用語解説04.封印☆
◆封印と追儺
盆地の中央に位置するムルティフローラの王都。その中心に聳える城。
城全体が立体構造の複雑な魔法陣で、城壁に囲まれた王都もまた、魔法陣。
国土全体が巨大な魔法陣を形成し、幾重もの魔法陣の最外周が、山脈だった。
ここに封じられた【三界の魔物】は、あまりにも強大な為、僅かずつ核を縮小させる他ない。
王都を中心とした国土全体から、封印の魔法陣に力が注がれている。
▲ムルティフローラ王国の地図
【三界の魔物】は封印されて尚、瘴気を撒き散らす。
その穢れを祓う為、毎年冬に国内全ての家々が入念に清められ、追儺の歌が歌われた。
日々の営みの中で溜まった穢れ、心の澱みをも祓い清め、【三界の魔物】の瘴気を浄化する。
毎年、年末になると、官吏は全ての業務を休止し、総出で城の大掃除をする。
城に張り巡らされた結界の点検や、物理的な汚れの除去の後、追儺の呪歌を歌い、霊的な穢れも祓い清める。
城内だけでなく、王都全体、辺境の小村に至るまで、家々では汚れと穢れを清め、【三界の魔物】を弱体化させる。
王城の地下深く、封印の間では追儺の儀式が行われ、国内で最高の力を持つ者達が直接、【三界の魔物】を削る。
棺を中心に追儺の儀式が行われる。
主に【三人の巫人】と【鍵の番人】【凍てつく炎】と他数人の導師達が実行。
ある者は楽器を奏で、ある者は魔力を込めた歌を朗々と詠じ、またある者はその手に建国王の実弟の剣を携えて舞う。
封印の間に満ちていた禍々しい瘴気が剣に断ち切られ、呪歌と楽の音に触れ、霧消する。
今を生きる人々の生命力と魔力、亡くなった人々の【魔道士の涙】に残る力。
それらを総動員し、12人の強力な術者が協力してやっと、一度だけ、最大最強の【三界の魔物】の核を滅する追儺の術を発動し得る。
力の充填に約1年の時間が必要で、その間に瘴気も蓄積してしまう。
▲山脈の主峰ヒルトゥラ山、祭壇の広場遠景
封印の最外周である山脈にも、祓いきれなかった穢れが到達する。
数年に一度、溜まった穢れを祓う事が、建国王の役割のひとつ。
ヒルトゥラ山の祭壇には、成人の儀で国中の若者から祓った穢れを溜めてある。
それに瘴気が触れると三界の魔物が発生する為、数年に一度、祓い清めるのだ。
この儀式は、結界の最外周の守りを強化するものだ。
祭壇には、特殊な魔法陣が描かれている。
野茨の血族が祭壇で、建国王の【魔道士の涙】を嵌め込んだ剣を用いて、呪文を織り込んだ剣舞を舞う。重い真剣を持って1時間余り踊り続ける重労働。
▼祭壇の広場で建国王の剣を用いて書く追儺の呪文。
「天の理、地の恵み、水の情けと火の怒り、我にその大いなる助力与え、この血に熱帯び、心に勇気灯せ。
蒼穹の許、鵠しき燭よ、如何なる疏明も却ける峻厳なる光よ、咎人の陰かな企み劾け。
視界の外なる焔光陽炎纏い、慧し剣、儺やらい、穢れ討ち、裡なる碍断て、慧し剣。
魔の目貫け、慧し剣、儺やらい、魔滅せ。
日々に降り積み心に澱む塵芥、洗い清めよ祓い清めよ。
視界の外なる焔光陽炎纏い、慧し剣、儺やらい、穢れ討ち、外なる碍断て、慧し剣。
魔の目貫け、慧し剣、儺やらい、魔滅せ。
夜々に降り積み巷に澱む塵芥、洗い清めよ祓い清めよ。
薙ぎ祓え、祓い清めよ、破魔の剣、日の箭霊呼び、弓弦鳴らせ。
巡り繰る因果の糸のその先に警めて戒めに忌まし魔を縛めよ。
破魔の剣、日輪翳らす雲を薙ぎ、月を翳らす靄を祓え。
射交矢、祝的し、祓えども心許すな三界の魔誘う深淵の螺旋、我欲の沼を出で祓い清めよ。
日の箭霊呼び、弦打ち残心せよ。
薙ぎ祓え、祓い清めよ、破魔の剣、日の箭霊呼び、弓弦鳴らせ。
視界の外なる焔光陽炎纏い、慧し剣、儺やらい、穢れ討ち、裡なる碍断て、慧し剣。
魔の目貫け、慧し剣、儺やらい、魔滅せ。
日々に降り積み心に澱む塵芥、洗い清めよ祓い清めよ。
薙ぎ祓え、祓い清めよ、破魔の剣、日の箭霊呼び、弓弦鳴らせ。
視界の外なる焔光陽炎纏い、慧し剣、儺やらい、穢れ討ち、外なる碍断て、慧し剣。
魔の目貫け、慧し剣、儺やらい、魔滅せ。
夜々に降り積み巷に澱む塵芥、洗い清めよ祓い清めよ。
薙ぎ祓え、祓い清めよ、破魔の剣、日の箭霊呼び、弓弦鳴らせ。
視界の外なる焔光陽炎纏い、慧し剣、儺やらい、穢れ討ち、裡なる碍断て、慧し剣。
日々に降り積み心に澱む塵芥、洗い清めよ祓い清めよ。
視界の外なる焔光陽炎纏い、慧し剣、儺やらい、穢れ討ち、外なる碍断て、慧し剣。
夜々に降り積み巷に澱む塵芥、洗い清めよ祓い清めよ。
薙ぎ祓え、祓い清めよ、破魔の剣、日の箭霊呼び、弓弦鳴らせ。
射交矢、祝的し、祓えども心許すな三界の魔誘う深淵の螺旋、我欲の沼を出で祓い清めよ。
射交矢、祝的し、祓えども心許すな、日の箭霊呼び、弦打ち残心せよ。
射交矢、祝的し、祓えども心許すな、日の箭霊呼び、弦打ち残心せよ。
薙ぎ祓え、祓い清めよ、破魔の剣、日の箭霊呼び、弓弦鳴らせ。
日の箭霊呼び、弦打ち残心せよ。
薙ぎ祓え、祓い清めよ、破魔の剣、日の箭霊呼び、弓弦鳴らせ。
日の箭霊呼び、弦打ち残心せよ」
呪文を書く剣舞と魔法陣の術で、穢れを魔力に変換し、山脈全体に行き渡らせ、結界を補強する。
※「野茨の血族」で、政晶は、建国王の剣で呪文を書きながら、声に出して唱えていたが、発声は必須ではない。
毎年の追儺で僅かずつではあるが、核は縮小している。
何千年の後になるやらわからぬが、必ず滅する事はできる……筈。
完全に消滅させるには、何千年の歳月を要するのか、誰にもわからない。
▲祭壇に描かれた魔法陣の正面図
◆封印の導師
ムルティフローラの建国と【三界の魔物】の封印に携わった人々の内、王族ではない者。
十数人の導師が、封印の術に自らの全存在を組み込んでいる。
存在そのものが封印の術に組み込まれ、2000年以上の長きに亘ってこの世に留まっている。
三界の魔物の監視と封印の維持管理、王家の血統の保存を行う。不在の折は「過去の三人の巫人」……魂を封入した【魔道士の涙】を嵌めこんだ呪具が、代役を果たす。
生きているとも、死んでいるとも言えない状態でこの世に留まり、ある者は能動的に、またある者は街の防護の結界、或いは山など自然の地形となり、その場所から先へ【三界の魔物】を逃さぬよう、幾重にも守っている。
例えば、鍵の番人は人の形を保ち、能動的に活動する。国土を囲む山脈となった騎士ヒルトゥラは、後者だ。
※以下は、既に登場した導師 文頭の【 】は導師の称号。
【鍵の番人】……【飛翔する梟】の呪医。基本的に城の左の塔に居る。相手と状況に応じて、子供の態度と長老の態度を使い分けるヤな大人。7歳前後のちびっこに見える。男性。
称号のない導師……城の中庭の石碑に括られた湖の民。【鍵の番人】の師。
【凍てつく炎】……基本的に城の地下室に居る。封印の監視と、野茨の血族の血統管理などを行っている。
【慈悲の谷】……【贄刺す百舌】の儀式魔術の研究者。普段はムルティフローラの国土を囲む山脈の、最も深い谷の祭壇に居る。山脈で道に迷った死者と生者をまとめて、主峰の祭壇に連れて来る。30代前半くらいに見える。女性。
【欺く道】……【歌う鷦鷯】の音楽家。追儺の儀式を構築し、穢れを祓う呪歌を創り出した。山脈に届く穢れを集め、王都の北に聳える主峰の祭壇に蓄積する。50代くらいに見える。男性。
【主峰の心】……騎士ヒルトゥラ。ムルティフローラの国土を囲む山脈となった。現在は成人式係。中年男性。背が高く、筋骨逞しい偉丈夫。魔法の鎧に身を固め、大剣を背負った姿で現れる。
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