表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大富豪  作者: 沖田和雄
3/3

霧島香苗編

「それでさぁ、……」

私は霧島香苗、39歳のOL。いわゆるアラフォー。今は、会社の同僚と休憩時間を使って女子会中だ。今はこういう時間が一番楽しく感じる。

「やばい、もう時間よ、戻らないと……」

仕事は一応それなりにこなしているつもりだ。周りからもたいして嫌われてはいないと思う。勝手に思い込んでいるだけかもしれないだが……。

家では、一人暮らし。料理はたまにする。が、普段は忙しくて作っている時間がないので、基本コンビニで何か買っている。忙しいといっても仕事づけの毎日というわけではない。家では、パソコンやスマホを触っている。ある意味、趣味みたいなものだ。だから、料理を作る時間がないのだ。それに、コンビニのお弁当もおいしいし、料理を作るメリットがたいしてないという理由も加わってくる。ただ、そもそもパソコンを触りだしたのはそういう人はモテるんじゃないかと思ったからだ。年はもう39歳。機械に弱い人が多くてもおかしくないだろう。後々になって、料理ができる人のほうがモテると考えだしたころには時すでに遅し。趣味に没頭していた。

「誰か、良い人いないかなぁ……」

そんなある日、給料が少ないのでバイトを掛け持ちしようと考えてとあるパソコンの求人サイトを見つけた。

そこには

(ある場所に集まってトランプゲームをするだけで報酬10万円。最大4名まで、参加応募者多数の場合は抽選によって決めさせていただきます。尚、当選した場合は応募していただいたパソコンに場所と日時を送らせていただきます。)

と書かれていた。私はすぐに応募した。当たるわけがないだろう、そう思いながら……。

そんなものに応募したことなどすっかり忘れていた2週間後のこと、当選通知のメールがパソコンに入っていた。

「え、や、やったわ、10万円」

このとき、仕事の詳細なんか全く頭の中になかった。その中にあったのは10万円のみだった。

そして、来たる??月??日、とある廃墟。私の他に3人の人がいた。若い女性と30歳ぐらいの男性、風格のあるおじさんだ。

ここにいるみんなは簡単に10万円を手に出来る強運の持ち主なのだと感じていたがそれが間違いだと分かったのはあの説明を聞いたときだ。ここにいる人は強運の持ち主なんかじゃない。誰か2人は無条件に借金を背負わされるのだから。絶対にそれだけは避けたい。借金10億円なんて……。そのためなら、他人が犠牲になっても構わない、そう思った。

そして、あの最悪なゲームが始まった。

……………………

結果は知っての通り、3位。借金1億円。給料が少なくて、バイトを掛け持ちしようとしていた程なのだから1億円なんてもちろん持ってない。払える当てもない。今は何も考えられない……というよりは何も考えたくなかった。もう時間など止まってしまえば良いのに……と思った。しかし、時はもちろん止まってくれない。気づいた時には私と借金10億円背負わされた若い女性しか廃墟に残っていなかった。

何かしないことには何も始まらない。そう思い、私は家に帰った。明日からの生活に莫大な不安を抱えながら……。

それから数日が過ぎた。しかし、状況は全く良くならない。相変わらず収入は少なく借金など返済できる気がしない。私はこの生活にうんざりしていた。できれば、この世から、跡形もなく消えてしまいたかった……。

さらに1週間後、もはや生きる気力も残りわずか。お金はもったいないが、外食せざるを得なくなったので駅前のレストランで昼食を取っていた。

「はぁ~」

溜め息をすると幸せが逃げるというが溜め息をする前からもうすでに幸せは逃げていた。遠目で自分の料理らしき物が運ばれてくるのが見える。ただ、あまり良いものはもちろん食べられない。ついに、そのウェイトレスは私の前に来た。やはり、私の料理だったのか。

「どうぞ、サービスです」

「え……」

そのウェイトレスに急に話しかけられた。

「溜め息をしてると幸せが逃げてしまいますよ」

彼は微笑みながらそう言った。

「もう……幸せは逃げてしまいました」

そう、幸せなんてもう私には……。

「なら、僕が幸せを届けます、もちろん、あなたに」

その瞬間、胸の鼓動が尋常じゃない速さで刻みだした。

もう、すべて、失ってしまったんだから……これ以上失うものは何もない。

「もし、よかったらメアド交換していただけませんか?」

気づいたら、そんなことを口にしていた。

「もちろん、良いですよ」

そう言った彼は天使のような笑顔を見せていた。

「あ、あと、お、おお名前……」

「僕は高田正人たかだまさとです。あんたは?」

「あ、わ私は霧島香苗…です」

「香苗さんですか、良いお名前ですね」

「!!!!!!!!!!!!!!!!」

「僕のことも正人って呼んでください」

「!!!!!!!!!!!!!!!!」

「あ、ダメ……でしたか?」

「いいいいいえ、そそそんなことありません、正人さん」

「じゃあ、良かった。僕は仕事に戻りますので」

「あ、はい、頑張ってください」

……これって、夢じゃない…よね。ありきたりだがほっぺをつねってみた。

「イタッ」

こんなことが現実に起こるなんて思っても見なかった。まさに、白馬に乗った王子様である。さすがに、この時ばかりは自分が置かれている立場を忘れ、ルンルン気分でレストランを後にした。

それからは、メールでたまにやりとりするくらいだった。だが、好意はどんどん湧き上がってくる。でも、現実的に考えて1億円の借金がある人と付き合ってくれる人はそうそういない。絶対にその事を話さないといけない、それは分かっている……が嫌われたくない……。元々、強運があれば良かったのに……。なんて思うとまた溜め息が出てしまった。

それから、1ヶ月後正人からメールが来た。

内容は

「2人で会いたい」

だった。


もちろん、まだ借金のことは話していない。というより、話したくなかった。正人が目の前から消えてしまいそうな気がしたから……。結局、2日後に会う約束をした。


------------------------------------------------------------------------------

それから、2日後

もう、正人は着いていた。

「お待たせ。待った?」

「全然、じゃあ、行こうか?」

「はい」

それから、私たちはとある水族館に向かった。

「うわ~、綺麗」

ふと、そんな言葉が自然に漏れた。

「そうだね」

「そういえば、正人って何歳なの?」

「あぁ~、そういえば言ってなかったね、来月で37になるんだ」

思った答えとは完全に違っていた。

「え~、もっと若いと思った、私も39歳なの」

「そうなんだ、じゃあ、一緒ぐらいなんだね」

私は嬉しかった。年が近いということは結婚しやすい年齢にあるということだ。借金さえなければ…と心から思った。そんな心は胸の奥にしまって、今日はそれで2人とも家に帰った。

それからももちろん仲良くしていた。ただ、借金のことはまだ言えずにいた。

翌月……

今日はビッグイベントがある。

正人の誕生日なのだ。高価とは言いがたいプレゼントを持って彼の家に向かっている。もちろん、家に行くのなんて今日が初めてだ。悪いとは思ったが向こうが誘ってきたので行くことにしたのだ。そして、着いた駅は大都会の中心部、この時点でアルバイト店員が1人暮らししているとは思えない。でも、確か1人暮らししてるって言ってた気が……。そこから徒歩10分で家に着いた。見た目はなかなか良さげな8階建てマンションの3階のようだ。エレベーターで上がり、ついに正人の家の前に着いた。

〔ピンポーン〕

「はいはい、あ、香苗。ちょっと待って。今開ける」

〔ガチャ〕

「どうぞ、あがって」

「あ、お邪魔します」

「そんなにかしこまらなくてもいいよ」

部屋に入るととても綺麗に整理されていた。しかも、マンションにしては広いと思った。

「部屋とても綺麗ですね」

「え、本当ですか?一応、綺麗好きなんですよ。あ、ところで何飲みます?ビールとかで良いですか?」

「あ、すみません。じゃあお願いします」

それからはビールを片手に2人でいろいろ話した。アルコールの力を借りて。そんなことをしていたら完全に誕生日プレゼントを渡すのを忘れていたのに気付いた。

「あ、これ誕生日プレゼントなんですけど……」

「え、用意してくれたんですか?ありがとうございます」

「いえ、すみません。高価なものが買えなかったんですけど……」

「そんな、プレゼントに値段なんて関係ないよ」

「正人さん……」

もう、とけてしまいそうだった。

だいたい、正人の家に来てもう2時間経つところだ。

「あのー……」

正人が声をかけてきた。

「なんです?」

「もし…、良かったら……」

「良かったら?」

「もし良かったら、つ、つ、つ」

もしかしてと想像するだけで鼓動が早くなる。

「つ……何です?」

「つ、付き合ってくれませんか!」

一瞬のうちに体が熱くなる。思考が停止した。

「ダメ……ですかね?」

もちろん、私の答えは決まっているが……。ついに明かす時が来たようだ。

「実は……」

「じ、実は……?」

言わなきゃいけない。言う時が来たんだ。私は振られるのを覚悟した。

「じ、じ、実は借金があるんです。それも、1億円の……」

「え……」

ついに、終わりを迎えるのだろう。楽しかったこの恋も……。

「え、そんなことですか?全然大丈夫ですよ」

頭に?が浮かんだ。また、思考が停止した。

「え、でも1億ですよ?1億円」

「僕も1つ黙ってたことがあるんですけど……」

「え、な、な、何です?」

「実は僕あのレストラン止めることになってるんです。で、父の跡を継ぐことになってるんです」

「お父さんは何の仕事をしてるんですか?」

「父は???ホテルのオーナーなんです」

「え、???ホテルって……」

???ホテルといえば日本有数の超高級ホテルだ。

「だから、1億円なんて、全然気にしません。なんで……一生、ついてきてくれませんか?」

もはや、断る理由なんてどこを探しても見つからなかった。

「はい、喜んで」

私は初めて強運とはどういうものか理解できた。


それから、半年後

「高田正人、あなたは妻、霧島香苗とどんな時も共に過ごすことを誓いますか?」

「誓います」

「霧島香苗、あなたは夫、高田正人とどんな時も共に過ごすことを誓いますか?」

「誓います」

「それでは両者誓いのキスを」






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ