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極道エルフ ~墨田抗争録~  作者: 英 慈尊


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決着

 リュウカの全体重に加え、発勁によって生じる力すら加わった一撃。


「ガフッ……」


 それは確かに、魔界衆の末裔へ甚大なダメージを与えた。

 そもそも、脚部というのは人体で最も強大な力を秘めた箇所であり、当然ながらそれはエルフにも適用される。


 ましてや、蹲踞(そんきょ)じみた大股開きの体勢であっても、ベイゴマのごとく俊敏に地を舞えるリュウカなのだ。

 足腰と足指に秘められた力は、体重の軽さを加味しても尋常なものではない。

 これを余すことなく突き刺す直線軌道の蹴りなのだから、自動車のフロントガラスくらいは粉砕できる威力があると見てよいだろう。


「グッ……!」


 これまで攻勢一辺倒だったリーが、初めて大きく後退する。


「ガボッ……」


 いや、それだけでなく、口から唾液と血液……さらに胃液も混じったものを吐き出した。

 今の一撃により、内臓を深く傷つけられたことは明らかだ。


「ハァー……ハァー……」


 その証拠に肩は上がっており、表情からも余裕の笑みが消え失せているのであった。

 正直な話、気を失わなかっただけでも見事なものである。


「どうする……?

 ここで降参するか、それとも、最後まで戦い抜くか?」


 再び右膝を折り曲げ、片足立ちの姿勢となったリュウカが最後通牒を告げた。

 どちらにせよ、このリーという男が捕縛される未来は決定している。

 ゆえに、ここで問うているのは最後まで戦士として戦い抜くかという覚悟だ。


 だが、相手は魔界衆の末裔であり、極道エルフが決闘用の構え(スタイル)――獄蝗(ホッパー)を使用したほどの相手である。

 あくまでも形式上の話であり、答えなど聞くまでもなかった。


「ハハハ!

 いちいち癇に障る野郎だヨ!」


 やはりというべきだろう……リーは嘴じみた形に固めた両手を突き出し、爪先立ちの構えとなったのだ。


「その覚悟、極道エルフの名においてしかと受け止めた」


 口を大きく開いた笑みとなり、リュウカが告げる。


「じゃがのう……。

 わしは、野郎ではない。

 うら若き乙女を野郎呼ばわりしたことは、お嬢誘拐の仕置きに上乗せさせてもらうとしようか!」


「抜かセ! 300歳超えのババアガ!」


 極道エルフと島原魔界衆の末裔が、視線を交差させた。

 そして、次の瞬間……最後の攻防が始まったのだ。


「――シュウッ!」


 またも、爆発的な踏み込みによってリュウカが瞬間移動じみた移動を見せる。

 通常のそれと異なり、使っているのが左足一本であることを思えば、やはり常人離れした動きだ。


 では、ここから先と同様の攻防が繰り返されるのかといえば、そうではない。


「――フウウウウウッ」


 深い呼吸と共に、リーは内から外へ捌くように両手を構え直したのである。

 つまりは、剛ではなく柔による対処を選んだということ。

 リュウカの砲弾じみた蹴りが、添えられたリーの手により外側へと受け流された。

 無論、そのような真似をしようとも、超スピードで打ち込まれたローファーによりひどく手の甲を削られることになるわけだが、まともに受けるよりは遥かにマシである。


「――ハッ!」


 一瞬、リーの顔に浮かんだのは喜色。

 渾身の一撃を受け流すことに成功したという事実が、彼へ勝ち筋を見い出させたのだ。

 難点があるとすれば、リュウカが放ったのは、渾身の一撃ではなかったという真実。


「――りゃあああああっ!」


 なんという関節の柔軟さ。

 そして、これを左足一本で支える脚力よ。

 リュウカは外側へいなされた右足を直ちに自分のもとへ戻し、そこから再度の蹴りを放ったのである。

 通常、このような動きをすれば腰の入らぬ腑抜けた蹴りとなるところであるが、そうならないのが極道エルフの技の冴え。


「――オブッ!?」


 予想外に早かった追撃は、ガードも受け流しも許さずリーの顔面を踏み潰す。


「――グッ!? ウボッ!?」


 しかも、再度の蹴りはただ一発で収まらない。

 何度も何度も繰り返し引き戻され、連撃としてリーの各所を突き刺したのだ。

 そのいずれもが、人体の急所!


「――はあっ!」


「――グウオッ!?」


 最後、みぞおちに放った一撃が、リーの体を突き飛ばす。

 背中からモルタルの床に倒れたリーは――動かない。

 決着がついたのだ。


「ふうううううっ……」


 敵を倒したリュウカが、獄蝗(ホッパー)の構えでこちらを見据えた。

 無論、その瞳が捉えるのはもう一人の誘拐犯である浦井だ。


「ヒカリちゃんを人質にして粘ったりしてもいいけど……やめた。

 せいぜい、温情的な措置を期待するわ」


 その浦井が見せた反応は、あっさりとしたもの。

 粘ったところで、逃げられる未来はあり得ないのだから、いっそ賢い決断であると言えるだろう。


「リュウカちゃん!」


「お嬢!」


 それを受けて駆け出したヒカリの体が、リュウカに受け止められる。

 こうして抱き着くのは、久しぶりのこと。

 肌で感じるリュウカの体温は、見た目同様、以前と寸分違わぬものであった。

 お読み頂きありがとうございます。

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