『無敵スライムがVRMMOの世界に』〜ゲームの世界で無敵と言われたスライムが自分の配下を連れて異世界支配〜
お試しで、短編ですので少し長いです。
『EFW』
20XX年。
世界に存在するゲームのほとんどがVRMMOになった。
そんな世界でも一際有名で人気のVRMMORPGがあった。
EFW
確か『際限無く自由な世界』を英語表記にしてその頭文字をとって付けた名前。
名前の通り、際限無く広がる大地を自由に行動でき。
種族・職業・武器・服他にも様々な物が際限無く自由にあり。
プレイヤーがやりたいことを殆ど実現可能にする程の自由度。
それが幸いしてか、発売してから10年の年月が経っても人気は衰えなかった。
だが、様々な物に終わりがある様にEFWにも終わりの時が迫っていた。
絶大な人気を誇っていたが、その際限ない自由度のせいで管理者が不正を相次いで起こし、子供の成長に悪影響を与えるとして今日この日をもって終了する。
そして、終了時間10分前のEFW。
EFWにはプレイヤーが複数集まって形成する、ギルドという物が存在する。
そしてギルドには序列があり、その中でもギルド序列一位に『無敵』と呼ばれるギルドが存在する。
そのギルドは、ギルドであってギルドでない。
複数のプレイヤーが集まって作るのがギルドなのだが、その『無敵』と呼ばれるギルドはソロプレイヤーが作ったギルドなのだ。
ギルドの名は『Uncrowned invincible』(無冠の無敵)
そのギルドは一人の男が、膨大な時間をかけて作った一個の国。
そのギルドは作られてから一度も負けず、最強の名を欲しいままにした。
だがそれも、今日の日をもって終わりを告げる。
* * * * * * * * * *
『Uncrowned invincible』ギルドの第10階層に位置する場所。
20メートルはありそうな天井とそこにある豪華なシャンデリア。
大理石でできた壁や床に天井、壁や天井には様々な豪華な装飾がされ。
その部屋に唯一ある横5メートル縦10メートルはある扉から、一直線に真っ赤な歩くだけで深く沈んでしまう絨毯が、その部屋に唯一ある『物』に続いている。
そしてそれは『王座』
人間の成人男性が座るに丁度いい大きさながら、どこの誰が見てもそれを王座だと思ってしまうその豪華な椅子。
漆黒の大理石をオーダーメイドに削り、座る者を包み込む様に設計され。
座面や肘掛、背もたれは鳥の羽をふんだんに使い、それを真っ赤な布で覆っている為、程よい反発と素晴らしい座り心地を演出する。
他にも様々な装飾を施しているが、それはシンプルでスマートにまとまってる。
そしてその王座に、片肘を着き頬に手を当て目を瞑り静かに座っている男がいる。
漆黒で艶やかな鴉の濡れ羽の様な黒髪に、奈落の底の闇を濃縮したような黒眼。
人形の様に整った顔立ちに、おそらく170センチ程の身長。
漆黒のポケットのない絹のズボンに、黒い長袖のYシャツを真珠のボタンで留め。
真っ赤な皮の手袋をして、先の尖った黒い革靴を履いている。
王座に座る男の構図は、まるで一個の芸術品の様だ。
そしてその男こそ『Uncrowned invincible』の王でありマスター。
最強でもなく究極でもなく、『無敵』と呼ばれた唯一の男。
今彼は、10分後に終わってしまう世界の事で悩んでいた。
彼はこの世界にはまり、生活の大半をこのゲームで過ごしていた。
そのゲームの終わりが近ずいてきて、彼は悩んでいた。
「ああ、時間か」
彼は視界の右上に表示している時間を見てつぶやく。
『最終終了時間まで5:24秒』
彼はこの数字を見て、頬を支えている右手ではなく左手を少し動かす。
そして、やりたい事が終わったのでまたいつもの格好に戻る。
10秒か20秒経った頃、この『王座の間』唯一の出入り口の門が開く。
そこからたくさんの生物が出てきた。
そして、それぞれが彼の前に隊列を作る。
彼が少し目を開き、右から左へ視線を移す。
何百何千の隊列から少し前に出ている生物がいる。
その者達は、その者達の後ろにいる奴らとの上官とゆう設定だ。
強さも指揮権も知性も全てが上だが、もうどうでもいい事なのだろう。
そして、王座の後ろに佇む影もある。
彼らは、このギルドのメンバーであり彼自ら創造した生命体。
このギルドの序列一位を守ってきた面々だ。
『最終終了時間間まであと30秒です』
脳内にそんなアナウンスが響く。
もうこのゲームに、彼以外のプレイヤーは居ない。
「ああ、終わりか」
彼は静かに、だが悲しそうに囁く。
彼の人生の楽しみで、10年の月日の思い出がある場所。
そんな場所が永遠に彼から失われるのだから。
「この世界が現実だったらよかったのにな」
最後の最後で、彼から出てきた言葉はそれだった。
ゲームが終わってほしくないでも、もっと楽しみたかったでも無く。
ただ、この世界が現実であったならばと。
『最終終了時間まで10・9・8・7・6・5・4』
彼は最後の三秒前になって、王座で静かに目を瞑った。
眠るように祈るように、悲しむように笑みを浮かべながら。
「ありがとうEFW、そしてさようなら」
3
2
1
0
1
2
3
「これは、どうなって」
彼はこのゲームの最後の最後までいるため、ログアウトをしなかった。
その為、ゲームが終了すれば彼の意識は現実に戻るはずだった。
そう、戻らなければいけない筈だった。
なのに彼はEFWの世界に居る、存在している。
ゲームの終了が延期するわけがないし、誰かが故意に操作できるとも考え難い。
警察と検察、陸軍と政治家によって、このゲームの終了は決まってる。
「なのにこれは、なんだ?」
ゲーム終了時間からもうすでに1分近く経っている。
彼は異常を察知し、いち早く行動していたがそれでも不可解だった。
「ステータス」
彼はそう呟き、すると視界に文字が浮かんできた。
EFWの世界では、ステータスといわれる者があり。
ログアウトやシステムコンソール、所持道具や武器装備なども見ることができ。
自分の名前や種族、筋力・体力・俊敏・魔力なども見ることができる。
そして現状、不可解なことが起こっていた。
ステータス画面には、ログアウトとシステムコンソール、マップとフレンドリストが綺麗さっぱり消滅していた。
「これはバグではないし、違うゲームに移ってしまったわけではない」
するとなんだ?、と彼は椅子に深く腰掛け背もたれに体を預ける。
そして、そこでまたも異常なことが起こっている。
「いくらリアルに近い世界とはいえ、クッションの柔らかさや椅子の冷たさをこんなに感じるだろうか、その前に俺の感覚もリアルな感じがするんだが・・」
彼が座る王座のクッションは、『千年鳥』と呼ばれるそれは美しい羽を持つ大鳥が持つ羽をふんだんに使った椅子なので、反発力はあるし感じたが今までの比ではない程座り心地がいい。
そして五感が今までよりもとゆうより、まるで現実世界のようになってる。
俺の声が広い王座の間に響く音も、俺の配下が発する匂いに。
王座の手触りも、配下や装飾も輪郭やあり方が現実味を帯びている様に感じる。
「これは俺がゲームの世界に入ってしまった感じなのか、現実の世界からトリップした感じなのか、どちらかをまず調べたほうがいいか」
彼はコンソールを動かし、アイテムボックスから姿鏡を王座前に出す。
汚れ一つ傷一つ無い、100%純銀で出来た鏡に。
金や銀、真珠や宝石で誂えた輪郭。
「体や顔はEFWでの俺だ。そして『指定左腕・擬態解除』」
彼はEFWで使用している体や顔であることを確認すると、左腕を体の前に突き出し自分の体に施されていたスキルを解除するための言霊を唱える。
すると、彼の左腕は人の形を崩しながら液体と個体の合わさった様な物に変わった。粘着性が有り、伸縮も自在で、ぷよぷよした手触りの腕に。
「これは完全にEFWの世界で俺が使っていたアバターだな」
彼がEFWで『無敵』の名を欲しいままにしていた理由の一つが彼の種族にある。
本来雑魚であるはずの彼の種族を、彼は際限なくレベルを上げ続けそして至った。
『妖魔族:原初ノ妖魔』
最弱の種族妖魔族、その中でも最も弱いはずのスライムと呼ばれる魔物。
スライムがなぜ最弱の魔物と呼ばれるか。
1つ 魔力が圧倒的に無く魔法が無いこと。
2つ 力が最悪的に無く、体力が無いため長距離の移動ができ無い事。
3つ 知力がない設定なので、何かを想像したり合成したりする事ができ無い。
この三つが最弱の魔物と言われる所以で、そして誰もこの魔物を選ば無い理由。
そして俺がこの魔物を選んだ理由は。
1つ 長距離は動け無いが、短期的瞬発的な素早さはすごい。(全種族3番目位)
2つ 物理攻撃に完全耐性がある為、斬撃も打撃もあらゆる物理攻撃が効か無い。
3つ 種族にもよるが、魔法攻撃に対しても完全耐性を持っている。
そして最後に 成長のスピードが全種族で最も以上に早い。
レベル100まで存在するEFWおいて、レベル上げは50を境に異常に難しくなり、レベル100になるにはそれ相応の時間を要する。
個人差もあるが、スライムと呼ばれる魔物だけはレベル上げが簡単なのだ。
数値的に表すと、スライム以外の種族の役3倍は早く上げる事ができる。
そして、種族にもよるが『転生』と呼ばれるシステムで、レベル100になると同じ種族の中でだけだがスキルとステータスを持ったまま違う種に慣れる。
例え、アークスライムレベル100になった時、???スライムに転生する事ができ、アークスライムのスキル『水属性完全耐性』を???スライムになる時に持ったまま転生できるとゆう事だ。
そして俺は全スライムの特性である、『物理攻撃完全耐性』と各属性のスライムに転生を繰り返し続け、新たな高位種族『原初ノ妖魔』になった。
彼のスキル欄を一部公開しよう。
『物理攻撃完全耐性』『炎属性完全耐性』『水属性完全耐性』『風属性完全耐性』『土属性完全耐性』『雷属性完全耐性』『氷属性完全耐性』『光属性完全耐性』『闇属性完全耐性』『治癒属性完全耐性』などなど他にもあるがそれらを合わせて新たなスキルを彼は発現させた。
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『無敵』 凡ゆる物理攻撃を無効とし、凡ゆる魔法を受け無い。
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『無敵』この二つの言葉だけで彼をEFWの世界において、誰も攻撃でき無い存在へと変えた。
だがそれには相応の時間と労力をつぎ込んだ。
そして轟かせたその名と種族を、震撼させたその強さと無敵さを。
そして、彼のことをEFWの世界でこう呼ぶようになった。
『無敵の狂王 ゼロ=フォン=インビジブル』と。
そしてEFWにおいて、狂ったように『スライム』とゆう種族を育て。
最強でもなく究極でもなく、無敵の体現者とも呼ばれたスライムは。
EFWに非常によく似ていて、それでも違いがある完全な異世界に転生する。
そしてその世界でこう呼ばれることになる『無敵の皇王』と。
どうでしたか、感想いただけるとありがたいです。