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幕間:抵抗と事実と絶望と

メアリさんには残念ながら運命の王子様が現れてしまったが、何事も最初から上手くなんていかないもの。

この世界に何人の人間がいて、女性の割合がどれくらいかはわからないが、フィルのお嫁さん探しはまだ始まったばかりなのだ。


「諦めるのはまだ早いわ!」

「えっと、それってもしかして···」

「フィルのお嫁さん探しの事よ!」


まだ何も成してはいないが、なんとなくドヤッと胸を張るとフィルが大きなため息を吐く。


「クロぉ、ご主人様が酷いんだ···」


ソファのクッションにもたれて寝ているクロにすり寄るようにして床に座り込んでいるフィルは、クロを撫でながら何か思い付いたかのように勢いよく振り向いた。


「リナ!僕のお嫁さんより、まずはクロのお嫁さんを探すのはどうかなっ!?こんなに可愛いクロの赤ちゃん絶対可愛いよっ」


まるで名案だと言わんばかりの満面の笑みのフィル。

そんなフィルに私も満面の笑みを返す。


「クロは去勢済みよ」

「きょ、せい···?」

「そう、絶対推奨かと言われれば場合にもよるけど、クロは去勢しました」

「そ、そんな、事って···」


絶望の表情に変わるフィルを見て、飼い猫の去勢手術は日本では珍しくはなかったがどうやらここでは違うようだと知る。


「く、クロ、僕が、僕がいつか無念を払うから、家族いっぱい作ってあげるからね···っ」

「ちょっとその家族ってどういう家族、まさか猫を沢山拾ってくるとかじゃないわよね!?猫は縄張り意識があって多頭飼いはそれなりに条件を揃えないと難しいのよ!?」


半泣きでクロのお腹に顔面を擦りつけるフィルに慌てて詰め寄る。


「だって寂しいかもしれないし···っ」


うるうる見上げられて毒気を抜かれ、まぁ私がしっかり見張っていれば大丈夫かな。なんて考えるが、その考えがまずフィルに毒されてるのかしら。



「じゃあ、クロの家族を増やすためにもフィルに最高のお嫁さん探さなきゃね!」

「えっ!結局ソコに戻っちゃうのっ!?」


なんて慌てるフィルに、思わずふふっと笑ってしまった。



気付いてないみたいだから教えないけど···

だってフィルも、すっかりクロの家族になったんだもの。



クロはひとりぼっちじゃない。

私もそしてフィルもいる。


そしてフィルも、もうひとりぼっちじゃないんだって早く気付きますように。


そう願いながら、今日の晩ご飯は何を作ろうかなとキッチンに向かったのだった。

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