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コンビニのキツネヤマさん

その日、コヤマは町の外れにある公園にいた。

特別便が来ていたのだ。

コヤマの両親からの手紙だ。

コヤマの両親は狐だ。でも人の姿に化けることが出来ない。

当然、手紙を書くなんて事は不可能なので鳥たちに頼むのだ。

契約さえ結べれば、鳥の種類は問わない。

コヤマの契約の相手はシジュウカラだった。


「シンへ

シンが、人間界へ行って随分たちました。

元気にしていますか?

寂しくて泣いてはいませんか?

困ったことは、ないですか?

人として生きていくのが辛かったら、いつでも戻っておいで。

私達は、何があってもお前の味方だからね。

くれぐれも身体に気をつけて。

追伸:お父さんとお母さんと兄弟姉妹達はみな元気です。」


“以上、伝言は伝えたからな。”

「あぁ、ありがとう。助かったよ。ほら、木の実。どうぞ。」

“もうちょっと配達運賃値上げできないかなぁ”

「なに?これ以上まだ要求するの?」

“餌事情がね、あまり思わしくないわけよ”

「君は、狐の上前はねるわけだね。たいしたもんだ。」

コヤマは他にも来ていた配達鳥の仲間にも餌を与えた。

“この人は大丈夫だから”

配達鳥の一言で、わーっと集まった。

シジュウカラはコヤマの腕やら、肩やらに乗っている。

「頼むから、そこで糞はしないでよ。」

“そういえば、なにやらお前んとこの棟梁が人間界で動いてるって話だぞ。里が少し騒がしくなってるな”

「明主様か。一度戻って来いと言われてる。人間界に永住するパス、オレ持ってないんだ。」

“そうか。”

「更新する為にも、一度里へ行かなきゃ行けないな。」

“それとは別に近々召集がかかると思うぞ。いつでも行ける様に用意しといた方がいいな。”

「・・・ふぅん。そうか・・・。」

“お前、人間界に永住を考えてるのか?”

「まだはっきりとは決めてないんだけど。最初は、3ヶ月でいいと思ってたんだけど・・・。こっちへ来てもう半年になるな。」

“月日が過ぎるのは早いぞ。どっちにしても後悔しない選択をしろよ”

「あぁ、色々と情報をくれてありがとう。」

“さて、腹いっぱいになったし、俺たちは行くよ。あそこでお前の事を見てる人間もいるから”

「!!」

ドックンと心臓が跳ねる。そのまま止まるかと思ったら今度は勢いよくバクバクと動きだした。

シジュウカラ達は、一斉に飛び立った。


配達人の言われた方向を見ると薫がいた。

彼女は往診の帰りだったのだ。

公園を見ると、鳥に囲まれた人がいた。

すごく絵にになる風景だったので、ずっと見ていたのだ。


いつからいたのだろう。人の姿をしていると、どうも野生の勘が鈍る。

「・・・・」

薫は何も言わなかった。

鳥とコヤマの姿が幻想的だったからだ。

近寄り、声を掛けたのはコヤマの方だった。

「こんにちは・・・」

ようやく我にかえったのか

「こんにちは。」

と返してくれた。

「不思議な魅力があるのね。鳥とも仲良しなんだ。」

「いえ、あれは、ビジネスパー・・・・」

ビジネスパートナーと言おうとして思いとどまった。

シジュウカラがくれた好印象をわざわざ崩すこともない。

「えぇ、とても。鳥たちと戯れるのは楽しいです。」

相変わらず心臓はバクバクとうるさかったけど、それ以上に彼女が話しかけてくれるのが嬉しい。

コヤマはにっこりと笑った。



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