昼休みにて
第5話です(*´ω`*)
ゆっくり物語が進んでいきますよ~( ・∀・)ノ
彼が怒濤の転校してきた初日を終え、2日目の昼休み。
昨日と同様に、彼は授業中でも寝ているかこちらをじっと見つめていた。
私は、当初いきなり距離を縮めてきた橘 海斗に不信感と苦手意識が芽生えていたが、今は不思議と嫌いになれずにいる。
ちくはぐな感情に少し戸惑うが、特に気にする事もなくいつも通り授業を受けていた。
そして、今日は青葉と飛鳥に加え彼と共に昼食を取ることになった。
彼は弁当を持ってきておらず、購買で買ったとおぼしきサラダパンを1つと自販機で買ったらしき缶コーヒーを持参している。
私たちはあまり気にしないようにして、話をしながら各々の弁当を食べ始め、次第に彼も食べながら会話に参加してきた。
「あのさ、橘クンに聞きたい事があるんだけど。」
最初に彼に質問をし始めたのは、やはり飛鳥だった。
大体3人でいる時は、同性である飛鳥が私たちの間に立って話をしてくれるから有り難い。
「ん?何でもどーぞ。それと、俺の事は海斗で良いよ。俺もみんなの事、下の名前で呼ぶから。」
彼は、話題が降ってきたのでサラダパンを頬張るのを止め、口に残っていた物を咀嚼して飲み込んでからそう言った。
「じゃ、お言葉に甘えて。海斗はどうしてウチに来たんだ?」
たぶんこの場にいる人みんなが気になっている事だろう。それを彼はオブラートに包むわけもなくストレートに聞いた。
海斗は少し目を開いたがすぐに戻り、考えているのか少しの間黙ったままでいたが、答えるべく話を続けた。
「うーん……。他の奴にも聞かれたな、それ。そんなに気になるもんか?」
「いや、普通に気になるわ。だって、この時期珍しくね?転校してくるなんて。ぶっちゃけココ田舎だし。」
「うーん、まぁ色々あったんだよ。前の学校でな。追々話すよ。
それより、俺はみんなの事が知りたいかなぁ~」
彼は飛鳥から言われたことに瞳に少し影を見せたが、すぐ顔色を変え私たちにそう聞いた。
私たちは簡単な自己紹介をすると、そろそろ教室に戻らなければいけない時間になりお開きとなった。
私は話の続きが気になったが、あまり触れて欲しくない部分なのだろう、積極的に聞きたいとは思わなかったのである。
しかし飛鳥は気になるようで後で直接話を聞くそうだか、たぶん彼は話さないだろう、と予想していた通り曖昧な返事しかせず詳しい話は聞けなかったようだ。
そうこうしているうちに放課となり、私たちは昨日と同様に町を色々紹介しに回り、それぞれの帰路に着く。
彼は帰る際に、私たちに自分の連絡先を教えて帰った。
帰宅してから、一応登録しておいたがメールを送る勇気が出ないでいたのである。
私は、彼の何が知りたいんだろう。そう不意に思い立った。
転校初日から私たちの輪の中に入り込み、見事馴染むことに成功しただけでなく、今まで会ってきたどの男子よりも私を戸惑わせてきた張本人。
そんな彼の考えている事なんてわかるわけがなかった。
しかし、彼の事についてわからない事が多い中、1つだけわかったことがある。
それは、前の学校で私の知らない何かがあったとしてもあの時見せた彼の笑顔はとても眩しかった。
それだけは確かだった。私はその笑顔を信じる事にしたのである。
ふと、壁にかかっている時計を見るといつも眠っている時間になっていた。
私は1度考える事を中断させ、明日に備えて準備をした後寝るためにベッドにもぐり込んだ。
その日は結局、夜分遅いという理由で連絡を送る事なく彼が転校してきて2日目を終えたのである。
一方、彼、橘海斗の方もまたこの怒濤の2日間を振り返っていた。
新しい部屋でシンプルな家具しか置いてない部屋の中、電気も着けず月の明かりだけを頼りに静かに考え事をしていた。
この家は彼以外にもう1人同居人がいるが、家を空ける事が多いため実質一人暮らし状態であったのである。
置いてあるテレビも着けてないため、音もなかった。
彼は瞼を閉じ、ただただ思い返していた。
俺が転校初日から彼らに近づいたのはただ適当に選んだだけの事であり、クラスのうるさい連中とつるむくらいなら、と思っただけである。
俺は基本的に人と関わる事に興味がない。関わるとしてもただの暇潰しでしかなかったはずだった。
でも、何故か彼らは違った。
久しぶりに関わってみたいと思ったのである。
自分でもなぜ近づきたいのかわからなかったが、それでも彼らの近くにいたいと思った。
飛鳥や青葉や隣の澪、みなそれぞれ面白くて深く知りたいと思ったのである。
この2日間は急に接近してしまったが、ゆっくり彼らの事を知ろうと思っていた。
しかし、彼らも他の連中と同じ事を聞いてきたのである。
前の学校では、色々な事があった。でも、全て置いてきた。
彼らにはあんな事を言ったが、言おうかずっと迷っている。
まだ、時期じゃない。もっと近づいてから話そう。
その時は、そう自分に言い聞かせた。そして、そうする事に決めたのである。
また、飛鳥や青葉も気になるがそれ以上に澪にとても興味を持ったのである。
彼女は青葉のような美人とは違い、可愛かった。
艶やかな長い黒髪、珠のような白い肌、口は薄紅色をしており、瞳は優しさと芯の強さを感じさせた。
転校した最初は苦手そうにしているのがあからさまにわかるくらい態度に出ていたのが、2日目になって少し変わったのである。
たぶん書くものがなくて紙を貰った時から、彼女の中で俺への不信感などが少し和らいだのかもしれない。
その時の彼女はとても可愛かった、笑顔がとても眩しかった。
そしてその時、俺は彼女に恋をしたと思う。
俺は彼女の事がもっと知りたくなり、誰かから聞いた「イケメン」と呼ばれている事など気になる事をたくさん聞きたかった。
しかし、連絡は一応交換しておりいつでも連絡を送れる状況なのだが、勇気が出ずに送る事が出来ないでいた。
ふと、時間を見ると深夜2時を回っておりさすがに送れないと思い、この日に送ることは止めたのである。
そして振り返る事も止め、明日の電車を乗り遅れる事は出来ないのでベッドにもぐり込んだ。
まるで遠足に行く子供のようにいつからか忘れていた胸が踊る感覚を甦らせながら、明日も面白い彼らと話せることを楽しみに眠りについた。
続く
忘れがちになりますけど、みんなイケメン&美女揃いですよ~!
飛鳥はクールでも気さくでモテる。
海斗はミステリアスでモテる。
青葉はクールビューティーでモテる。
澪は、うん。イケメンですね( ´∀`)