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コンビニのキツネヤマさん

最終章


ある月が綺麗な晩でした。

その夜は一度寝付いたのですが、庭で物音がして目が覚めました。

物音が気になり窓から庭を覗くと、青白い光が見えました。

何だろう?

そう思い、しばらく庭の光を見ていたのですが、見ている内になんだか手招きされているようで、気が付けば私は庭へ出ていました。

「誰?」

不意に、もしかしたら泥棒か何かかと思い、怖くなりました。

でも、青い光は優しげで、少し月明かりと似ていました。

「誰かいるの?」

勇気を出して、もう一度呼びかけてみると、青白い光は弱まりその光の中から出てくるように、1人の青年が姿を現しました。

青年は、何も言わずじっと私を見ていました。

彼の背後の月がとても大きく見えて、幻想的な風景でした。

彼は一匹の狐を連れていました。

私は、その狐に見覚えがありました。

「キューちゃん!!!」

私は、狐に声を掛けました。

「彼の名はシンと言います。」

青年は、ゆっくりと心地よい響きで語りかけてきました。

「シン、もっと彼女に近づいては、どうかな。」

青年に言われると、狐は私に近づいて来ました。

私は、近づいてきたキューちゃんの頭をそっと撫でてやりました。

「あれ・・・」

その狐に見覚えがありました。

「あなた・・・。サマーキャンプで会った怪我した狐だったの?」

狐は私の顔を見ていました。

やはりそうでした。

まさか出会えると思ってなかったので嬉しくなりました。

「元気になって良かったわね。」

「彼はあなたに救われました。もう少し長くあの罠にかかった状態だったら、彼の足は使い物にならなくなっていたでしょう。感謝いたします。」

青年は深々と頭を下げたので、私も慌てて頭を下げました。

「いえっ、そんな当たり前の事をしただけですから・・・礼には及びません。」

青年は、その言葉を聞いてにっこりと笑いました。

「ありがとうございます。ですが、この狐をあなたの側に置かせて、恩返しをさせていただきたいと思います。」

「えっ?」

私は何の事か解らずキョトンとしていました。

青年は、しばらく狐を見ていました。

狐は、なにか解った様な顔をして一度だけ大きく頷いた様です。

「あなたがこれから起る事を一切受け入れられないと思えば、即座にあなたから、その記憶だけを消し去ります。」

青年は、一旦言葉を区切りました。

「しかし、もし少しでも理解する気持ちがあれば、彼を・・・シンを受け入れてやってください。よろしくお願いいたします。」

青年はまた、低く頭を下げました。その様子は心底シンの事を大事に思っているようでした。

「あ、はぁ。」

間が抜けた返事をしてしまったと思いましたが、青年がなにやら唱え始めましたので私は黙って見守っていました。

突然青白い光が天から降りかかり、狐を包み込みました。

「!」

「彼は、なかなか働き者です。コンビニ等のアルバイトに行かせて、恩返しをさせてやってもらえませんか。」

眩しくて、目を閉じていましたが青年の声で目をあけました。

すると狐だったシンは、コンビニで、そしてテツと一緒に病院に来て、それから鳥たちに囲まれた不思議な雰囲気を持ったあのーーーー。

「信じられない。」

シンは、私をじっと見ると少し困ったように笑いました。

「すみません、先生。オレ、本当は狐でした。でも、あなたの事が忘れられなくて、町まで来たんです。」

シンはさらに言葉を続ける。

「かなり混乱されてますね。でも、さらに混乱させてちゃうかも知れません。」

シンは、大きく深呼吸をしました。

「薫先生、あなたの事が大好きです。」

「!!!」

月夜に惑わされたのかもしれません。

以前聞こえた空耳が、心をかき回すのでしょうか?

もしくは、公園で見た不思議な雰囲気が忘れられなかったせいでもあるのかもしれません。


いえ。

そんな言い訳なんていらない。

キュンとくる瞬間なんてそうそうないもの。


私は、自ら歩み寄っていました。

「受け入れてもらえたって事・・・?」

その言葉に、頷くと、

「コヤマさん。いえ・・・シンさん!」

と声をかけました。

「シンでいいよ。」

シンは嬉しそうな、恥ずかしそうな顔で私を見つめてくれました。

「シン。しっかりやりなさい。」

青年がシンに声をかけると、また私に一礼をしました。

「では。」

そういうと、青年はスーっと音もなく姿が見えなくなりました。


※※※※※※※※


それから、しばらくたった後、またあのコンビニにはコヤマの姿があった。

玉子様は、相変わらず毎日卵1パックを買いに来るし、後から入ってきた茜も仕事を覚えてしっかり一人前だ。

天気のいい日には清晴と釣りに出かける事もある。

家の外ではセバスが待ってる。

“オイ、顔がにやけすぎて、崩れてるぞ”

それは自覚があるから、まぁいいや。

「ただいまー。」

「おかえりー。」

大好きな声に、笑顔に迎えられて、コヤマは家の中へ入っていった。


 

おわり

       


これで『コンビニのキツネヤマさん』は終了いたします。

最後までお読みいただきありがとうございました。

ジャンルが童話でいいのかわからない展開になってきましたね。童話としてご覧になった方すみません。


最初に投稿した時は、誰にも読まれずに埋もれて終わるのではと思ってましたが、あなた様に読んでいただき嬉しい限りでございます。


『コンビニのキツネヤマさん』は終わるのですが、次は明主の事をちょっと補足するようなお話をお届けできればなぁと思っています。明主もいつまでも不貞寝したままではいけませんからね。

その折には、読んで頂けると嬉しく思います。

では、また。小説でお会いしましょう。






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