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郷国の護り人  作者: 水花光里
19/23

海斗と静音結婚の儀

二人の結婚式始まりました。

 静音が部屋に入ると水花が待っていた。

 部屋の中は煌びやかな箪笥(たんす)や、大きな姿見などが並び、代々使われてきた花嫁の控室と言う感じでその豪華さに、静音は圧倒されてしまった。

 水花に勧められるまま、おずおずと部屋の中に進んだ。

 彼女は時雨さんの分身だったはずだから、時雨さんはどうしているのだろうか?

 私の分身を起動させて、今はまだ見守っていてくれるのだろうか?

「水花さん、よろしくお願いします。あの、時雨さんは、まだホテルにいるんですか?」

「はい。暫くは、静さんが問題なく動けるか、チェックしています。その後で儀式までに駆けつけるはずです」

 そうか、儀式には時雨さんも来てくれるんだ。

 皆がそろうのだと思うと何だか安心した。

 彼女は違和感なく静音の身代わりを静さんと呼んだ。確かにその方が言いやすいと思い、頷いた。

「私は、これから静さんに助けてもらうのね。感謝しています。ありがとう」

「いいえ、すべて私たちの仕事ですから、諏皇(すおう)の家が健やかにあることが、我々の望みです。ですので、当たりまえと思ってください」

「それでも、とても良くしてくれて嬉しいです」

「其れは良かったです。今日は(つつが)なく諏皇の奥方になっていただけますようお手伝いさせていただきます」


 単衣(ひとえ)の着物に着替え、部屋の外に出ると、海斗も白い単衣を身にまとい静音を待っていた。

 まるで、夜着のような装いだと思うと急に恥ずかしくなった。

 もしかして透けるんじゃないかと心配になった。

 静音のそんな戸惑いを分かっているかのように海斗はくすりと笑って手を差し出した。

「静音、行こう」

 静音は、その手に手を重ねて、覚悟を決める。

 泉の周りは大きな黒い岩で囲まれていたが、手前の回廊側には白い大理石の石段が泉の中につづいていた。

 手前にある白い大理石の階段を二人で降りて行った。

 中ほどまで進むと思ったより深い。肩くらいまでの深さがある。

 泉に見を浸し向かい合う。

 水は冷たくもなく、体温とそんなに変わらなく、心地よかったかった。

 体の疲れも、汚れもすべて洗い流してくれるような感覚に心が(いや)される。

 何にも知らない静音はただ心地よさだけを感じていたが、海斗は少しきんちょうしているようだった。

 海斗は泉の水を手ですくって、静音の頭の上から水をかける。

 何度か繰り返すと、静音の髪から、顔から水が流れ落ちた。

 そうしてから海斗は水に潜った。静音はびっくりして、足の力が抜けて水の中に座り込んでしまった。

 水の中で海斗と目が合うと彼は笑って静音を抱き寄せ唇を重ねた。

 水から顔を出してもそのまま求めるような口づけを続けた。

 しばらくして、「こほん」と大きな咳払いの声が聞こえた。

 静音は、はっと我に返り海斗から離れた。

 振り返ると、真っ白な神官の衣装を身に着けたハリが腕を組んで二人を見下ろしていた。

「なんだ?ハリ、そんなに急かさなくてもいいだろう」

「今日中に婚儀を済ませ入籍しなければなりませんので、後からでも十分まぐわえますので、今は先にお進みください」

「その時その時の楽しみと言うのがあるんだ。一瞬でも逃したくない」

「もう、十分でしょう。早く着替えて婚儀の儀式におすすみください」

「分かったよ」

「静音、さっきの部屋で着替えてきて支度できたら迎えに行くよ」

 薄い着物一枚で抱きしめられた、なまめかしい感触も消えないまま、てきぱきと、化粧と着付けを施され、気が付けば見事な打掛(うちかけ)を羽織った花嫁が出来上がっていた。

 神殿に続く泉に面した廊下を進みながら海斗に儀式のやり方について教わっただけで、静音は(おごそ)かな(いにしえ)から続くイザナギの神殿にいた。

 三三九度の盃を交わす儀式は、大中小の三つの盃に継がれた聖水を飲みかわす儀式である。

 まず、小の一の盃に注がれた聖水を海斗が飲み、同じ盃に注がれ、静音が飲み、又海斗が飲む。二の盃は、静音から海斗に、そして静音に、三の盃は又、海斗から始まる。

 銀色の柄杓(ひしゃく)で聖水を注ぐのは、やはり時雨の役目のようだ。

 小さな盃に、一滴二滴三滴と三回に分けて注ぐ。

 その盃にやはり三回口を付けて飲む。

 その間、ハリと颪が高砂やの祝詞(のりと)を唄っていた。

 三つ目の盃を海斗が飲み干して儀式は終わった。

 神官姿のハリが厳かに言い放った。

「これにて、お二人は夫婦としてイザナギに認められました。続いて、婚姻届けの署名(しょめい)をしていただきます」

 署名した婚姻届けは、今日中に役所に届けられる。

「先ほどはお邪魔をしていしまいましたが、ここからは、お二人だけの時間です。婚礼の夜を恙無(つつがな)くお過ごしいただけますよう、我々はこれにて失礼いたします」

「海斗様、静音様、ご結婚おめでとうございます」

 ハリ、時雨、颪の三人が声をそろえて言った。

「ありがとう」

「ありがとうございます」

 静音は、まだ結婚したという実感もないままにお礼を言った。

「とりあえず、静音、着替えてこよう」

 

 先ほどの部屋で白い夜着に着替え、水花に見送られて部屋を出ると海斗が待っていた。

 海斗に手を引かれて、泉の奥に進んだ。大きな木々が生い茂る先に中に入っていくと、源泉のあふれだす先に緑色の苔に覆われた大きな岩があった。

 ベッドの様に、二人横たわれるくらいは十分にある。

 海斗はそこに腰かけて静音を誘う。

「おいで…」

 ここなら、痛みを感じなくて済むと何時か、海斗から聞いたことのある場所だと静音は思い出していた。

 海斗の隣に座ると、苔はビロードのように滑らかな手触りで、上から流れ落ちる聖水にしっとりと濡れていた。

 冷たくはなく、心地いい暖かさが和ませてくれた。

「絶対に君を離さない。必ず幸せにするから、僕を受け入れてくれる?」

「うん…。皆で幸せになりたい。そして、私の全部で海斗を全力で守りたい」

「ありがとう。でも、今の僕には静音のことしか考えられない。僕の役目も何もどうでもいいくらい静音で一杯だ」

「え! 駄目だよ。海斗は郷国の護り人なんだから、そんなこと言ったらイザナギに叱られるよ」

「イザナギも、今日くらいは僕が静音におぼれてもきっと許してくれるよ」

 そういいながら、海斗の手が静音に伸びる。

 頬にやさしく伸びた手は静音を引き寄せ、唇を重ねた。

 もう、止まることも、戻ることも出来ない。前に進むだけ。

 そこに戸惑いはなく、ただ、開き始めた未知の時間に心臓の高鳴りを抑えることは出来なかった。

 海斗は、静音を岩の上に押し倒して上に覆いかぶさるようにして抱きしめる。

 初めて知る、異性の伸し掛かる重さを実感した。

 重いとは感じない。心地よく安心するだけだった。

「愛してる…」

 彼は切ない瞳で、何度も囁いて口づけを繰り返し、抱きしめた。

 二人を(へだ)てる薄い着物でさえももどかしくて、開いて肌と肌をすり合わせた。

 自分以外の素肌の感触がこんなにも心地いいのだと始めて知った。

 気持ちがあふれていた海斗は少し落ち着いたようで、体を起こして見つめる。

「とても綺麗だ…」

 静音は、海斗のささやきを半分夢の中にいるような感覚で朧に聞いていた。

 全てを海斗に預ける覚悟はできていた。

 彼は、確かめる様に指先で静音の体をなぞる。

 本当に軽く柔らかく振れているだけなのに、全神経が、彼の指先に集中する。

 体の奥が熱くなっていく、指先が動くだけで、ゾクゾクと体がざわめく。

 その指先で遠慮なく隅々まで指を躍らせる。

 すべて彼の思いのままに。

 その手に抗うことも出来ず、翻弄され、静音の体は熱を帯びていく。

 胸の先端は立ち上がり軽く振れられただけでピクリと体が動く。

「あ…」

 その刺激に思わず高い声が漏れてしまった恥ずかしさに、静音は火照った顔で海斗を見た。

目が合うと彼はとても嬉しそうに微笑む。

 その表情は、恍惚とした欲情をを含んでいた。自分は今、彼の欲情をあおってしまったのだと気が付いた。

 触れられるたびに固く立ち上がっていく胸の先が、じんじんとしびれてもっととねだっている…。

 そんな感情も全部伝わっていた。

 彼は、今度は、指先ではなく舌先で触れて、なめとるように絡ませ、口に含む。

「あ!…」

 さっきよりも高い声が出てしまっても、もう考えている余裕はなくなっていた。

 いつの間にか、指先ではなく、手の平で味わうように触れていた。

 その手を追いかけるように触れる柔らかい唇の感触が、体を覆いつくすころ、彼は切なく静音を見つめた。

「愛している…」

 彼の口からこぼれた言葉は触れる肌からも、あふれるほど聞こえていた。

 もう、すでにすべての準備は整っていた。

 ゆっくり少しづつ二人の体が重なっていく。

 彼が言っていた通り、この場所の影響なのか、静音に痛みはない。

 始めて、自分の体の中に受け入れる。

 熱い熱で、ゆっくりこじ開けながら進んでいく。

 海斗のこめかみから、汗のしずくが流れていた。

 苦しいのだろうか? 静音は心配になるが、彼は逆に静音の心配をしているようだった。

「静音大丈夫? 苦しくない?」

「うん、海斗は? 大丈夫?」

「僕は大丈夫。静音が苦しくないならよかった…。もう…少し…」

 痛みは無くても息も出来ないほどの押し広げられる圧迫感に静音の呼吸は荒くあえいでいた。

 ふたり供に、圧迫感と戦いながら同時に、うずき始める快楽を感じとっていた。

 彼は男としての抗えない欲情を抑えることなく突き進んだ。

 快楽は体の芯から湧き上り、男と言う獣の本能を剥き出しにする。

 ぴったりと体を合わせ根元まで静音の体の中に杭を鎮めた。

 二人は見つめ合う。

「これで、体も、夫婦になったね」

「僕は君の夫で、君は僕の妻だ」

これからもっと続くのかな?

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