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郷国の護り人  作者: 水花光里
11/23

もう一人の静音

何だか雲行きが怪しい! もっとゆっくりのんびりさせてあげたいんだけどな。

   もう一人の静音




 気分を取り直して、海斗は気がかりな問題をかたずけようと、一人で瞑想していた。

 腕を組んでじっと目をつむっている海斗を見た静音は、心配になって声をかける。

「海斗? どうしたの? 具合悪い」

 先祖の記憶を探っていた海斗は、静音の声に、目を開けた。

「静音、大丈夫だよ。僕は病気もしないし、具合も悪くならない体質だって知ってるだろ」

「そうだった。何か問題でもあったの?」

「先祖の記憶を探っていたんだ。この間の事件に何か関係のあることがあるかと思って」

「あ、ごめんなさい。邪魔をしてしまって…」

 静音は、慌てて部屋を出て行こうとしが、海斗が静音の手をつかんで引き止めた。

「大丈夫だよ。もう終わった」

 静音が振り返ると、海斗はそのまま引き寄せて静音を膝の上に乗せる。

 静音は、焦って周りを見回す。誰もいない? それならいいかな? もう勤務時間も過ぎているし…。

 海斗が、何時もスキンシップが足りないと不満を感じていることも知っている。

 たまには答えてあげなければとは思っていた静音だが、なかなかチャンスがなくて答えることが出来なかった。

 戸惑いながらも、大人しく海斗の膝の上に収まって、訪ねる。

「何かわかったの?」

「うん。少しおかしなことがあった」

 そういいながら、海斗は静音の頬をすりすりなでるから、静音は落ち着かない。

「お、おかしなこと?」

 海斗の手を振り払うことも出来ずに、静音の頬は熱をもって赤く染まっていく。

 そんな静音に気が付いているくせに海斗は、素知らぬふりで頬から、顎、首筋のあたりまでなでる。

 さらに、肩甲骨のあたりを指先でさまよう。

 二人で貿易船から抜け出した夜の記憶がよみがえり、心臓が大きく脈打ち始めてしまった。

 静音は、体を身じろぐが、海斗は、反対の手で腰に手を回し、しっかり静音を抱え込んでいて少しも逃げられず、されるがままだった。

 海斗は、そんな静音を見下ろして、クスリと笑いながら、さらに静音を揺さぶる。

 そうしながら、何もないように話しをつづけた。

「随分昔のことだ、この国が、外国との交流を始めたころ、ホテルはまだなくて、領主の城だったころ、やたらと攻撃を受けている」

「集中的にここだけを?」

「変だろ? 国を狙うなら、本来は、首都を狙うはずだろ? まあ、狙うと言っても、爆弾を仕掛けてくると言うような目立ったやり方じゃないけど、当主の命が狙われたり、刺客が次々送り込まれたりといった感じで、その時、妻だった、一之瀬の奥方が殺されている」

 何とか逃れようともがいていた静音だが、話の内容が深刻になって来たことで、抵抗をやめて、話に集中する。

 海斗の手もいつの間にか止まっていた。

「それじゃあ、その時、当主はなくなってしまったの?」

「…うん。海外だったようなんだけど、敵地まで乗り込んでいって、敵を倒した後に、ウイルスに侵され帰っては来れなかったようだ」

「海外? 酔っぱらいの国際電話に関係あるの?」

「分からないけど、SKYにしても、外資系の会社だし、海外の敵であることは確かかも知れない」

「…その時と同じ敵だと思うの? この間の酔っぱらいも同じ敵の仕業?」

「そこまではわからないけど…、なんとなく同じ攻撃の仕方な気がする。この間の船会社の様に、別ルートがいくつもあって、そっちが動いた可能性もある」

「じゃあ、今回はSKYは関係ないと思う?」

「うん。SKYは、警察に目を付けられてるから、又何かあれば、今度は、個人じゃなく、会社自体が疑われて調べが入る可能性があるから、そう簡単に動かないだろうと思う」

「僕が気になるのは、一之瀬の妻を殺せば諏皇を殺せる的な情報が漏れていて、静音が狙われることだ」

「原因までは知られていないはずよね」

 静音は、自分が狙われることより、海斗の秘密が知られてしまうことの方が気になった。

 海斗は難しい顔をして首をかしげる。

「データを取れば、ばれるかもしれないね…代々重篤な病気じゃなく、風とか単純な死因ばかりだ」

 確かにそうかもしれないけど、だからと言って、例えば、ホテルにウイルスをまき散らしたとしても、海斗が守れないわけじゃない。

 私がしっかり守ればいいことだ。

 しかし、少しでも海斗の情報が漏れることは避けたい。

 もし、昔の諏皇家の情報を持っている敵なら、とても危険だ。

「…倒した敵が復活したってこと? 相手を倒したのでしょう?」

「分からない、突然変異的にそういう人間が生まれるのかもしれないし、僕の家計のように、どこかに力を受け継ぐ跡取りが隠されていたのかもしれない」

「それじゃ、やっぱり同じ敵なのかな?」

「それも分からない。それより、話を戻すけど、静音が狙われる可能性が高いと思う。その問題を、早急に対処しないといけない」

 海斗はさっきから、静音の危険を指摘しているのに全く考えていない静音にくぎを刺す。

「私?」

「うん。今回も、最初から静音を狙ってきてるし、静音を狙うのが一番最初の敵の作戦かもしれない。僕としては静音をどこかに隠したい…くらいだ」

「海斗様、静音をイザナギに連れて行ってください」

 いきなり時雨が現れて言った。次々精霊が現れ、皆同じ考えのようだった。

「お前たち、聞いていたのか」

「我々は一心同体ですから、いつでも海斗様の様子に耳を傾けています」

 狙われていると言われて怖くないわけはない。

 この間も、怖い思いをしたばかりだ。イザナギに行けば、一番安全なことはわかる。

 それでも、静音には、気がかりなことがあって、今ここを離れたくない。

 でも、海斗の安全を守るためにも、自分の身も守らなくてはならない。

 静音は不安になる。

 母と離れなければならないのだろうか? 

 母を一人にしたくないのに…。

 私だけ隠れても、母が狙われないだろうか? 

 母が狙われた時にはどうしたらいいんだろう?

 静音が、沈んだ顔をしたので、皆が沈黙する。海斗が、その場を取り持つように言った。

「一先ず、時雨、静音の身代わりを作ってくれ」

「え? 何それ」

「静音は、寮の外に出られなくなるが、愛美さんと暮らせる。代わりに偽の静音が動く」

「でも、海斗様、寮を襲われないという保証はありません」

「静音が、ホテルに泊まっていることにすればいいだろう」

「それならいっそ、愛美さんごとホテルに住めばいいんじゃないですか。寮より安全です」

「愛美さんが納得してくれるだろうか」

「ママは事情を話せばわかってくれると思うけど…」

「そうか…。その方がいいな。とりあえず、静音の身代わりは作っておいてくれ、何かあったときは静音の変わりに動けるように」

「分かりました。静音、髪の毛一本頂戴」

「え? うん、いいけど…」

「一応静音のDNA入りの人形よ、何処にいても静音の思うままに動くし、何をしているのかも把握できるわよ」

「そんな便利なことが出来るの? すごい!」

「水花の、静音判ね。一週間くらいかかるわ」

「うん。ありがとう。お願いします」

 静音は、髪の毛を抜いて時雨に渡した。

 愛美は、不安そうにしながらも、静音と一緒にホテルに住むことに同意してくれた。

 静音の隣の部屋が愛美の部屋になった。      

時雨の秘密技出ました。


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