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幸運な男

作者: 水谷 蜜柑

君は幸運な男だ。

家柄も、受験も、就職も、結婚も。

君はいつどんなときだって笑っている。

君は挫折を知らない。

どんなことだってあっさり成功してみせる。

そして君は言うんだ。

「運が良かっただけさ」って。



中学三年生のとき、覚えているかい?

君は成績があまりよくなかった。いつも平均点を切って嘆いていたね。当然さ。僕がどれだけ真剣になって教えてやったって、真面目に話を聞いていたことなんて一度もなかっただろう?僕が必死に勉強をする隣でゲームばかりして、迷惑したよ。


それなのに君は、僕と同じ高校に受験するなんて言い出した。君の両親も、先生も、友達も、もちろん僕もそれを止めた。君には無謀すぎる挑戦だった。僕は合格できるかもしれないけど、君にはきっと不可能だろうと考えた。僕の取り柄はこつこつと勉強を続けていただけだったから。


当然、模試でも全く良い判定は出なかった。いつもF、よくてもEくらい。志望校を考え直してみてはいかがでしょうか、と何度も何度も言われていたよね。でも君は受験した。


そして、合格した。


周りはみんな驚いた。当然、僕も。どうして合格できたの。そう聞くと君はこう言ったんだ。

「運が良かっただけさ」って。



高校三年生のとき、覚えているかい?

君は高校受験のときのように、成績に不釣り合いな大学を志望した。それは僕の目指す大学よりもレベルの高い大学だった。僕でさえもD判定くらいしか出ない大学だった。君には負けるのが悔しくて、僕も無理してそこを受験した。


僕は落ちた。


でも君は、合格した。


そしてまた君はこう言ったんだ。

「運が良かっただけさ」って。



友人関係も、就活も、結婚も。

君は全てを上手くこなした。


もううんざりなんだ。

幸運な君が。


でもそれも今日で終わりだ。


不幸な僕の、幸運な君への報復だ。





僕は建物の陰で、震える手で包丁の柄をしっかりと握りなおした。

すぐに視線の先にあった建物から、君が一人で出てきた。

今だ。

僕は勢いよく陰から飛び出した。


キィーッ!

ライトが辺りを照らした。





「ねえ知ってる?昨日この辺りで通り魔が引かれて死んだらしいよ」


「ああ知ってる。深夜二時くらいのやつだろ?」


「どうして知ってるの?ニュースにもなってないのに」


「実は、ちょうどその現場を見たんだよ」


「ええっ、物騒な話だなぁ。死体とか見たの?」


「見るには見たんだけど、もうぐちゃぐちゃで。包丁だけ転がってたんだ」


「もしかして、狙われてたのかもしれないよ?」


「怖いこと言うなよ。でもそうだったとしたらーー」



「運が良かったな」

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