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Milestones  作者: トーキ
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1.引きこもりの由月といふものありけり

 男子高校生門倉(かどくら) 由月(ゆずき)は引きこもりである。

 とはいっても今年から始めたばかりだからまだまだ新米だ、とのこと。

 由月が引きこもりになったのはただ高校がつまらなかったからだった。

 そのためもともとオタク的な趣味はなく、いろいろな分野の勉強に日々励んでいる。


 由月の朝はネットから拾って来たアニソンやボカロで始まる。

 そして半日かけて撮り溜め分と旧作のアニメを見てネットの書き込みにざっと目を通す。

 知らないネタやワードはいつでも調べられるようにメモを取る。

 夕方には注文しておいたラノベや漫画を読み続ける。

 夜は何本ものゲームを一気に進める。もちろん裏ルートや裏ボスまですべて遊び尽くす。

 寝る前にはドラマCDや声優さんのコメンタリーを聞いて、フィギュアやその他諸々のほこりを落としてから一日を終える。


 そんな毎日を送る由月だが、外に出ることもある。

 今日はアニメ原作のゲーム『俺が恋したのは時空を操るドS猫耳少女でした ~メロメロフューチャー~』の初回限定版を買いに行く。しかも店舗特典付きだ。

 そんな豪華な言葉の連続に堪らなくなった由月は、いつもより早く起きる。


 ずっと大切にしているニートや引きこもりのマストアイテム、ジャージを着たまま外に出る準備をした。

 特に外気が恋しかったわけではないが、外に出るのはとても久しぶりだった。

 ドアノブに手をかけ、少しだけ開ける。


 ドアの隙間から流れ込んでくる春風が心地よい……。

 いやいや俺は引きこもりなんだ。エアコンから出る神風こそが我が身に吹きつける価値を持ったものだ。そしてこの部屋だけが俺に勇気と活力を与えてくれる夢の世界なんだ。

 由月はそう自分に言い聞かせながら、部屋から出る。


「門倉 由月さんですか?」


 部屋から出ようとすると、真っ黒なスーツを着た背の低い女が立っていた。髪は金髪のようだが、スーツと同じ黒い中折れ帽子で隠れている。顔立ちは整っているが目はどこかの捜査局のようなサングラスで見えない。


「え、え、あ、あの……どなたですk」


「やっぱり由月さんですね。」


 答えさせろよ!

 由月は少し不信がってドアを閉めようとする。すると、


「ああ閉めないで~!」


 そんな悲しげな声がしたかと思うと、何か巨大な鋭利な物がドアの隙間に入ってきてガツン、と大きな音をたててアパートの床を粉々に粉砕した。


「え……、えぇぇぇえ!!!!」


 由月は一瞬何が起きたか分からなかったが、なぜか床の弁償を迫られることが恐ろしくなった後、うちのドアの前に立つのは凶器を持った危険人物だと理解した。


「御同行、願えますか?」


「う、うわああ!!」


 いかにも腰抜けだが、この状況なら許してもらえるだろう。由月は鍵もかけずに部屋のなかに逃げ込んだ。

 危険人物は当然なんの抵抗もなく室内に入ると、足を掛ける所すらない高層アパート6階の窓から逃げようとする由月を掴まえて頭から床に叩きつけた。

 そして後頭部に激痛を覚えた由月を上から踏みつけ、凶器を目の前に突き立てた。


「ああなんですかごめんなさいお願いです助けてください何の用ですか帰って下さい頼みますから、イテっ!」


 踏みつける足に力を込められ、言葉を強制的に止められる。


「うるさいですよ。……それにしてもその慌てよう、すっごく面白いです。意外と好みかも…なんてね、フフッ」


 危険人物は口の端を上げて不敵な笑みを浮かべた。


「でもこれ以上抵抗するようならその首から上の醜い塊がきれいさっぱり無くなっちゃうけど、いいのですか?」


「ひ、ひぃぃ! …………で、でも、今日は俺猫の初回限定版&店舗特典の発売日で……」


 なぜ俺はこういうところでオタク化したがるんだ!


「あぁ?」


 危険人物は凶器を振り上げた。その拍子に天井のライトが壊れたが全く気にしていないようだ。


「は、はいぃ! なんでもありません!」


 またもや修繕費のことが一瞬頭をよぎったが今は抑えよう。


「じゃあ立ってください。まかり間違っても逃げようとするんじゃありませんよ。」


 由月はどうすることも出来ず、素直に立ち上がった。割れたライトのガラス片を避けつつ、危険人物の後ろにつくようにして歩いた。

 よく見れば、先程から使っていた凶器は大きな赤い鎌だった。あんなのRPGとかでしか見たことない。


 確かに今はどうすることも出来ない。だが、外に出てどこかに連れていかれる前に解決する方法が無いでもない。それにかけるしか……。


「なにか企んでますね?」


「い、いいえ!」


 完全にばれたな。それでもいいだろう。

 幸いだったのは由月の部屋にあったコレクションはほとんど被害に遭っていなかったことだろう。

 神様、マジありがとう。そんなことを考える由月だが、この窮地を打開する方法にひとつだけ心当たりがあった。


「な、なあ。」


 危険人物は普通に振り向いてくれたが、サングラス越しにも鋭い視線を感じる。

 由月は口調は改めるべきだと考え、もとの丁寧語に戻した。


「あ、あなたのお名前はなんて言うんですか?」


 まずは親近感を高めたい。


「それを聞いてどうしたいのですか?」

「いや、特に理由はないですが、呼びにくいもので……。」


 危険人物は少し考えると小さくうなずいた。


「まあいいでしょう。私はラミー・アルクインといいます。以後お見知りおきを。」


「ラミー・アルクイン、かあ。それじゃあラミーさん。ずっと気になってたんですが、ラミーさんのその少し流暢な口調なんですけどそれは……?」


 たぶん応じてはくれないだろうと思いつつも聞いてみる。


「そうですねえ…。癖というか、その方が楽というか…。」


由月は意外とこの人は普通の人なのではないかと思いながらも、そろそろ行動に移ろうかと考え始めた。

 由月自身この技を使うのは数年ぶりで、出せるかどうか自信がない。


「ラミーさん!」


「なんでしょう?」


 よし、今だ!!


「その強そうな所や素敵な振る舞いに一目惚れしました!付き合ってくだs」


「死にますか?」


 ちっがあぁぁう!! 俺のバカ! いい加減オタク化及び二次元化したい症候群やめろよ!

 ラミーの目にあの鋭い視線の数倍恐ろしい炎が灯った。


「いいや、そうじゃなくて! その、失礼しまーす!」


 腕に力を込め、ラミーの肩に必死で触れる。そして、


「消去ノ月人(つきびと)!」


 由月がそう言った途端にラミーの頭に衝撃が走った。その謎の痛みに一瞬由月から目を放してしまう。


「よし!」


 由月はその隙をついて猛烈な勢いで玄関から飛び出し、そこからは見えづらい位置にある階段に隠れた。

 その間に意識が安定したラミーは反射的に辺りを見渡す。


「は!? アイツはどこに、というか私は今何を?」


 ラミーはかなり動揺したようだ。それもそうだろう。

 由月の技とは触れたものの記憶を消すこと。

 こんな力を持つのは二次元以外ではありえない話だが、由月には実際に使えるのだ。

 由月は久々の能力発動に少し興奮している。二次元に染まった今考えれば、自分はあまりに幸福な人間だと思う。


「……っと、こんなことしてる場合じゃない。」


 小声が出てしまうのは二次オタ症候群のせいだが、聞こえていないようだ。

 後ろを振り返り、階段をゆっくりと降りようとする。だが……。


「早く逃げないと……!」


 後ろには何者かがいてその場に倒された。よくは見えないが、こちらもスーツを来た怪しい男のようだ。

 流石にもう無理だと体の力を抜き、無駄な抵抗はやめる。

 遠くからラミーの声がする。


「ねえ由月さ~ん。出てこないとここにある本、一冊ずつボロボロにしちゃうよ~!」


「おいラミー、もうよいぞ!捕縛した! ……ん? 此奴(こやつ)突然もがくではないか。」


 ダメだ!俺の宝物だけは、それだけは壊さないでくれ!あの子たちに罪はないだろ!!

 必死に抵抗したが、名作漫画『魔導師(ウィザード)りっぷ♪』の第三巻にあの巨大な鎌が突き刺さっているのが見えた後、由月は頭を殴られたのか、意識を失った。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆



「ねえ、由月君。ああ私たちはなんておかしな世界に生かされてるんだろうなあ、って思ったことない?」


 夕日の光をうっすら受けて、いつもより少し赤みを帯びていた、いつの日かのレンガの道。

 それは部活が終わった後、幼馴染と一緒に通った通学路だった。

 小さい頃から十年間踏みしめ続け、見飽きてしまったこの道は、特に記憶したい景色と言える物でもなかった。

 彼女がそういつにも増して変わったことを言い出すまでは……。


「……は? どうしたの、鞠夜(きくよ)?」


 いつもならもっと明るい話題で切り込んで来るはずの昔からの友人がいきなり妙なことを言い出したら、心配しない方がおかしい、と思っていた。

 そんな俺は今と違ってとても純粋だったのだろう。


「あははは、なにそのすごい不安そうな顔ー」


 純粋だった俺の真面目な顔はかなり間抜けたものだったらしい。


「お前が変なこと言い出すからだろ!」


 このどうでもいいやりとりは毎日のお決まり事である。


「まあ、いいや。それでなんだけど……、どう思う?この世界?」


「それはお前の単純な興味によるものだと思っていいんだな?」

「まあそんなとこだよ」


 そう言うと鞠夜はちょっと飽き飽きしたように空を見上げた。

 やはり少ししつこかったのだろうか。


「うーん、そうだな。俺はそんなに変なものでもない気がするなあ。皆いろんなことを勉強してだんだんと大人になる。そして自分や人の幸せのために努力する。すごく普通な世界だと思う。」


「そうかあ、やっぱ由月君はそう言うんだね。でもそういう純粋な所が結構可愛かったりするんだけどね。」


「か、からかうなよ。俺は真面目に答えてるんだぞ……。」


 平然とそういうことが言える彼女のそういうところは別段嫌いでもない。


「なんか顔赤くない? 大丈夫? 風邪?」


「おまえは……。まあいいや。」


 そういう少し天然なところも彼女らしい。


 やはり青春真っ只中の男の子としてはそんな彼女には何か思うところがある。

 彼女はかなり美しい少女だったのだ。

 ショートカットの艶やかな黒髪にスタイルの良いバランスの取れた体つき。顔立ちは……。




 あれ?どんなだっけ?




「で、お前はこの世界をどう思ってるんだ?」


 シルエットすらも曖昧になってきた。


「え、私?」


 話し方も果たしてこんな感じだったのだろうか。


「そりゃそうだろ。そんなことを言い出したからには何か言いたいことがあるんだろ?」


 本当にこんなやり取りしてたっけ?


「そうだね。私はこの世界をとってもムカつくものだと思うの。だって何をやったって私は……、私たちは世界の決まりから逃れることはできないのよ。私たちが生きるのにある決まりなのに、私たち自身が変えることも、壊すこともできないのよ。」


「でも世界の決まりは国のリーダーの話し合いによって決めていて、そのリーダーは俺たちに選ばれた議員さんに選ばれてるから俺たちが間接的に……」


「そうじゃないのよ!もう……。…………。ねえ、もしだよ。もし私が……いやいや。…………うん。もし私が……○○○○○○○○○?」



えっ……



「○○○○○○、○○○○……○○○○○○?」



何て言ってたっけ?



「○○○○…@%△□●◇♭☆……………………………………………………………



もう何がなんだk……




◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 由月はオタク感が満載の部屋で目を覚ました。

 枕元のスマホからはアニメ『ある日の閲覧禁止書(ネクロノミコン)』のopが流れ出した……気がした。

 今目を覚ましたのは車の中であり、体をきつく縛られていた。

 口もガムテープで封じられていた。窓はカーテンのような物で塞がれて何も見えない。


「あ、動き出しましたよ。……にしても、アンタもなかなかえげつないですねえ。気絶させた後、縛り上げた挙げ句、口まで塞ぐなんて……。」


 助手席に座ったラミーが、運転席に座る先程の男に話しかけている。


「……。」


 この人は静かな男のようだ。

 よく見ればこの男、黒っぽいサバサバした髪で後ろ姿はかなり男らしい。無口な感じも相まって立派な大人の男といった雰囲気を醸し出している。


「……、」


男は大きく息を吸った。何か言うようだ。


貴奴(きゃつ)空言(そらごと)は魔性の響きの根底なり! (それ)は我が堕天(Orecchio)(del)悪魔耳(Diavolo)の不浄なる弊害を穿(うが)つ物であり、われらの神聖な談笑の妨げであり、さらにっ!! ……ガッ!?」


 ラミーがその男の口を押さえつけた。


「うるさいです! コーネリアス! アンタの長台詞が一番耳障りです。」


 あの男はもうダメだ! ……そんな気がする由月であった。


「まったく……。由月さん。もうすぐ目的地に着きますので……。」


 由月はいろいろな意味で今後に不安を抱えていた。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「着きましたよ。」


 数時間後、由月はラミーに車から引っ張り出された。

 一応抵抗してみる由月だったが、相手はあの巨大な鎌を振り回していた女だ。ろくに運動していない引きこもりが勝てるはずもない。


 その場所は白を基調とした近未来風の施設で、由月はその一室にいた。部屋と言ってもどちらかというとどこかへ向かうための待機場所のようなもので、人が幾人か入ればいっぱいになるような小さなスペースだった。


 するとあの二人が降りてきてサングラスや帽子を取り、髪型や目があらわになる。


 ラミーの髪型は普通のロングヘアではなく、綺麗なツインテールだった。更にその目はなんとオッドアイ。右目が黄緑で左目は青だ。


 一方コーネリアスと呼ばれた男は目は濃い茶色のようだが、一部だけ赤に染めてある長い前髪に片目だけ隠れている。襟足の髪も長めである。


「ふーひはんふへーは。(厨二感スゲーな)」


 どうせ口は塞がれていて聞こえるはずはないんだ。堂々と言ってやる。


「うだうだ言わなくても解いてあげますよ。」


「……。」


 ラミーは気づかなかったが、コーネリアスはやはりそういう発言に敏感なのか、由月を睨み付けている。

 ラミーほどではないが、かなり怖い視線だった。


 そうこうしている間にすべての縄は解かれていた。

 とはいっても同じ体勢で放置されていたため、全身が痺れて動けない。


「後はこのガムテープね。」


 優しくお願いしまs


「われがやろう。」


 お前絶対本気でやんだろ!


 コーネリアスは由月に近づき、口に張り付いたガムテープに手をかける。


「貴様。我が堕天(Orecchio)(del)悪魔耳(Diavolo)愚弄(ぐろう)しておるだろう。貴様のような愚者(おろかもの)はこのわれが、大罪人の怨嗟(えんさ)の巣窟、†地獄の底(タルタロス)†に堕としてくれようぞ!」


 お願いやめてえ~!


「ちょっとコーネリアス何を……?」


「おりゃぁぁぁあ!!」


 ベリィィイッ!!


「ぎ、ぎやあぁぁぁぁぁぁあ!!!!」


 あまりの叫び声に耳を塞いだラミー。体勢を立て直して驚きつつも問いかける。


「な、何が起きたんですか?」


 ラミーの問いにコーネリアスは真顔で答えた。


「何事もあらず。」


「ハア、ハア、ハア……。」


 由月はしばらく口元の痛みと、体の痺れでしばらく動けそうにない。

 ラミーは少し心配そうに由月を見ながら指示を出す。


「ま、まあいいでしょう。いろいろ落ち着いたらこの先に進んでください。」


 ラミーが指差した方向には手動で開けるドアがあった。こんな施設だが、自動ドアやスキャンシステム付きの物ではないようだ。

 未だにコーネリアスは由月を睨み付けていたが、ラミーにより閉められたシャッターで遮られた。

 この隙は由月にとって抵抗するチャンスであっただろうが、今はそれどころではなかった。




 由月は痛みが治まったものの、逃げ場を完全に失ってしまった。


「……………………。」


 とりあえず指示された通りに静かにドアを開けてみる。

 ドアの向こうは通路になっていて、遠くのほうに小さな光が見える。


「行ってみるしか……、ないか……。」


 薄暗い通路を一人歩く由月。足音が反響して不安と緊張感を高める。

 この先に何が待ち受けているのだろうか……。


 光のもとにたどり着くとその正体が分かった。磨りガラスから漏れ出てくる部屋の明かりのようだ。


「…………………………………………。」


 由月は十分悩んだが、もう後戻りは出来ない。


「……よし。」


 ひと思いにドアを開け放った。

 その先には先程の†地獄の底(タルタロス)†とやらよりも凄絶な光景が待ち受けているだろうと覚悟を決める。


 しかし、


「……お、おお! やっと来たかあ! 待ってたぞ! 消去の少年よ!」


 中には赤に近い茶色の少し長い髪と赤い目をした健康的で爽やかな雰囲気を醸し出す男性と、


「もう、遅いよう。アタシたちず~~~っと消去クンが来るのをまってたんだよお。そりゃもう首をながーくしてそれでなわとびできるくらい待ってたんだからね。」


 黄緑の髪と黄色の目を持つ不思議さ、または狂気に近いなにかを持つ少女と、


「気味の悪いことを言うな。まったく……。」


 深い青色の髪に藍色の目をしたクールかつ大人なイメージが強い青年がいた。


 部屋の中は由月が想像していたものとは大違いだった。

 やはり近未来感はあるものの、部屋はとても広く、とても居心地が良さそうだった。

 中央には円卓があり、五つの席が用意されていてその内三つは先程の三人が座っている。

 まわりには暇つぶし出来そうな雑貨が並べられており、各種飲み物とお菓子も置いてある。

 部屋には席の数に合わせて五つのドアがついていた。どれも同じような形だが、その上部にステンドグラスで何かのマークが描かれている。振り替えると由月が入ってきたドアにも同じような装飾がされていた。

 天井には大きなシャンデリアが垂れ下がっている。


「な、何なんですか? これ?」


 すると茶髪の男性が答えた。


「いや、それがさあ、俺たちにも分からないんだよ。」


 今度は黄緑の髪の少女が話し出す。


「なんかアタシたち全員謎の組織みたいなのに誘拐されちゃったみたいなのよ。もう、このるるりちゃんを誘拐するとはよく分かってるじゃないかあ。」


「まあそこに座ったらどうだい?」


 茶髪の男性が由月から一番近い席を指差す。確かに立っていてもしょうがないので大人しく座る。

 するとブウォンっという音とともにモニターがついた。


「おお! 始まった始まった!」


 るるりというらしい少女が拍手をして喜んでいる。

 モニターに映ったのは、スタイルがやけに良いお姉さんっぽい女性と小さな男女の子供だった。

 少年は深緑の髪に黒い目、少女は真っ黒な髪に真っ赤な目だった。子供にしては二人とも元気がないように見えるが……。


「ええ、コホン。みなさーん!げんきですか~?」


 お姉さんはまるで教育番組に出てくるその人のように挨拶をする。


「げんきでーす!」


 両手を上げて、げんきに一人答えたるるり。


「おいお前! 一体何なんだこれは! 早くここから出してくれ!」


 茶髪の男性が勢いよく立ち上がって問うが、


「は? まだ出すわけがねえだろうが! このゴミ虫!」


 一瞬誰が言ったのか判断がつかなかったが、下に映っている小さな少年から放たれた言葉のようだ。


「な、なんだと!」


「まあまあ落ち着いて。」


 お姉さんがその少年の頭を撫でる。するとその子はもとの仏頂面に戻る。

 その様子を隣の少女はじっと見つめていた。


「おい。」


 今まで無口だったあの青髪の青年が口を開いた。


「一つ空席があるが、いいのか?」


「ええ、こちらにも事情というものがありまして……。」


「知るか。」


 青年は顔にこそ出さないが、かなりご立腹のようだ。あらぬ方向に顔と体を向けて、モニターから目を逸らしている。


「話を続けましょう。」


「待ってくれって! 勝手に進めるなよ! ほら消去の少年も何か言ってやってくれ!」


 消去消去と言っているのは由月のことなのだろう。

 だが、いきなり振られても困ってしまう。


「え、ええっと、消去って……。」


 そうこうしている間にお姉さんが話を進める。


「突然ですが、皆さんにはこれからやってもらいたいことがありまーす。」


 女性はいったん息を吸った。


「それは~」




宇宙人(エイリアン)をボッコボコにしてもらうことで~す!!」





「「「は?」」」


「イエ~イ……、え、今なんて?」



 はじめまして。トーキです。

 ネットに何かを投稿するのはこれが初めてなので、とてもワクワクしています。

 この作品は連載しようと考えていて、一、二週間に一本出せたらいいなと思います。初めての試みで連載と執筆期限を宣言していいのだろうか?

 ま、まあとにかく読者の皆様に楽しんでいただけるよう頑張っていきますので、これからもどうぞよろしくお願いします!

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