コンビニのキツネヤマさん
「なぁ、セバス。」
「テ・ツ。・・・いい加減覚えろよ。」
コヤマは縁側へ出て“セバス”だか“テツ”だかの隣に腰を下ろし、空を見上げた。
「あ!流れ星。」
「あー。お前、知ってるか。あれな。宇宙のゴミなんだとよ。」
「ゴミ?」
「ゴミって言っても塵とか小さな浮遊物なんだけどな。弁当の食べかすなんかじゃねえぞ。まぁ、その小さな塵が、地球へ向けて流れてくる時に大気圏で燃えてああやって光を放つんだと。」
「へぇー。セバスは物知りなんだね。」
コヤマは空を見たまま、感心したように言った。
「・・・・だ・か・ら・・・・--はぁーー」
“セバス”だか“テツ”だかは、とうとう諦めたようだ。呆れたようにため息をついた。
※※※はい“テツ”の負け。以後、彼のことをセバスと呼ぶ事にします。※※※
「今日さ、彼女に会ってから、ずっとふわふわした気持ちなんだ。心に羽が生えたみたい。」
コヤマは、夜空から目を離さない。きっと照れがあるのだろう。
「なんだよ。彼女に会うことが出来たら、一言ありがとうを言えればいいって言ってなかったか?」
「そうなんだけどさ。」
「まぁ、いきなり初対面でありがとうなんて言われても、ピンとこねえけどな。」
「会えればいいって思ってたんだけどさ。もっと、話がしてみたいとか、笑顔が見たいとか、何だかどんどん止まらなくなっちゃってさ。どうしたんだろうな、オレ。」
肩をすくめたコヤマに、セバスは知った顔で頷いた。
「お前のような人間。オレ、見たことあるぜ。」
「え?それって、どんなの?病気なの?」
「あぁ、きっとお前は浮かれ熱踊り病だ。」
「浮かれ熱?踊り病?聞いたことないけど。」
「最初は、そうだな、ふわふわもふもふした感じなんだ。そのうち、スキップをしだす。」
「スキップ??」
「あぁ、もしくは鼻歌、くるくる回るように踊ることもある。」
「ふぅん・・・まだ・・・スキップ症状は出ていないな。」
「顔が赤くなったり、青くなったり。」
「信号のように忙しい病気なんだね。」
「そして、末期症状は、魂が抜けたような顔になる。食欲が無くなり、いきなり泣き出したりするんだ。そうなると手に負えねぇ。」
「もしかして・・・死んじゃうの?」
「いや。しばらくして、女は、バカバカ物を食うようになる。男はまた最初に症状に戻る事が多いな。時々口にする名前が最初と違うようだが。」
「・・・それじゃぁ、この病気が治るのに時間がかかるってことなんだな。悪化しないように気をつけるよ。」
「あぁ、気をつけな。」
「それにしても、セバスは、ほんっと物知りだね。今度から何でも相談することにするよ。」
「いつでも、頼ってくれていいぜ。」
セバスは得意げにふっと笑った。




