コンビニのキツネヤマさん
「お疲れ様でしたー。」
「コヤマ君、お疲れさま。また明日も頼んだわよ。」
ひげ店長は、手をひらひらと振った。
「はい、また明日。」にっこりとコヤマは笑った。
「はーっ、今日も一日終ったぁ。」
コヤマは大きく伸びをし、肩を回した。
「さて、セバスが待ってるから帰りますか。」
店を出て、国道沿いの道を歩く。遠くに見える山は夕日に照らされ赤く染まっていた。
夕暮れ、日は落ち、空は紺色に変わり始めた頃、ようやく彼は家に着いた。
「ただいまーセバス!」
「誰がセバスだ!!テツと呼べ!!」
“セバス”だか“テツ”だかは、コヤマが投げてよこしたジャーキーをパシッと受けると、ふんっと鼻を鳴らした。
「今日一日寂しかった?」
「んな訳、ねーだろ!!」
「ふふ、やせ我慢しちゃって」
んん?という顔をして、“セバス”だか“テツ”だかは、コヤマをじっと見た。
「おまえ、今日なんかいい事あったのか?」
「ふふふ。わかる?」
「あぁ。にやけ過ぎだ。そんな顔で客に気持ち悪るがられなかったか。」
「ひどいな。顔はけっこういい線いってると思うけど。」
「はいはい。ナルシスト君。」
コヤマは真面目な顔をした。
「今日、彼女が店に来たんだ。」
「・・・・・・・・。話は、したのか?」
「いや。何も。お客と店員だった。」
「そうか。」
「??セバス、どうかした?」
「あーー・・いや・・・。だから、テツと呼べ!!」
“セバス”だか“テツ”だかは、空を見上げた。満点の星空に、半分の月が出ている。
--・・・・自然ノ理。反スル者・・・・--
あの方が言っていたその言葉が気になった。




