コンビニのキツネヤマさん
コヤマとセバスは、雨上がりの国道を歩いていた。
コヤマの目は虚ろで、魂はここにあらずだ。
「おいおい、オマエの病気、ステップ踏まずに末期症状じゃないか。大丈夫か?」
「なぁセバス、この前さ、オレにこの症状、浮かれ熱タンゴ病っていってたじゃない。」
「あぁ。浮かれ熱踊り病な。」
「これさ。恋の病なんだってさ。」
「はぁん?恋って・・・狐が・・・人間にか??」
セバスは驚いて、コヤマを見上げる。
「店長が言ってた。」
コヤマは、髪をかきあげた。風が優しく頬をなぞる。
元気がないのはそのせいか。
「・・・ふぅん。」
セバスは何も言えなかった。
橋の上に少年が立っていた。
「すみません。あなたは、コンビニのキツネヤマさんですか?」
すれ違い様、声をかけてきた。
「ー・・狐山と書いて、コヤマと読みますが・・・」
少年が、ふっと目を細めた。
「そう、あなたが・・・憑きの・・・あなたに用事があったんです。ここじゃなんなんで、あの神社で話しませんか?」
少年に連れられ、コヤマとセバスは近くの神社までやってきた。
「コヤマさん、3人の男の子をご存知ではないですか?佐山、川上、多嶋といって僕の家の近所に住んでいる小学生です。」
コヤマの顔は、まだぼんやりしている。
「3人が僕に狐に憑かれた人がいると言ってたんです。」
“おいおい。あの3人のガキは、この兄ちゃんに話してたのかよ”
セバスは焦ってきた。
「僕も最初は気にしませんでした。よくある悪ふざけだと思ったんです。しかしあんまり真剣に話すものだから、これは本当なんじゃないかと思いました。」
ここで少年は、じっとコヤマを見据える。
「だが、ある日を堺に、そんなものは見てないと言うんです。その様子が少し怪しいので、僕は直接あなたに真実を問いただそうと思いましてね。」
「で。君はオレを見てどう思ったんだ?」
コヤマは落ち着いている。
「あなたが、狐に憑かれているのは間違いありません!その虚ろな瞳が動かぬ証拠だ!!」
少年はそう言って、ビシッとコヤマを指差した。
「僕の曾お爺さんは陰陽師の弟子の従兄弟でした。」
“弟子の従兄弟かよ!!頼りねぇなぁ・・・”
「あなたから、狐をとりはらってみせる!!」
少年は、印を結び、なにやら呪文を唱え始める。
足元から怪しげな紫のオーラーが出る。
“!!”
見ると、彼らのいるところには大きな円陣が書かれていた。
“運が悪いと悪魔が召還されそうだな”
「・・・」
コヤマは、それでも動じない。
「えい!!」
少年は手刀を振り下ろした。




