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2.就職先は必ずしも永久就職でなくてもいいので

見た目王子の自称魔王から、えっと、今私プロポーズ···されてるの?


仕事を紹介して欲しいとは言ったが永久就職出来る相手を紹介して欲しいと言ったわけでは決してないんですけども···っ!?


想定外の出来事に思わず生唾をごくりと飲むが、緊張感なんて全くない様子のフィルは、やれやれという感じで話し出す。


「僕の魔力も落ち着いて今ではすっかり制御出来るようになったからさ、一人は寂しいから最近町でお嫁さん探ししてたんだよね」


「はぁ···」

そんなフィルに、なんとも言えない返事しか返せないのは決して先程のプロポーズが“誰でも良かったから”だと気付いたからではない。

数打ちゃ当たる精神を別に否定はしてないしね

!うん!


「そしたら、僕の顔を覚えていたのか仕返しにきたと勘違いされて攻撃されてさぁ」


えへへ、と笑うフィルは全く悪びれる様子なんて欠片もなくて。

というか、まさか。


「さすがに殺されたくはないから返り討ちにしたら、魔王認定されちゃって!君が召喚されたんだよね」


「アンタが原因かいっ!」


そういや魔王を倒すために喚ばれたって言われた気するわ!

言ったのフィルだけど!



「はみ出しもの同士で相性いいよ、お嫁さんになって?」

くそ、顔がいい。

でも、だからハイそーですか、とはならない···!



「クロちゃんもここに落ち着いてるし、この子使い魔とか認識されてて町に連れてくと危ないよ?」

「くっ···!」


クロを引き合いに出されると弱い。



「ね、僕子供いっぱい欲しい」

「は!?こ、子供!?」

「ずっと一人で寂しかったんだ」


フィルが指をパチンと鳴らすと、自動で猫じゃらしが動き出した。

窓の近くには猫用のベッドが現れる。


魔法すごいな。思わず感心し目を奪われた隙に後ろからフィルに抱き締められ····てたまるかッッ!


「子供は相思相愛の相手と作りなさい!」

ビシッと人差し指をフィルの顔面に向けてそう断言をする。


最初にも言ったが私は就職先を求めているのであって永久就職したい訳ではないのだ。

それにこの自称魔王、とにかく顔がいい。


恋愛免疫のない私のパーソナルスペースにぐいぐい来られるとうっかり永久就職もいいななんて思いかねない上に、相手は一人が寂しいから嫁を探しているだけで、決して私の事を好きだからではないのだ。


始まる前からそんな割り切った夫婦なんてまっぴらごめんである。



「えっと、それってつまり、リナに好きになって貰えればいいってことだよね?」

「へ?」


そう言ったフィルはやたらとキラキラな笑顔を向けてきて。


「じゃあ、リナが僕のことを好きになってくれるように、頑張るよ!だからこれからよろしくねっ」


と、言い切ってきた。


「え、えぇっ?ちょっ、そうじゃないわ!子供とかは愛し合っている二人のその先に出来るものっていうことが言いたくてっ」

「?」


あぁあ、キョトンとした顔も様になるぅ···!


「それってリナが僕のことを好きになってくれて、相思相愛になることとどう違うの?」

「え?えっと、だからその···」


フィルと私が、例えばその、万が一、万が一よ?この先相思相愛になることがあったとして···確かにそうなればおかしくはない、の、か?


思わず言いくるめられそうになり、すぐに頭を振ってリセットする。


「そもそも全然違う!私がその、いつかフィルのことを好きになったとしても、フィルが私を好きじゃなかったら相思相愛とは言えないもの!」

そう、ここ一番大事!


「僕はリナ好きだよ?」

「だからっ、それは初めて怖がられずに話せるとかなんかそういう色々な理由から来るものであって、その、こっ、恋い焦がれるみたいなのとは違うの!とにかく違うの!!」

分かりやすく言えば雛鳥の刷り込みに近いだけで、いつかフィルを怖がらない女の子だって現れる···というか、転移が出来るんだからフィルの事を知らない全然違う国とかに行けば、この王子様フェイスでイチコロである。


寂しさから来るもの拒まずで無自覚にハーレムなんぞを作られたら···


そんなことを想像し、ぞわっと寒気がした。

だって私は、この世界の何もかもを知らないのだ。

もしかしたら一夫多妻制かもしれないし。


純日本人としてこの年まで生きてきた身としては、やはり一夫一妻が希望だし、そもそも何も知らないうちにそんな大事なことを決められる訳もない。



「恋い焦がれる···かぁ」

そう呟くフィルを見ながら、どうするのが正解かを考える。

お嫁さんなんてもの初対面の相手に即断即決なんてもちろん出来ないが、でも頼れるのはフィルだけというのも事実な訳で···



「わかったわ」

「リナ?」


少し考え、日本にいた時にあった実際の職業をひとつ思い浮かべた。


「私が、フィルの結婚アドバイザーになってあげる!!」

「は?」


碧色のきれいな瞳を目一杯広げてポカンとするフィルに、ドヤッと笑顔を向けた。



ちなみに余談だが、私の元々の職業はただの経理事務であって結婚どころか何一つアドバイスするような仕事ではないし、それどころかクロが可愛すぎて恋人はまさしくクロ状態だったので友達に対するアドバイスすらしたことはないのだがーーー····

まぁ、そこはフィルの顔面力でなんとか出来ると信じてる。



「一緒に最高のお嫁さんを探すわよ!」

「えっ、えーっと、え?リナがなってくれたらそれで···」

「探すわよ!!」

「えぇ~っ?」


明らかに困惑しているフィルには気付かないフリでここぞとばかりに話を進める。

まずは雇用契約をつめなくてはね!!

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