12.解釈はひとつとは限らないけど
震えるカリーナさんを見て思わずフィルの服をぎゅっと握りしめる。
恐怖を向けられるのってこういう気持ちなのか。
“またフィルにこんな目を向けさせてしまった···
”
そう思ったら掴まずにはいられなかったのだ。
だけど。
「······ばかっ!!!」
その声と共に体当たりのような強い衝撃を受け慌てて声の方を向くと、泣きながら私とフィルを抱き締めているカリーナさんがそこにいた。
「え···と、カリーナさん···?」
「ばかばかばか!!なんであんな事言ったのよ!あなた達二人ともこれから危険な目に合うかもしれないのに!!なんで!!」
震えるその声には、私達に対する恐怖や嫌悪は感じなくて、そっとフィルの方に顔を向けるとフィルもぽかんとしていた。
「僕達が怖く···ないんですか?」
「助けてくれた恩人を怖いと思うわけないでしょう?」
「魔力反応は私のものだったはずで、カリーナさんはむしろ巻き込まれたんですっ」
それに私を庇おうと魔女として名乗り出てくれたのはカリーナさんの方で。
慌ててそう伝えるが。
「それでも、よ。結果的に助けてくるたのは二人よ」
そう言って抱き締める腕を強くした。
抱き締められている腕の強さや温かさが心地よく、私達を心配してくれているカリーナさんの気持ちが嬉しくて思わず顔が綻んでしまう。
ぽかんとしていたフィルもその表情を柔らかくしていて。
ーーそれはフィルが、初めて“魔力の恐怖”を知っている人から“受け入れられた”瞬間でもあった。
「もしかしたら今日の事で追われたりするかもしれない。私に何が出来るかはわからないけど、困った事があったらいつでも言ってね」
そう力強く言ってくれたカリーナさんに、私達もお礼を言う。
「魔王一行なんで、こっそり伺わせていただきますね」
そう笑いながら言うと、カリーナさんも小さく吹き出しながら「裏口を開けておくわ」と答えてくれた。
万が一人数を増やして乗り込まれた時、カリーナさんと仲良くしているところを見られたら面倒な事になる。
“でもフィルの魔力も受け入れてくれて、私を庇ってくれようとする優しさも強さもあって···”
かなりお嫁さん候補としていいのでは?とホクホクしながら、とりあえず今日はもう帰ろうとした時だった。
「次は二人の赤ちゃんも連れてきてね」
と、とんでもない爆弾を投げられ思わず振り返る。
「あ、赤ちゃん!?」
思わずそう繰り返した私にきょとんとしたカリーナさんは。
「え、だって···リナの事嫁って言ってたじゃない」
とあっさり言われ一気に顔が赤くなる。
確かに言われた、けどあれは魔王様タイムの戯れ言というか···!!
というか私的にはカリーナさんがお嫁さんになるのアリだなと思ってるというか!
言いたい事がありすぎて逆に言葉にならずにぱくぱくしてしまった私に代わり、フィルがにこやかに
「実は今頑張って口説いてる途中なんですよ~」
なんて返答してしまって。
待って!そんなこと言っちゃったら···!
更に顔を赤くしてフィルとカリーナさんを交互に見る。
そんな私の様子を微笑ましそうに見たカリーナさんは。
「とてもお似合いだわ!頑張ってね、フィル君!」
と、応援されてしまう。
今更お嫁さん候補は私ではなく貴女です、なんて言えなくなり、赤い顔を隠すように足元に目線を落とした。
「また遊びに来ますね、こっそりと!」
「えぇ、待ってるわ」
「カリーナさんもお元気で」
転移の時のお約束とばかりに手を繋ぎ、カリーナさんに手を振って。
そして気付くとそこはもう私達の家の中だった。
気配を察知してクロがにゃぁんとお出迎えに来てくれて。
「ほんっとにウチの子天使だわ!」
ぎゅっと抱き上げるとそのしなやかな柔らかさと、日向ぼっこをしていたのかぽかぽかな体をしていてホッとする。
カリーナさんの事は残念だったものの、それでもフィルが受け入れられたという事を思い出して嬉しくなる。
“まぁ、まだ始めたばっかりだしね···!”
温かな気持ちを胸に、私は改めて気合いを入れ直すのだった。
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カタン、と机に置かれたタロットをキレイに整えつつ一枚のカードを抜く。
開いたカードは二人を占った時のあのカードだ。
「運命の輪の正位置·····」
意味は、“運命の出会い”
小さく笑って、カードをまた戻す。
「お似合いね」
さっきまで居たその場所に目線を送り、楽しい未来を想像しながらお客さんを待つ。
願わくば、また元気な二人と楽しい時間を共有出来ますように。




