コンビニのキツネヤマさん
ピンポンピンポンー
来客をしらせるチャイムと共に入ってきたのは、すらりとした髪の長い若い女性だ。
彼女の姿を見た途端、ひげ店長のテンションが空高く舞い上がる。
「いらっしゃーい。楓さん、今日の白いワンピースもよくにあってらっしゃる。とても素敵ですね!」
「どうもありがとう」
楓とやらはにっこり笑ってお野菜のコーナーへ行く。
「今日は何をお探しですか。」
「サラダ用のトマト、切らしちゃって・・・。」
お野菜コーナーを見て楓は伏せ目がちに悲しそうな顔をする。今日はトマトは置いてなかった。
「ご心配いりません!!ワタクシが裏の畑から採ってまいりましょう。何なら一緒に行って選びませんか!?」
浮き足立っているひげ店長を見ながら、コヤマは首を傾げて言う。
「裏の畑って、店長のお爺さんがされてるんですよね?勝手に売っちゃっていいんですか?」
「なに言ってんの!売るなんて野暮ったい!ここはご近所のよしみで差し上げるのよ!」
あーまたか・・・とコヤマは苦笑する。
「なんでしたら、サラダの足しにキュウリもいかがです?採れたては旨いですよ。」
そういいながらひげ店長は楓と連れ立って裏の畑へと行ってしまった。
「店長、いいように使われてるなー。」
二人を見送りながらコヤマは呟く。毎週、いや毎日のように野菜を買いに来ては無い物を、裏の畑から頂戴していく“楓”はしたたかだ。
「店長、商売むいてないじゃないのかな。」
店の経営のことなど、ただのバイトには知る由も無い。売り切れたアメリカンドックの追加を揚げながら、コヤマは苦笑した。
ピンポンピンポンー
また来客だ。
「いらっしゃいませー」
コヤマはアメリカンドックを揚げならが、ドアの方へ顔を向けた。




