Story:12『え、呼びました?』
皆様の意見を見て今後の参考にしたいと思いますので、気になったらぜひ気軽に感想や評価をお願いします!
バトルロワイヤルが開始されてからゲーム内では約2時間が過ぎた。参加者が非常に多くいるため開始直後はランダム転移であっても混戦を極め、かなりのパーティープレイヤーの多さからソロプレイヤーは力量差よりも物量差によって雌雄を決している場合が現状では大半だった。
それはある程度運営も予想していたことであり、初イベントでの結果を元に次回以降のイベントをより良くするためのデータとして収集していた。さらに言えば、一部のソロプレイヤーの活躍はとても重要な情報になるので彼らソロの勝ち残り自体も願ったり叶ったりである。
つまり、パーティを組んだプレイヤーの動きとソロで行動をするプレイヤーの情報を同時に得られるバトルロワイヤルという形式は、正式サービスを開始したばかりの現状でとても良い情報源になる。
初めから物量差の関係で勝敗が決まってしまうようならば意味は無いが、それすら覆す可能性を手に入れられるのがVRMMOであり、一発逆転の大勝負を仕掛けることの出来るアイテムも少なからず存在しているので不公平とはなりにくい。
運営はそうやって初心者が上級者を屠れる可能性を存在させつつ、順当にキャラの育成を行った上級者には安定した戦闘を提供することによって今回のイベントの均整を取っていた。
だが、そんな風にほぼ万全な状態と言える環境作りをした運営にも予想が困難だった事件が開催2日前に起きた。イベントまでの猶予が残り少ない中で対処するにはあまりにも大きなそれは、まさに開発チームにとっての特異点が起こした事件─────
「お、お前ら!逃げろぉぉぉぉぉ!」
「あぁ?どうしたんだー?」
「なんかあったのかー?」
「プレイヤーでも見つけましたかー?」
大地を力強く蹴った足から土を飛ばしつつ、木々の間を真っ青な顔で走るプレイヤー。斥候役だったらしい彼は少し離れた木陰で休憩している仲間3名にめいっぱい大きな声で呼びかけた。すでに彼らは十数名のプレイヤーを倒しており、それなりの実力を持っているプレイヤーである。
が、仲間の必死の呼び掛けに対する一瞬の判断能力はまだまだだったらしい。そのせいで彼らは関わってはいけないものと遭遇し、逃げ遅れてしまった。
「76人目!」
「あがぁぁぁ!」
「「「っ!?」」」
突然人を数える声が聞こえたと思えば仲間の腹部から赤い光を零しつつ不自然に生える謎の腕。3人は即座に体を起こして視線の先にある仲間の体だったポリゴンの塊を食い入るように見やる。
直後、ズボッと腕が後ろに引き抜かれたのを機に完全にそのポリゴンは光の粒子となって霧散した。そして、視線が通るようになったその場所にはいるはずの腕の持ち主は目を凝らして見ても既に居ない。3人を言い知れる恐怖が覆う。
「っ、AKARIは結界を張れ!シュバルツは俺と一緒に状況確認!」
「「了解!」」
リーダーの指示で防御支援特価型の魔法を使う少女が結界魔法を発動し、残った男2人はそれぞれのメイン武器である長剣と双剣を構える。
ザァァ…と風に揺られる木の音がその場の静寂さと緊張感を物語る。必ず敵は近くに居るのだが、その姿は分からず唯一確認したのは赤黒い腕。しかも様子を伺っているのか追撃をなかなか仕掛けてこない。そうやって緊張感を保つこと約1分、彼らにはその1分が物凄く長く感じられた。
「で、出てこい!居るんだろ!返り討ちにしてやる!!」
少女の結界魔法は一定以下のSTR値を持つ外部からの攻撃を、発動している間魔力を常に消費することによって防ぐことが出来る守りの魔法だ。スキルのLvはこのイベントのために前もって上げてきたのでそこらのプレイヤーの攻撃ではダメージは1すら通らない。もちろん、許可の無い者が中に入ることも通常であれば不可能。
だが、それはあくまでも相手が通常であれば……なのだ。
「じゃあ、遠慮なく」
「なっ!?」
背中を合わせるようにして周囲に気を配っていた彼らのちょうど中心、全員の背後から突如女の声が聞こえる。あまりのことに急ぎ振り返ればすでに結界魔法の要である少女の胸に赤黒い腕が光を撒き散らしながら咲いていた。
「クソがっ!!ふざけんな、どういうことだ!?」
「どういうことって言われても……もうそこは数十分前に通ったことがあるとしか説明出来ないし」
「はぁ?」
長剣を目の前の敵に向かって力任せに振り抜いた彼の攻撃を彼女は苦もなく避けて距離とる。ありえない、なぜ結界の中に…と彼は酷く混乱していた。不可侵領域にも含まれる結界の中に勝手に入る方法は存在しないはずであり、それが強みなのだ。
けれど、彼女はなんの前触れもなく、そもそも元からそこに居たかのように声と共に現れた。その結果少女がやられて結界の維持は無くなり、大きな守りの術が1つ消え、問いに対する答えは理解不能。
「まぁ、そういうのはいいからさ…続きやろうよ?」
「ちっ…上等だ!!」
「シュバルツ、俺は回り込む!」
「おうよ!」
目の前にいる拳を構えた謎の女、すでに仲間を2人もやられたことから内心激しく動揺していた。そんな心を紛らわすようにして死地に飛び込んだ彼らは1つの疑問点からほんの一瞬目を逸らしてしまっていた。
「"追憶"」
そう、居ないはずの場所にもその女は突然現れるということを。宙に舞う数枚の花びらと一緒に霞むようにして消えた女の行方を目で追った彼らは、数十秒後に観客席で呆然とモニターを眺めていた。
■■
「2時間ちょっとで79人か…結構良いペースなのかな?」
時雨はログを確認して今までに戦って倒した人数を改めて確認する。2分弱に1人のペースで倒せたのは開始直後の混戦に参加し、持ち前のSTRとAGI、転移スキルの追憶を駆使した結果だ。
一撃必殺、疾風迅雷、神出鬼没……そのような言葉がぴったりとハマるような戦い方は多くのプレイヤーをフィールド外に用意された観客席へと運んでいた。
が、流石に2時間も経てば人数はそれなりに減り、混戦が起こるようなことは無くなった。それでもまだまだプレイヤーは多くいる。生き残ったのは戦闘力の高いプレイヤーや隠密に長けたプレイヤーなど、戦いになっても勝つかそもそも戦わない者が残り始めていた。
「それにしても…追憶が環境設定1つでエフェクトを無くした完全隠密転移になるとは思わなかったよ」
追憶の花吹雪のエフェクトは時雨的にかなりグッとくる演出であり、あの2人との想い出が詰まったものではあったが、どうにもVR機器と接続された時雨のパソコンではスペック不足な部分があるらしく連続で使用するとかなり重くなってしまったのだ。
それがVRMMOというジャンルのプレイに深刻な支障をきたすレベルだったため設定画面から[エフェクト/高画質→簡略化]に変えると、花吹雪のエフェクトが無くなってしまった分、予備動作や敵の目を引くような演出が無くなり音もなく転移できるようになったのだ。
イベント開始数時間前に判明したそれがバグ等に類した場合、失格という目も当てられない結果になる可能性があった。だが、急いで運営に質問のメールを送ってみると定型文ではなくしっかりと運営員の誰かが入力したであろう文章の末尾に「仕様です。違法行為ではありませんので安心してイベントに臨んでください」と記されていた。結果オーライである。
まぁ、実際には敵の視界には多少の花は舞っており、一切花が見えていないのは時雨だけだったりするのだが、その辺は時雨が初心者であるせいで気がつくことは無かった。例え敵に花が見えてしまっていたとしても相手が対応出来なければ特に気にする必要が無いことではあるが。
「ん〜、私的には結構森の中は戦いやすかったんだけど、そろそろ他の場所に行った方がいいかもなぁ」
時雨は正面からの圧倒的な攻撃力を活かした戦い方の方が性に合っていたが、この森林フィールドではAGIと追憶を併用した戦い方がうまい具合にはまり、暗殺者や忍者のような縦横無尽な動きがかなり楽しかったのだ。
それでも倒す対象が居なくなってしまえばもうこの場に留まる理由も無くなってしまうし、簡易マップに表示されている戦闘範囲を確認すれば時雨の居る森林とは反対側の廃都市に寄って狭まりつつある。
「廃都市に行くなら迂回して山岳地帯か、直進して砂漠地帯か…か。ん〜、どうやって範囲が狭くなるか分かんないから遠回りして山岳地帯を通った時に間に合わないかもしれないし、直進して砂漠を通ったら時間的には間に合うだろうけど戦いにくそう…」
残りが約3時間となった中、なんの計画もなく移動をすれば1辺10kmという広大なフィールドにおいて致命的なミスに繋がる。それは狭まっていくフィールドの範囲外、常時ダメージを受ける特殊エリアへ入ることを意味する。
開始前の御子柴による改めての正式ルール発表で明確にされたフィールドが狭まる毎に範囲を広げていく特殊エリアの存在。10秒ごとに受ける一定ダメージは即死に繋がる訳ではなくともいずれは死に繋がる。戦闘ではなく計画性の無さで死ぬというのはなかなかに恥ずかしいものだ。
「よし、ちょっと危険でも砂漠かな」
時雨は移動ルートを山岳地帯ではなく砂漠地帯に決定した。その決定が今回のイベントで入賞が固いと言われている一部のプレイヤー達と同じだとは知らずに。
しばらく走り続ければ視界は開け、だんだんと足元が土よりもさらさらとした砂に変わってきた。吹く風には草木の香りでなく細かい砂が混じり、太陽の熱や光を砂の大地が反射する。
「あ…暑いぃ…すぐ隣の森林地帯とこうも気候が違うとは思わなかった…」
見た目だけでなく気温や地質などの環境までもが忠実に再現された砂漠地帯のフィールド。そもそも砂漠になんて行ったことがない時雨からしたら未知の世界と言っても差し支えなく、気温による疲労と足場の悪さによる動きづらさがここまでとは予想が出来なかった。
まぁ、都会に住んでいる女子高生が「私、砂漠に行ったことあるんだ」と言う方がまず珍しいだろう。時雨は自分の砂漠に対する考えが若干甘かったことをそうやって自分に言い聞かせることで納得した。
「よし、反省もしたし先に進もう……って、あれはパーティーかな?5…いや、6人いる」
熱気でユラユラと揺れる視界の先には何やらパーティープレイヤーと思しき点が6つ歩いていた。時雨に背中を向けるようにして砂漠を進んでいるためまだ時雨の存在には気づいていないようである。
「殺れるかも?」
そう判断した時雨は風の如きスピードで砂の上を跳ねるように移動しながら詰め寄る。砂に足を取られる感覚はどうしても否めないが沈む前に足を上げれば実質的に動きはそこまで阻害されないことに気がついた。その理論がどこぞの水の上を走るトカゲのようだと内心苦笑しながら最低限の音で時雨は接近を始める。
「うん、敵は6人。剣に斧、盾、鞭、魔法、弓…随分色々な武器のプレイヤーがいるなぁ…適正距離がバラバラでやりづらいけど、頑張ればなんとかなるかな」
6人パーティーよりも少し高い位置にある砂山の上に、うつ伏せで身を半分以上隠して状況を確認する時雨。かなり豊富な武器種から近づいた場合は近接武器に攻撃され、距離をとって様子見をしようにも弓や魔法に追撃される。
時雨にとって逃げるや隠れてやり過ごすといった選択肢は無い。が、森林地帯と違って身を隠しながらスピードを活かして戦うことが出来ない砂漠地帯で攻撃を仕掛けるのが憚られるのもまた事実。
「ま、上位入賞以外ありえないなんて訳でもないしやれるだけやってみるかな。場合によっては百鬼夜行を使うのも視野に入れておこう。そうだなぁ、先ずは……弓と魔法の人からっ!!」
弓と魔法に中遠距離から攻撃されてしまえば近づくのが困難になる。ならば最初に倒してしまおうと時雨は2人の死角に回り込む。そして、ほぼ音を立てずに飛び出した時雨はまだ気がつかれていないことを確認して僅かに口角を上げ、夜叉からクローの部分を出して狙うは彼らの首。
(これで確実にこの2人は殺った───)
「あぁ〜〜…シグレちゃんどこに居んだろうなぁ」
「え?」
「「「「「「え?」」」」」」
■■
【初イベント:バトルロワイヤル/お前ら負けたのかよwまぁ、俺も負けたけどなwん?なんか言った?】
381:匿名プレイヤー
だぁぁぁぁ……くっそ、負けた
382:匿名プレイヤー
おつおつ
383:匿名プレイヤー
流石に魔法職で固めたパーティーはバランス良いなぁ…
ポーションの数が決められてる中で攻撃魔法と回復魔法が使えるバランス型がいると相当厄介
384:匿名プレイヤー
ワイ、隠しアイテムを偶然見つけるもまともに使用する前に無事死亡\(^o^)/
385:匿名プレイヤー
もったいねぇぇぇぇぇ
386:匿名プレイヤー
どんなアイテムだったんだ?
387:匿名プレイヤー
廃都市にあるビルのどれかに適当に入ったらさ、すっげぇ分かりづらいところに「私隠しアイテムです」って言ってるのかと思うぐらいの宝箱あったんだよ
389:匿名プレイヤー
それはミミ〇ク
390:匿名プレイヤー
終焉を運び災厄を撒き散らす異形の箱…その名もパンドry
391:匿名プレイヤー
んで、怪しすぎるけど取り敢えず開けてみたら中に円環の盾って盾装備が入ってたんよ。で、重要なのが俺は弓装備なの。でも装備できたんだよね。しかも防弾シールドって言ったらいいのかな?前面はほぼ完全に防御されてる状態で、尚且つ半透明の装備で視界も遮られないうえに、外からの攻撃は弾くけど中からの俺の攻撃は外に届くっぽいんだよ。たぶんだけど。
392:匿名プレイヤー
……そら初心者でもワンチャンあるわ
393:匿名プレイヤー
職種関係ない前面完全防御盾とか流石に強すぎないか?
393:匿名プレイヤー
いや、耐久値じゃなくて時間制限だけどちゃんと使ってられる時間には限りがあるみたいだったぞ。それに背後からの攻撃は問答無用で喰らうから立ち回りがしっかりしてないとすぐ死ぬ。ちなみにそれがワイや( ・´ー・`)
394:匿名プレイヤー
時の運はPSに勝てなかったか…
395:匿名プレイヤー
でも、使うやつによってはぶっ壊れなのは確かだな
全部同じアイテムってわけでもないだろうし他にはどんなのがあるのか気になるところ
大変ありがたい事にStory:12を投稿した現在でブックマーク700↑、pv85000↑を頂きました!
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魔法「お前ら、リア充狩りの始まりだァァァァ!!」
剣/弓/斧/盾/鞭「合技!怨念爆発四散拳!!」




