第7章 会長のとある悩み
こんにちは。 さて、今回で8回目の投稿となるわけですが、どうやら皆さんにご満足いただけていないようです。 話の展開の仕方や登場人物など、さまざまなところに問題があるのかもしれません。 簡潔に申し上げますと、失敗したということになります。 そこで私は、失敗作をこのまま書き続けるのか、それとも失敗してしまったのだから、無駄な執筆をこれ以上避け、別の作品に力を注ぐべきか悩みました。 ソリデュスという作品で前回失敗したこともありましたし、私自身、物語を途中で終わらせてしまうのは、もったいないという気があるのですが、信条よりも大切なものは、読者の皆様に読んでいただき、楽しんでいただくことであると思います。 しかしながら今回の作品においては、楽しんでいただけるはずの展開にしていたにも関わらず、ご満足いただけていないようです。 そのため本作品を中身のない小説だと私は判断し、大変申し訳ございませんが、(あくまで私の主観ですので、お読みいただいている方への侮辱ではございません。ご安心ください。)執筆を中止させていただきます。 したがってしばらくの間は残しておきますが、めどが立ち次第、本作品を消去する予定です。
その代わりとして、時間はかかりますが新たな小説の枠組み作りに着手していくつもりです。どうすれば読んでいて面白くなるのかを徹底的に考えていくつもりです。本作品をお読みになってくださった方々にはひたすら感謝の意と、お詫びを申し上げます。よろしければ、今後もカーレンベルクの応援をぜひともお願いいたします。
隆平は彼女を止めると生徒会長の前に出た。
「お願いします。」
「ちょっと隆平。 やめなさいよ! こんなやつに!」
頭を下げる隆平を見て、夕華は会長をにらみつける。
あの日の教師を見るような目で。
「この間冗談を言われた時は驚いたが、君は彼女と違って少しは骨がありそうだな。 いいだろう。」
それが人にものを頼む態度かと言われそうだったが、会長は夕華を相手にすらしていなかったようだ。
そのおかげでというわけでもないが、会長の口から信じられない言葉が出た。
ただし条件付きでという一言も一緒にだったが、一筋の光がさしたことには変わりない。
「なんだよ、条件って。 会長をナンパすりゃいいのか?」
「お前はホモか!」
荒山は潮田に数発頭を殴られた。
「れんちゃんは、ホモ・サピエンスなのですか?」
「ちげーよ! あと、『れんちゃん』ってなんだよ! 賭博に出てきそうな呼び方だな。」
「れんちゃんはれんちゃんです。 いやなら、連牙刃衝空裂破! もありますが…」
律花はそう言って真顔で技名を叫び、太極拳のような構えをしている。
「前者と後者のギャップが激しすぎだわ、って今それどころじゃないでしょ。」
夕華は話をもとにもどそうと、とりあえず怒りの感情は置いておくことにして会長にたずねた。
「で? その条件って何なんですか?」
「うむ。 見てほしいものがある。」
会長は一度だけせき払いをすると、机の中から一枚の図を取り出した。
「これって…」
「そう。 学校の全部活動名と、各部の状況をまとめた表だ。 そして君らにはここに注目してもらいたい。」
道谷の指の先には、 ― 理工学部、部員数1 ― と書かれていた。
「まさか僕たちにこの部に入れと言いたいのかい?」
「そうじゃない。 そうじゃないが、ただ…」
珍しいことに、周囲から恐れられているはずの会長がうなって何かを考えていた。
一体、この部のどこに良くない点があるのだろうか?
「ここには、その、一言で言えば変な奴がいる。 本来ならば理工学部は去年の夏に廃部になっているはずだったんだ。 あいつさえいなければ!」
次第に会長は怒りをありありと思い起こさせて机に手をついた。
「私たちにどうして欲しいの?」
「無論だ。 この私が、どれだけ規律を重んじる人間か分かるだろう。 そこの部室に居座り続ける変な奴を追い払え。 もしそれができたら、代わりにそいつの使っていた部室を君たちに譲ろう。 これで文句はないか?」
「それはいいけどよ。 変な奴って、一体誰だ? ビームを吐いたりするのか?」
「吐くわけないでしょ!」
夕華は思い切り荒山の髪を引っ張った。
「痛え! てめえ女だろう? 髪はもうちっと大事にしろよ。」
「お前はどうなんだよロン毛。」
潮田の言うとおり、男で髪を大切にするやつも珍しかった。
「れんちゃんの髪はロンギヌスの槍でできているのですか?」
「んなわけあるか! っていうか律花。 なんで無駄にヘビー級な知識ばっかりあんだよ。 少しは常識ってものをだな。」
「そこまでだ。」
会長がポンポンと手を叩いてその場を鎮めた。
「常識がないのは君ら全員だ。 こんなところで騒ぎ立てるもんじゃない。 場所を考えろ。 後は、実際にそいつを見た方が早い。 いいな。」
そして分かったらさっさと出ていくようにと会長は言った。
「会長。」
「なんだ木島君。 まだ言い残したことがあるのか?」
「実は今会長自身、『ひゃっほーーーう今日もあの駄菓子屋でガチャガチャ千回やってやるぜーっ! 巫女さんフィギュア当てるぜーーっ!』って思ってません?」
「…。」
殴られた。
理工学部の部室は理科室の横にくっついて、隠れ家のように小さな薄汚れたドアがその気味悪い存在を物語っていた。
「確かにここにあるとは聞いたが…」
荒山は理工学部の部室を前にして、とんでもないところに来てしまったと身を縮めるようにして肩をこわばらせた。
「それにしても、本当に変な奴が出てきそうなところだな。」
潮田は周りを落ち着いた様子で見渡し、古ぼけた茶色い棚の中にあるアルコールランプをとった。
手で触ると、触れた部分にくっきりと指の跡が残るほどひどくほこりがたまっていた。
「あんた、よく平気ね。 律花ちゃん、大丈夫?」
夕華が不安そうなおどおどとした調子で潮田の後ろに隠れながら言った。
「心配いりません。 それよりもまずは自分を心配すべきではないのですか? ゆーちゃんは今すぐにアトラスを召喚すべきです。」
アトラスを召喚することは不可能だが、とにかく進んでみないことには始まらない。
覚悟を決めたのか、くもったスモークガラスのそばにあった鍵をとり、隆平はドアにさしてみる。
錠前のはずれる音がした。
「開いたの?」
「ああ。 僕が先に入るから、待ってて。」
「気をつけてね隆平。 危なくなったら出てきてよ。」
「心配ないさ。」
ガッツポーズをとる隆平は夕華に見送られて中に入った、その時…
「ハーハッハッハッハッハッハー!」
聞いたことのない中年の男の声が、理科室のスピーカーから流れてきた。
「なんだ? 一体何が始まるってんだ。」
そこにいた全員があとずさりして警戒する。
「隆平!」
夕華はそのとき恐怖を忘れて彼のもとへと走り、ドアを開けた。
中は以外と広く、奥にはさらにもう一つ小部屋があるようだ。
「フハハハハハハハハ! こっちだよ夕華!」
「誰? どうして私の名前を?」
「去年の英語の中間テストは五点だったよ!」
「って、それってここで言うセリフ?」
彼女は悪寒を感じて引き返そうとしたが、今は隆平を助けなくてはいけない。
「隆平、出てきて! いるんでしょ?」
だがいくら呼んでも返事はない。
彼は必死に隆平を探したが…
「お前かああああああ!」
いた。
彼は部屋のそばにあったテーブルの下に隠れて無線で声色を変えていた。
「痛っ! わかった、わかったからやめてよ久野さん。」
「もう! 本当に心配したのよ? わかってんの?」
彼女はしばらく彼に当たっていたが、駆け付けた仲間に抑えられた。
「何事かと来てみれば、隆平。 この学校でお前ほど人騒がせなやつはいないんじゃねえのか?」
潮田はあきれ返って彼の無線機を手にとった。
だが、手に取ってみて彼のものではないことはすぐにわかった。
「確かに使ったのは僕だけど、まだ誰がいるかは突きとめていないよ。 鍵がかかっていたってことは留守か、あるいは職員がいるのに気づかず、鍵を閉めてしまったかだ。」
言われてみれば、床のいたるところに備蓄されたインスタント食品や、理工学部らしく、一通りの電化製品はそろっていた。
「いるのか、そこに…」
潮田は奥にあるもう一つの小部屋に目を向けた。