コンビニのキツネヤマさん
川沿いの土手は道沿いには桜、なだらかな斜面には芝が植えてある。
子供達が、ダンボールスキーをする楽しげな笑い声が、向こうの方から聞こえた。
「コーヤーマーさーん」
清晴が、芝に寝そべるコヤマに声をかけた。
「ここにいたんですか~」
土手の上の道から清晴が近づいてきた。
「なんで、そんなうつ伏せに寝てるんです?ここで寝るなら仰向けでしょ?」
「・・・」
コヤマは顔を清晴に向けたが、すぐに下を向いた。
「天気はいいのに。その格好じゃ、行き倒れてバッタリってカンジですよ?」
清晴は笑いながら隣に座る。
コヤマは思った。自然界の中じゃ、逆に腹出して寝てる方が有り得ないんだけどな。
「いいんだよ。天道虫の観察は、仰向けじゃできない。」
「まったく。天道虫なんていないじゃないですか。」
「さっき飛んでいった。」
「コヤマさん、元気ないですね。そんなに天道虫が飛んでいったのが悲しかったんですか?」
「そうかな・・・」
「そこは、突っ込むところです。元気がないなら、そうだな~、仕方ないな~」
チラチラとにやけながらコヤマを見ている。清晴は見ただけで解る位浮かれている。
「それじゃあ、コヤマさんが気になってた恋バナでもします?」
「今は・・・いい」
コヤマの声なんて聞こえていない。
「今日、僕ね、あの子と手を繫いじゃったんですよ!」
いつもより一段と声が上ずっている。清晴は頬は緩んでニヤニヤしっぱなしだ。
なかなか人の子は積極的なようだ。
「僕、一生この手は洗わないです!」
「んー」
「なんですか、その薄い反応は~。もっとすごいなとか言ってくれてもいいのに。」
「スゴイナー」
「棒読み。もういいですよ。はぁ、彼女と踊れてよかったなぁ。本番も踊れたらいいな!」
「なんの話?」
「体育祭の練習があったんですよ。種目にはダンスがあって、男女ペアで順番に交代しながら踊るんです!」
「なんだ。ただ単にたまたま順番で一緒に踊っただけか。」
「まぁ、今日はタマタマなんですけど。体育祭が終った後、フィナーレみたいなカンジでダンスがあるんですよ。その時は、男子が好きな女子にダンスを誘うのが我が校の伝統なんで!その時は必ずや、あの子にダンスを申し込みます!」
清晴は、玉砕など恐れてないようだ。
その潔さがコヤマには、羨ましかった。
「で。清晴はその話をしにきたのかい?」
「あ。違います。今度、釣りにいきませんか?っていうお誘いです。」
気分転換にはいいかも知れない。コヤマは清晴と次の日曜日釣りに出かけることにした。




