そして彼は悪人へ
前回は本文冒頭と最後に死霊術師だの人形だの変なのが混じってすいません!!
訂正しました。気づくの遅れて本当にすいません。こ、今回は無いと思うのですが、もし誤字やここおかしくない?と思う所がありましたら教えて頂けると幸いです。
………今回は長いです。キリの良いとこまでいこうとしたらこんなことに………
突然だが、この世界には、人以外の人族もいる。
獣の特徴を持つ獣人族
長い耳と長い寿命を持つ森人族
魚の特徴を持つ魚人族
機械の体を持つ機人族
生まれながらに魔法を使える精霊族
そして、この世界に住む全人族の敵である“魔物”その特徴を持つ魔人族
このように様々な人族がいるのだが、その中でも他の人族から嫌われているのが魔人族たちだ。
魔物は人族や獣などを襲ってくる。目的は不明だがとにかく襲ってくるのだ。
しかし、魔人族はその限りではない。と言うもの魔人族は何故か魔物から襲われにくく、なかには魔物と共に生きる者もいるらしい。
更に、魔人族が持つスキルには死や呪いなどマイナスイメージを持つスキルが多々ある。それだけと言う訳では無いが、かなり多い為嫌われるのに拍車をかけている。
何故俺が説明したか分かって貰えたと思う。
彼女は俺にこう言った。
――――私が【死霊術師】のスキルで貴方を生き返らせたからです――――
この死霊術師のスキルは魔人族のスキルであり、他の人族では覚える者がいない。たまに魔人族とのハーフなどが持っていたりするらしいが基本は魔人族のみだ。
つまり、
「君は魔人族、なんだね?」
「は、い。そう、です。魔人族、です」
彼女は涙を流しながら無理矢理笑顔を作って続けてこう言った。
「だから、私を殺して下さい」
「な!?何を言っているんだ!」
俺は驚いた。それもそうだろう。自分を生き返らせてくれた相手がいきなり自分を殺せと言ってきたんだ。
「貴方は私の死霊術師のスキルで生き返った《死して寄り添う者》です。そして、貴方が私を殺せば私の残りの寿命分だけ完全な人として生き返れるんです。」
「なんだって!?」
そんな話は聞いた事が無かった。【死霊術師】のスキルでは生き返らせた者を操るとしか説明が無かった………何故だ?
「知らないのも無理は無いです。この事実がバレれば生き返らせた人達に自分が殺される可能性がありますから。」
確かにそうかもしれない。誰しもちゃんと生き返りたいものだろうし、言うことを無理矢理聞かされるなんて嫌だろう。
「………どうしてそれを俺に教えたんだ?」
「さっきも言った通りに私を殺せば貴方は完全に生き返るからです。」
「だがそれでは「それに!」っ!?」
「それに、私は魔人族ですから。他の人族には嫌われています。魔物の仲間だって言われる事もあります。そんな私を殺したとなれば貴方は回りの人から祝福されるでしょう?」
「な、何、を、」
………確かにそうだろう。魔人族には強い者も多い。さらに、【死霊術師】持ちを倒せるのなんて一握りの英雄と呼ばれる奴らばかりだ。そんな中スキルを持たない俺がこの子を殺したとなれば、《英雄》扱いされるかも知れない。
「………なぁ、嬢ちゃん。どうして俺にそこまでしてくれるんだ?」
「私は、貴方に助けられるまで、色んな人に辛い事をされて来ました。魔人族だって言うだけで食べ物を売って貰えない。時には殺されそうになることもありました。」
「ご両親は?」
「分かりません。捨てられたのか、殺されたのか。何とか生きようとだけ頑張って来たので考える余裕も余りありませんでした。」
「そう、か。大変だったんだな。」
「はい。でも、良いこともありました。貴方に助けて貰えました。初めてでした。私が魔人族だと一目見れば分かるじゃないですか?」
そうなのだ。魔人族は髪の色が紫色や黒色で、瞳が宝石の様な色をしている。そして、この子には額にもう一つ目がある。3つ目の魔人族だ。
「皆、私を見れば嫌な顔をします。たまに助けようとしてくれる人もいますが、私の額を見て直ぐに何処かへ行ってしまいます。」
「けれど、貴方は違った。魔物に襲われる私を庇った時、私の方を確認しましたよね。その時私は助かるのを諦めていました。だって今まで誰もが私を助けてなんてくれませんでしたから。なのに」
――――おい!嬢ちゃん大丈夫か!まってろよ、今助けてやるからな!――――
「誰もが見捨てた私を貴方は助けてくれた。ボロボロになりながら決して私を見捨てなかった。そして、助けてもらった後、私は聞きましたよね」
――――どうして魔人族の私なんかを助けたくれたんですか?――――
「そう聞いたら貴方はキョトンとした顔で」
――――困っている“人”がいるのにそいつの“種族”なんて関係あるのか?――――
「嬉しかった。誰からも疎まれて嫌われた私を、誰からも人として扱われなかった私を、“人”だと言ってくれた。今まで生きてきた全ての中で一番嬉しかった。だから、決めたんです。一生懸命生きて貴方に恩返しをしようって。だから、私を殺して下さい。それが、私の恩返しです。………………って、ふぇ!?」
「うぐっ、ひっぐ。おぐ、うおおおおおおん」ボロボロ
その話を聞いて俺は泣いた。今までほとんど感謝されなかった俺の行動にここまで感謝してくれる人がいるなんて思わなかった。だから泣いた。今まで生きてきたなかでこれほどまで泣いた事は無かったと言うほど泣いた。
「あ、あのあの。何で泣いてるんですか!?や、やっぱり魔人族なんかに生き返らされたのがそこまでショックでしたか!?」
彼女はとんちんかんな事を言って慌てていたが、泣いてる俺にはどうしようも無かった。
しばらく泣いて、やっと落ち着いた俺は。まだ慌てている彼女を見て苦笑しながら話かけた。
「取り敢えず名前を聞いても良いかい?」
「ほえ?な、名前ですか?え、えとえと、私はリムです。」
「そうか。俺の名前はゼンだ。さっきの君を殺せって言うのは君の願いかい?」
そう聞くと彼女は
「はい。私の願いです。私を殺して下さい」
泣きそうな、でも、少しだけ嬉しそうな顔でそう言った。俺は今まで色んな人を助けたり、お願いを聞いてきた。善人であろうとしたからだ。
だから、俺は
「だが断る!」
「………………へ?」
全力で断った。
「え、嫌、あの、え!?あ、あのあの、何でですか?だって私を殺せば、英雄に、」
「ん?理由か、それはな?」
「はい。」
「俺はさ、死ぬ前までは善人であろうと努力してきたんだ。」
「は、はい。知っています。全部見ていましたから」
ん?見ていた?んん?まぁいいか。
「なら、知ってるだろう?俺は頼まれたことや願いごとなんかは出来る限り叶えてきた。でも、ほとんど良いことなんて無かった。だから、決めたんだ。」
「な、何をですか?」
「俺さ、善人になるのを辞める事にした。これからは自分のしたいことを優先して行動する。例えそれが悪い事であっても関係無い。一度死んだんだから、やりたいことを全部やってやる。」
「な、なるほど?」
「俺は善人じゃ無いから。死んでほしく無い人を殺すことなんて出来ない。叶えたくない願いなんて叶えない。なんせ、俺は悪人なんでね」
俺はそう言って彼女に微笑んだ。
補足
獣人族と魔人族がルビが無いのはそのまま読むからです。他のは一応ルビある方が良いかなと思い振っています。
ゼン達は一応“普人族”と言う分類になります。