりも気配遮断スキルか……時雨ちゃんらしいっちゃらしいけど)
少し離れた2人は数秒無言で見つめ合い、先に喋りだしたのは雪だった。予め得ていた情報の利を生かしてメルドを倒したことを雪が謝れば、時雨は仕方がないことだと手をひらひらと振って言外に気にするなと応える。そのことももちろん大事だが、どちらかと言うと気配を感じられなかった方が気になると言い出した時雨に雪は視線を横に逸らす。
「まぁ、シグレちゃん、私達の話もこの辺にしてさ」
「始めようか」
「「絶対に、勝つ!!」」
■■side:ガンツ vs ニック&デリン■■
会合地点から100mほど離れ、開けた所まで移動した3人のプレイヤー。1人は槍を肩に担ぎ、1人は長剣を構え、1人は戦斧を地面に突き立て、射殺さんばかりの鋭い視線を向け合う彼らはいかにも戦争勃発寸前といった雰囲気。大瀑布のように降り注ぐ可視化されたかと思ってしまうほどの威圧が空気を震わせ大地を鳴らす。
「よっしゃ、こっちも始め───」
「"飛斬"!」
「うぉわ!?お前なんてタイミングで攻撃しやが───」
「"山薙ぎ"!」
「ほわぁい!?」
「ちっ、外したか」
「けっ、避けやがって」
ガンツがほんの一瞬目を瞑り、いざ戦闘開始と目を開けば眼前に一筋の斬撃が迫る。それを反射神経で横に飛んで避け、文句を言ってやろうと立ち上がってみれば今度は横薙ぎの一閃が首を狩ろうと振るわれ、気合いと根性で身体を仰け反らせて回避した。もちろん前でなく、後ろに。後頭部から勢いよくめり込んだ頭と驚くほどしなやかな曲線のブリッジを決めたガンツはぷるぷると震えており、それを見て「体育なの?」「寒いの?」と煽る2人はさすがと言える。
「お、お前ら卑怯すぎないか!?正々堂々とだな!」
「「いや、始めるって言おうとしたじゃん」」
「言い切ってないよな!?」
「「え?なんて?」」
「………死ねっ!!」
「てかバトルロワイヤルなんだよなぁ。そもそも攻撃するタイミングなんて自由だしぃ」
「てか喧嘩売ってきたのはそっちなのに戦いの作法を求められてもなぁ。そもそも俺は礼節を重んじる騎士じゃなくて社畜だしぃ」
頭部からダメージエフェクトを零し、僅かにHPゲージの削れたガンツは怒り心頭に達している様子。そんなガンツ相手でも柳に風といった反応のニックとデリンはやはり大物……というよりかは小学生のような受け答え。ますますガンツは怒り狂い槍を振り回し、2人も煽りゲージを着々と貯め始めた。
穿ち、切り裂き、叩き割る。恐ろしい速さで繰り出される技の数々が甲高い音を立てて重なり合い、それぞれのHPを徐々に、されど目に見えて削っていき、少しでも気を抜こうものなら一撃の元に観客席送りにする致死の攻撃がプレイヤーを掠めてポリゴンが舞う。
スキルに存在するCTをコントロールしながら通常攻撃と本命のスキルを絡め、機を狙い合う3人。万能型のニックは近中からバランスよく崩し、近距離特化のデリンはあらゆるオブジェクトを豆腐のように両断、ガンツは独特の槍術と歩法で己に迫る攻撃をいなしながら必殺の一突きを窺う。
魔法や大掛かりなスキルが使われていないせいで傍から見ればいまいち派手さに欠けてしまうため、単純な試合運びに見えてしまうが、だからこそ個人の技量──PSが色濃く見えてくる。
「"縮地"、"連撃/斬鉄"!」
「"流水の陣"」
ニックが使うのは効果範囲内であればどこにでも1歩で距離を詰めることが可能な〈縮地〉と、鉄をも斬り裂く鋭い一撃を放つ〈斬鉄〉。斬鉄はその特性上、鉱石系を含む幅広い装備に一定の累積ダメージを与えて耐久値を減らす効果が存在する。そして、ルヴァンが使っている槍は鉱石とモンスターの素材を掛け合わせた槍であり、斬鉄の効果が及ぶ。装備は破損しても修理をすることができるが、バトルロワイヤルイベント中には不可能、つまり、武器破壊は実質上の敗北を意味する。
互いにそれが分かっているからこそニックはガンツの武器破壊を狙い、ガンツはそれを槍捌きと視線誘導、身体の運び方でニックの太刀筋を意図的に誘導し1太刀も受けることなく、流れる水が滞ることを知らないかの如く躱していく。ガンツにとって狙いが完全に定まった技ほど見抜きやすいものは無かった。なら、狙いをつけず無闇矢鱈に狙えば良いのか?という訳でもなく、目的を達成するために必要な道筋はいくつか用意しておけという事である。その点に関してニックが1歩出遅れてしまった。
「退けニック!"星落とし"!」
「っ…"引落"、"三段突き"!」
「うおっ!?"ヘビーガード"!!」
戦斧を頭上に構えたデリンがニックを飛び越えてガンツを強襲する。ニックの剣のような線を描く攻撃が通用しないならば…と、現在の斧士が使える唯一の面圧殺スキル〈星落とし〉がガンツの頭を狙った。両刃の戦斧の腹が刻々と迫る。この大きさの武器を触れずに誘導することは不可能、今から範囲外に逃げることも望み薄、しかし、今回は武器同士が触れても耐久値は減らない。
槍の形状は鎌槍、ガンツはコンマ0.何秒というミスの許されない世界でデリンの戦斧の柄を的確に捉えて地面に引き落とし、すぐさまカウンターへと転じる。瞬速の突きが3つ、1つ目がデリンの頬を掠め、2つ目と3つ目は斧でなんとか受けとめた。
「頭ぶっ潰すくらいのつもりでやったんだがなぁ」
「俺の狙い通りなら枝肉にしてるところだ」
「はぁ…はぁ、ったく、ルヴァンの情報以上になかなかやるじゃねぇか。こっちだってそろそろお前らを倒してる予定だったんだがな。今のままだと数的に少し分が悪い」
土煙が舞う。STR特化型のステータスしているデリンの一撃もだが、ニックもガンツも相当な数値を誇っており、ゲームの仕様として所謂人体の急所に当たればSTRの数値すら関係なく即死させることも可能となっている。だが、未だに決まらない。決着しない。
それこそトップ勢2人を同時に相手取り、それでいて押し負けることのない戦いを繰り広げているガンツのPSがおかしいくらいだ。それでもガンツもニックとデリンを押しきれないのだから両者詰まり気味の状況なのもまた事実。
「………だから、こっからは本気でやってやるよ」
ガンツは姿勢を崩し、脱力する。槍の構えも、歩法も、意気込みも…全てを1度捨て、たった今この戦いにおいて全てを手に入れんと
「"大悦眼"」
優しく笑った。
『ニックとデリンは隠しアイテム"ギアスロール"を拾った!!』
「「自害しろランサー」」




