表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
郷国の護り人  作者: 水花光里
15/23

静音の救出

偽物、本物が入り混じって分かりにくかったかな…?わかってもらえたら嬉しいです。

 世の中は新年を迎え、晴れ着姿の人々がにぎわうが、ホテルの警戒態勢は敷かれたままで、愛美の出勤時間の時だけハリが迎えに来て、エレベーターで一回まで降り、そこからまた23階まで上がる。 

 オーナー用エレベーターは、扉さえも消えてしまう。と言ったっ徹底ぶりだった。

 静音は、何時ものようにレッスンを終わって、海斗の執務室の自分の机に座る。

 海斗はオーナー室から出てきてソファーに座った。

 静音が、パソコンをチェックしている間に、時雨が、食事を載せたワゴンを押してやってきた。

「お待たせー! 今日は張さんが作ってくれたお正月用特別メニューよ!」

 時雨が熱々の料理をテーブルに並べた。

「わあー、凄い綺麗! これ、張さんの特別料理? 何だか新年なんて気分じゃなくて忘れてた」

 そういいながら、静音は、料理が並べられたテーブルついた。

 早速とろりとした卵とふかひれの入った中華スープを口に運んだ。

 このスープの味は静音が知っている中でどのスープにもかなわないおいしさだと思う。

 静音は、張さんの料理の中でも、特別にこのスープが大好きだった。

 口に入れただけで、幸せな気分になって、心がほっこりと温まる気がするのだ。

「全くよね。新年早々警察からの報告を受けたり、あわただしいったらないわ!」

「うん。でも、捜査の方は終わったのかな? 凄い早いよね」

「当たり前よ。諏皇の要請は何を置いても真っ先に動くのよ」

 時雨が得意そうに言うが、静音は、少し心苦しく思った。

「一応すべての会社のチェックは終わったようだ」

「海斗、これで、一般人の憑依はなくなると思う?」

「そうであってほしいね.やられっぱなしは、ごめんだからね」

 海斗と向い合せに座って張さんの料理に舌鼓を打つ。

 張さんの料理は繊細で、見た目もきれいだが、味付けも、今回お正月料理と言うことで、辛くない優しい味だった。

 お正月は、日本料理が主体で、もちろん、時雨の番だが、今日はお正月にホテルに泊まってくれた張さんが特別に作ってくれたものだ。

「これからは、怪しい奴はぶん殴ってもいい?」

 何処から聞いていたのか、いつの間にか来ていた颪がやる気満々で言う。

「いや、颪、ほどほどにしておけ。もし一般人だったら後が厄介だ」

「ダメなのか?」

 颪は目を真ん丸く見開いて、驚いた様子でションボリする。

「あら、颪ったら、そんなの目立たないようにやるに決まってるでしょう」

「目立たなきゃいいのか?」

 颪が、蘇ったように生き生きとした目をに戻った。

「そうよ、殴るなら見えないとこね」

「腹とか、背中か?」

「まあ、そんなとこよ」

「よし、任せろ!」

 何だか話が危ない方向に向かっている気がして静音は言葉を失くして二人を交互に見る。

 本当にそれであってる?

「あ、そうだ、明日の白戸様のお見送りにはいってもいいかな?」

「だめ。静音は、このフロアからの外出禁止」

「え? だって、いるのはホテルの従業員ばっかりだよ。せっかく認めてもらえたのに、自分で行かないなんて、失礼だと思う」

「張さんにも挨拶したいし、新年の挨拶なんだよ」

「でも静音…。一般人の憑依はないかもしれないけど、奴の手下が忍び込んでいるかもしれない」

 海斗は静音を抱きしめてつぶやく。

「ごめん…。君を縛り付けるのは僕も望んでいないけど、でも、危険からは遠ざけたい。本当に君を守りたいなら、君を手放すべきなのかもしれない。でも、君を危険なことに巻き込むこと許して。危険だってわかっていても、君を手放すことが出来ない。僕はどうしたら君に償えるだろうか?」

「海斗…」

「怖がっている君の気持ちを分かるのに、僕は…。抱きしめることしかできない…。君を誰よりも幸せにしたいのに、苦しめることしかできないなんて…」

 海斗は苦しそうにぎゅっと静音を抱きしめる。

「何言ってるのよ! 私はただ守られてるなんて、申し訳ないと思っているよ。私だって海斗の役に立ちたいし、戦いたいと思ってるのに、本当にこのまま、守られるだけでいいのかって、疑問に思うことはあるの」

「静音、僕は君にこの間みたいな思いは二度とさせない! ほんの少しの隙も作りたくないんだ」

「海斗の気持ちは嬉しいけど、私は、もっと海斗に自由にいろんな経験をしてほしい。綺麗なものも一緒に見たいし、楽しいこともいっぱいしたい! 其れなのに、訳の分からない人のせいで海斗の貴重な時間がつぶされるのかと思うと腹が立つの!」

「静音…」

「早くやっつけて自由になりたい! そのためなら危険なことだってやるわ!」

 静音の剣幕に、海斗も、時雨も、さっきまでぶん殴ると息巻いていた颪でさえも、呆気に取られて言葉を失くして見つめた。

「だから、敵を知るためにも、おびき出すためにも、動かなければいけないと思うの」

「君は意外と攻撃的なタイプだったんだね」


     *-*-*


 翌日、お正月をホテルで過ごされた張さん、白戸様を見送りに、静音はみんなで列に並ぶためにエントランスに出た。

 そこに、何時もいない颪の姿を見つけた。

「あら、颪、珍しいね。お見送りに出てきたの?」

 静音が声をかけると、颪はにこりと笑って返事をした。

「ああ、たまには見送りくらいしようと思ってね」

 何だかいつもの颪じゃない? 

 颪がこんなに愛想良いなんて、どうしたんだろうか? 

 それとも、お客様の前に出る時バージョンなのだろうかと静音は首をかしげたが、直ぐに白戸様が出ていらっしゃったので、お見送りに専念した。

 静音は、何時ものように、中国語で、張さん、白戸様に新年の挨拶をして、張さんに、昨日の昼食のお礼を言った。

 張さんは上機嫌で、もっとおいしいものを作ってあげると約束してくれた。

 白戸様も、今ではすっかり静音を認め、穏やかに挨拶をして出かけて行った。

 ホッとして戻ろうかと思っていると、小さな子供が道路に向かって走り出している。

 大変止めなければ! 

 静音は慌てて後を追って飛び出していった。側に母親らしき影もない。

 何故こんな小さな子供が一人でいるのかと思いながら走るが、子供は思ったよりも足が速く中々追いつかない。

 ホテルの門を出て曲がったところで、静音は後ろから抱え込まれ、つんとした強いにおいをかがされると、意識が遠のいていった。

 この時皆には母親が子供を連れてホテルを出て言ったように見えていた。

 

 まず最初に気が付いたのはドアマンの斎藤さんだった。

「大海さん、静音さんをみませんでしたか?」

「あれ、そういえばいませんね。さっき、下りてきたときは挨拶してくれたので、いたはずなのですけど、いつもは帰る時もちゃんと挨拶してくれるのに変ですね」

「何か急用でもあったんですかね?」

「ここの所体調が悪かったようだけど、具合でも悪くなったんでなければいいのですが」

「ああ、そういえば花壇の水やりも来ていなかったようですね」

「そうみたいです…。何もなければいいのですが」

 二人は、首をかしげた。

 

 白戸様は、ほとんどのお客様が出発された後、ゆっくり出発されるのがいつものスタンスだった。

 静音も、白戸様が出発される日は、レッスンを早く切り上げ、十一時ころにお見送りに出る。

 なので、ロビーも、エレベーターの前もほとんど人がいない。お見送りの終わった従業員が、持ち場に戻ると、残ったのは静音だけだ。

 ハリは、エレベーターの前で、行先を確認している静音の姿を見つけた。

「一之瀬さん、どうしたんですか? 戻るときは私に声をかけてくださと言っておいたじゃありませんか?」

 静音は驚いたように振り向いて、じっと、ハリを見つめた。

「あ、松田支配人、そうでした…」

ここから、海斗の攻撃が始まりますね。とても楽しみです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ