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コンビニのキツネヤマさん

コヤマは、町中のいろんな人にセバスを預かってもらえないか訊ねていた。

もちろん、坂本さんの姪っ子もコヤマから連絡をもらい、住んでいる町でなんとかセバスを引取れないか手を尽くしている。

でもコヤマは、セバスはこの町に居て欲しかった。

自分が帰って来た時、出迎えて欲しいという願いから。

そして、やっぱり坂本さんの近くに居た方がセバスも嬉しいのではないだろうか・・・・。


だが、世の中そんなに簡単にいかないものだ。セバスを飼ってもらえそうな人はいなかった。

引取って世話をしてくれる人が現れないと、いつかの二の舞になってしまう。

それだけは、絶対嫌だった。


ーーーあの人に、頼るしかない!!--

コヤマは最後の頼みの綱にすがった。


「お願いします!!!」

コヤマは深々と頭を下げた。

ひげ店長は、眉をぴくぴく動かしている。

「私もお願いします!!!」

隣で頭を下げているのは、いつかの万引き美人局だった。

「あんた達、私の人としての器を計ってるの!?」

「そんな事はありません!店長が最後の頼みなんです!!店長しかいないんです!!」

「犬くらいかって、あげればいいじゃない。裏の庭だか、畑だか、牧場だかがすっごい広いんだし。犬一匹いても大丈夫でしょ?」

万引き美人局も援護してくれる。

「ったく、あんたが言うんじゃないわよっ。」

ひげ店長は、鼻を膨らませて講義する。

「あんたじゃありません。茜です。」

「茜、なんで私があんたを雇わなきゃなんないのよ。」

「万引きした事は本当に反省してます。私、やり直したいんです!!でも、店長の言うとおり信用してもらえなくて・・・私も店長しか頼る人がいないんです、どうかここで働かせてください!!お願いします!!」

「まったく、いい度胸じゃないの。」

ひげ店長は呆れている。

「コヤマ君のお父様が大変なのは分ったわ。お暇をくださいっていうのは了解した。でも犬までよろしくってどうなのよ?それどうなの?」

コヤマはひげ店長に、父親が倒れて大変だと嘘をついていた。間違っても狐の長が緊急招集なので、店を辞めなければいけないとは言えない。心がチクチクと痛んだ。スミマセン、店長。

「・・・・・」

あぁ、店長もダメなんだろうか・・・。

コヤマは床に手をついて、頭をさらにさげる。

「あいつを・・・助けてやってください・・・。連れて行けれるなら、オレだって離れたくないんだ・・・お願いします・・・・お願いします・・・・」

コヤマは泣いていた。自分の不甲斐なさが悔しい。友一人助けられないのだろうか・・・

「ちょっ。コヤマ君・・・」

はぁぁぁぁとひげ店長がおおきなため息をつく。

「はぁ、もう!解ったわよ!コヤマ君、あなたが帰ってくるまでだからね!」

ー!!!-

「店長・・・ありがとうございます!ありがとうございます!!」

「早く、立ち上がりなさい。ほら、茜、あんたの初の仕事は外に繫いでるセバスのお散歩よ。」

「えっ、雇ってもらえるの!?」

「朝は早いけど、遅刻なんてするんじゃないわよ。コヤマ君の穴を埋めてもらうから。そのつもりで、よろしく。」

「ありがとうございます!店長、一生懸命がんばります。」

コヤマは外に居るセバスを見た。

よかったな、セバス。ほんとうによかったな、セバス。

寂しくなるけど、でも必ず帰ってくるから。

どんなに遅くなって必ず・・・。

その前に、オマエと一緒に行きたい所があるんだ。お別れは、その後だよ、セバス。


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