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18.それは新しい明日に向けて

「ね、フィル、せっかくだからドーンと花火みたいなのあげれないかしら」

「はなび?」


私が願うのが早いとはわかっているが、花火は火薬だ。

願いが誤作動してとんでもない規模で爆発でもしたらと思うと、ちょっと怖くて出来ない···が、せっかくの新たなスタートだからと何かしたくて提案する。


しかし、どうやらこの世界には花火は無かったようで。


「えーっと、火薬がパーン!って空にね?」

「つまり大砲?」

「いやいやいや、空で弾けるの!」

「ここの人達を一気に殲滅···?」

「そうじゃないそうじゃない!!こう、花やかなね!?」


なんとか伝えようと説明すればするほど、何故か恐ろしい結末に向かっていく会話に思わず焦る。


こういうとこだぞ!自称魔王!! 



「リナさぁん!フィルさぁん!どうしたんですか~!?」


ここぞとばかりに両手に料理を持ったテオールさんが遠くで手を振っている。

開き直ったのか、元々こうだったのかはわからないが、あの時崖から飛び降りようとしていた面影はもうなくて安心した。



「テオールさんの新たなスタートを祝うように、空に花を咲かせたいの、こう、パーンって広がってとてもキレイな感じの!」


口だけではダメだと、私も恥を忍んで全身で表現する。

そのお陰か、なんとなくフィルの魔王ターンから軌道修正されたようで。


「お祝いの花が降って、テオールさんを視覚的にも楽しませたいって事?」

「そう!!」

「でも、火薬が花になるの···?」

「えっと、火薬は確か配合で色んな色に出来た···んだったような?」

「つまりカラフルな花が降れば正解?」

「正解!!」


空を見上げて、少し考え込む様子のフィルを必死に見つめる。


そんな私の視線を感じたのか、すぐにこちらを見てふわりとフィルが微笑んだ。


「···うん、出来ると思うよ」

「ほんとっ!?」


出来ると言ってくれたフィルの笑顔が穏やかだったので安心してテオールさんの元へ駆け寄った。

あの穏やかな笑顔で怪我人が出るようなことはない···と信じる。



「テオールさんっ!」

「あ、リナさん、これ凄く美味しくて···」


私の分も取ってくれようとしたテオールそんの手をそっと止め、空を指差す。



「テオールさんに誰よりも幸せが訪れますようにっ!」


私の言葉に合わせてフィルが指をパチンと鳴らすと、空からぶわっと色とりどりの花が降ってきた。


「わ、キレイ···!」


それは私が知っている花火とは違ったが、ふわふわと降り注ぐ可愛い花達はとても幻想的で。



「はい、リナ」


降り注ぐ花を一輪掴み、そっとフィルが私の髪に挿してくれる。

それがとてもくすぐったくて、でも嬉しかった。


「凄い、二人とも、本当に本当にありがとうございます···っ」

「私も、ありがとう、テオールさんっ」


テオールさんの近くに降り注ぐ幻想的な花を見て周りのお客さんからも歓声が上がった。


思ったより大規模な魔法になってしまい、誰かから嫌悪や恐怖を向けられたらと一瞬身構えたが、結婚式という雰囲気のお陰か、それともとても美しい光景だったからか拍手してくれる人もいた。




「テオールさんはこれからどうするの?」

「男名しかつけてくれないような両親ですけど、それでも私の親ですしこれからもここで暮らします」

「そう···」

「やっぱりこの村が私の生まれた村だから···。それに、いざという時は一人暮らししてもいいですしね!」


力強く笑うテオールさんに、私達も頷いて返事をする。


「また遊びに来てくださいね」

「テオールさんも、いつか私達の家に招待するわ!」

「呼んでくれたら聞こえるから、困ったことがあったらいつでも呼んでね~!」

「え、どういう仕組みで聞こえるの!?」


フィルの相変わらずさに少し驚くが、テオールさんはそんな私達のやり取りが面白かったのかにこにこ笑ってくれていた。



たった2日、それでもなんだか濃厚な2日。


この世界に来て、時には恐れられ、時には守られ、そして対等な友達も出来た。



フィルの結婚アドバイザーとしてはまだ何の成果もないものの、それでも穏やかで幸せな日常だ。



「リナ、帰ろうか」


差し出されたフィルの手を何の疑問も持たず自然と取る。

いつからかそれが日常になりつつあって。



そしてこの当たり前の日常を手放す日が来るかもしれないと一瞬頭を過り、すぐに振って誤魔化した。


「そうね、私達の家に帰りましょ!」








そんな私達をじっと見ている目があったことに、その時の私は気付かなかった。


「花が、あんなに大量に降るなんてあり得ない···そんな魔法が使えるなんておかしい···」


落ちた花を拾い、まじまじと見つめたその男はゴクリと唾を飲み込む。




「花は···生きている、無から生物を創造出来るなんて···こんなの、神の力じゃないか···」

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