09 夜営
ただ今、サイリ家一同、夜営中。
夕食と、明日に備えての話し合いも済ませて、
夜番の人以外はおやすみモード。
今 起きているのは、フィグミさんと、僕。
そういえば、魔導具関連の動作阻害の影響、フィグミさんは大丈夫?
『今のところ、全く問題ないですよ』
今回は『ハラショー』を持ってこれなかったけど、ごめんね。
『実はアリシエラさんから、これを預かってきているのです』
はて、単5電池くらいの大きさの……筒?
片側にポチっとした出っ張りがあるけど、スイッチ、かな。
それゆえに、見れば見るほど電池っぽい外見。
『私は皆さんみたいに『イッテラ』システムを使った救援活動に参加出来ませんので、防犯のために特別な増援方法を用意していただけたそうです』
『フィナさん誘拐事件もありましたし、アリシエラさんも本気で開発してくれたそうですよ』
ほう、アリシエラさんの本気。
『増援用ディスオペレーターアームドパック』
『略称『ゾディアック』だそうです』
……アリシエラさんのネーミングセンスへの感想はひとまず置いといて、
つまりはなんなのでしょう、これ。
『この筒のこっち側のポッチをポチりと押すと、『ハラショー』をベースとした完全武装の戦闘用ボディが、瞬時に『転送』されてくるそうですよ』
……フィグミさんには争いとは無縁のボディを、って、アリシエラさんにお願いしてたんだけどな。
『私のボディは『ハラショー』ですよ』
『『ゾディアック』は、あくまで緊急時の自衛用、だそうです』
試運転してみました?
『いいえ、作動させるのはサイリさんがご一緒の時に、とのご指示です』
?
『サイリさんにも『ゾディアック』への命令権限が与えられているそうなのです』
えーと、命令権限?
『私が命令不能な時にも、存分に『ゾディアック』の力を振るえるように、との心遣いですよ』
ちなみに、命令権限の上位は、もちろんフィグミさんですよね。
『もちろん家長であるサイリさんが最上位ですよ』
……絶対呼ばないように、しっかとフィグミさんをお守りしますね。
『もちろんサイリさんに危険が及んだ際には躊躇無く呼びますね』
躊躇してくださいよぅ。
ってか、自重してくださいよぅ、アリシエラさん。
これって絶対、けんちゃんからボッシュートされちゃう案件ですよ。
『ボッシュート?』
えーと、メッ、されちゃうってことです……