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コンビニのキツネヤマさん

第4管轄区の狐の長、明主とその側近達は、予測できない事態に陥っていた。

狐族の山が定員オーバーどころか、溢れ返らんばかりに狐、狐、狐と、狐で一面覆われていたのだ。

「どういうことだ。」

明主が腕を組み、狐で溢れ返った山を見上げた。

まるで狐が黄金の海のようだ。

「どうやら、第4管轄区の住人以外の者が、大勢、入管管理局の目を盗んで山へ入った模様です。というか、第4管以外の狐ばかりです!!」

二葉が、入管リストを見ながら報告する。

「ここ最近、4管が山を購入するのを知った者がいるらしく“パラダイス計画”という名で各管内に噂が流れておりまして、その噂を聞きつけた狐達が入山日に一気に押しかけたものと思われます。」

五木は、二葉の報告を補足する。

「内密に進めてきたのだが、どうやらすでに洩れていたようだな。噂の出所は?」

明主は、顔を五木の方へ向けた。

「断言はできませんが、第1管の太公様の補佐官殿ではないかと・・・。」

「澤谷か。ふむ。太公様はもう800年以上生きていらっしゃる。すでに妖力だけでこの世に留まっているようなものだ。画策するなら、澤谷の可能性の方が高いな。五木、引き続き捜査を頼む。」

「かしこまりました。」

そう言うと五木は、スッと姿を消した。

明主は、山へ目を戻した。

「これでは、どうしようもないな。」

事態はさらに悪いほうへ進む。

「明主様ぁ!!TV局の人間が来てしまったよぉ」

三陽が慌てた様子で、明主の元に駆け寄る。

見ると、山の上空をリポーターのヘリが飛び、山のふもとには取材陣やカメラマン、一般人でこちらもごった返していた。

「はぁーーーー」

さすがの明主も額に手をやると、髪をかきあげた。

「仕方ない。こうなったら・・・。」


コヤマは、若主に連れられ、山の入り口に来ていた。

「若様。どうして、若様が私の迎えをされたのですか?」

「あぁ、温泉宿でやった卓球の勝負に負けてね。明主から色々と雑務をさせられているわけだ。」

若主は、その勝負を思い出したらしく、フフフと笑っている。

「若様・・・。」

コヤマは若主をじっと見た。

「ん?なんだ。」

「聞かないんですか?」

「さっきの事か?」

コヤマは黙って頷いた。

若主は、考えていた。

「そうだな。お前の気持ちを聞く前に、私から少し話をさせてもらおう。」

そう言って、若主は近くの石に座った。

「シン、狐が人に惚れること、また逆に人化した狐に人間が惚れることは、はるか昔からあった。

そうだろう、人の中で暮らしているのだ。

別にめずらしい事じゃない。

ただ、好き同士ならそれでもよいと、私は思う。

問題は、まったく別の種族である狐と人との間に子が出来ることだ。

多くの場合は子は出来ないが、稀に生まれてくることがある。

その数少ない子達の多く(,,)は、人でも狐でもない異形であり、そして可哀想に短命でもあるそうだ。

だからこそ、出来るだけその様な悲しい不幸を減らす為に、昔の狐達は掟を作った。

掟は無駄にあるのではない。昔の輩の知恵なのだよ。

私から言わせれば、その掟は多少お節介とも思うが。まぁ、それはそれだ。」

若主は優しく諭すと、いったん息をついた。

コヤマは、何も言えず、じっと聞いていた。

「お前は、その事についてどう思う。確かに、人を好きになるということは美しい。だが、同時に人を好きになることは、茨の道をーーーーー」

ここで若主の言葉が途切れる。


明主が動いたのだ。

明主が印を結び、なにやら呪文を唱え始めた。

そして、山全体にこだまするように、

「各々のあるべき場所へ戻られよ!!」

と声を張り上げ、大きく2度手をパンパンと叩いた。

すると言霊が山を駆け巡り、瞬時に狐が山から消えてしまった。


「まったく・・・。話の途中で、私まで払うとは。」

若主は、第7管にある庵の庭に立っていた。

「シンは、そろそろパスが切れる頃だな・・・。」

若主は思案しているようであった。



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