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郷国の護り人  作者: 水花光里
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静音のダミー発動

敵の正体がわかってきました。

「静音の意識が眠らされている…」

「…戻せないのですか?」

「分からない…。奴はこの国を守る郷国の護り人の皇摩家の当主の生まれ変わりだったんだ。諏皇家と同等の力を持っている。僕の力で静音にかけられた暗示を解けるか分からない」

「皇摩って、確かイザナギの怒りを買って追放された筈では?」

「そうだ、だが、かつては諏皇家と共に、イザナギの両翼だったものだ、その力も僕とほぼ同等。消し去ることは難しいかもしれない」

「そんな…、静音が元に戻らないかもしれないなんて!」

「いや、手立てはある。イザナギの島に連れて行けば、イザナギの力を借りることが出来る」

「で、でも、そうしたら、静音は、愛美さんのそばを離れることに…」

「問題は、そこなんだけど、時雨、静音のダミーはできたか?」

「今日の夕方ごろには多分完成だと思うわ」

「海斗様、愛美さんを騙すのですか?」

「そうするしかないだろう…。いくら静音の母親でもイザナギの秘密は話すことが出来ない」

「だが、その前に、だめもとで、少しあがいてみるから、お前たち少し外してくれ」

 そういいながら海斗は上着を脱ぐと、ネクタイを外した。

 精霊たちはすっとその場から消えた。

 海斗は静音の両手をしっかり握って合わせ、頬をぴったりすり寄せて問いかける。

 静音の深層心理を深く探る。

「眠れ!」

 強い指令が駆けられているのがわかる。思ったようにかなり強力で、下手をしたら巻き込まれそうだ。

 海斗は静音の首筋に口づけをして気を紛らわしながら、強いちからで交信する。

「静音、愛している。戻ってきて。僕を感じて!」

「…かい…と…」

 かすかな反応は感じるが、静音には抗うだけの力は無い。

 皇摩の力に完全にしはいされているようだった。

 どうしたら、皇摩の力を跳ね返せるのか!

 こんな事態は過去にはなかったことだ。海斗自身の力だけで何とかしなければならなかった。

 静音に掛けられた皇摩の力を読み取ることはできる…。

 人は眠っていても、夢は見るはずだ。

 少しでも、静音の思考が残っていれば…、そこから引き出せるかもしれない?

 しかし、皇摩の力は完璧だった。静音に夢を見させないほどに、思考を止めてしまっていた。

 内側を完璧に眠らせているなら、外からの刺激にはどうだろう?

 さっきも、海斗のキスに反応があったような気がする。

 答えてくれない静音の唇に、口づけをする。

 何時もなら、直ぐにあえぐような吐息を漏らす唇が、今は何の反応もない。

 もっと強い刺激が必要だ。

 海斗はシャツを脱ぎ、肌と肌を合わせて、静音の体に愛撫する。

 今まで、触れたくても、触れることを禁じていた静音の白い肌…。

 静音の意識があったら、どんな反応をしてくれるのだろう?

 くじけそうになる気持ちを、抑えて、静音に触れる。

 静音の肌は、柔らかく、愛しさがこみ上げる。

 海斗はいつの間にか、静音を求めて吐息をもらした。

 気が付くと、静音の吐息が変わっているのに気が付く。

「か…いと…」

 微かに静音の意識が感じられた。

「静音!」

 夢中で、唇をかさねた。

 わずかに静音の反応がある。

 だが、それは、無意識のうちに、海斗の口づけに答えていただけのようで、それ以上には何も変わらなかった。

 完璧に、思考を止められている!

 海斗は、人形のように力の抜けた静音を抱きしめ無力さをかみしめた。

「静音…。ごめん。君に無断でこんなことをして…。其れなのに、これ以上は無理みたいだ。きっと、最後までしても、君の思考は戻らないのだろう」

 海斗は決意を決める。

 残された手段は一つしかない…。

 彼は、静音の衣服を直し、自分も支度を整えると、精霊たちを呼んだ。

 主人の気持ちを感じ取っていた精霊たちは、神妙な顔で現れた。

「イザナギへ行く。準備をしろ」

「小舟は、ホテルの船着き場に用意してあります」

「時雨、静音の変わりは間に合いそうか?」

「はい。今水花が支度をしています」

「イザナギで、静音の意識が戻り次第起動だ」

「はい。私はこちらで待機します」

「ああ、頼む。ハリと颪はイザナギに先に行き支度を頼む」

「わかりました」

 二人は部屋を出て行った。

「海斗様、下まで送ります」

 海斗は頷いて、静音の手を取る。

「静音、行くよ。後で、いくらでも怒っていいから…。今は許して…」

 静音は何も答えず、何も言わない。ただ、手を引かれるままに素直に歩き出した。

 エレベーターは、地下まで降りて行った。

 地下一階は、船着きがにつながっている。

 時雨が先にドアの側に行き解除ボタンを押すと、ドアは真ん中からすっと両脇に開いて開け放たれた。

 ひろい石畳の床の横に階段があり、海に続いている。

 階段の真下に小さな小舟が浮かんでいた。

 代々の当主と、花嫁をイザナギに運ぶ使いの船だった。

「ここからはお二人でどうぞ。私はもう一人の静音の側で待機しています」

「ああ、頼む」

 海斗は静音を抱き上げ、階段を下りて行った。

 二人が船に腰かけると、オールもない船は静かに動き始めた。

いよいよイザナギの島に行けるのでしょうか?

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