07 救助
巡回司法官からの緊急連絡は、正直、気乗りしない依頼でした。
えーと、例の古代王国遺跡の探索部隊が、遭難したそうなんです。
ええ、そうなんです。
で、救助部隊メンバー候補として、第一次探索部隊を自己都合キャンセルしたスーミャとイリーシャさんに緊急依頼の連絡が来たわけで。
正直、あまり面白くないけど、遭難するほど危険なところならさすがに放っとけないわけで。
いえ、放っとけないのはスーミャたちを、ですよ。
第一次探索部隊の方は……悪いけど僕としてはどうでもいいです。
救助には全力を尽くしますけど、なんだか妙に気乗りしないのです。
"カイジ感"とは別の、ざわざわじゃなくてもやもやする感じなのです。
というわけで、僕も救助部隊に参加することになったわけで。
僕が行くことになったら、心配したみんなもついてきちゃうわけで。
つまりは、救助部隊はサイリ家御一行様ってことになっちゃったわけで。
……
それではルシェリさん、最終確認しますね。
今回の僕たち救助部隊の目的は、遭難した第一次探索部隊5名の救出。
遺跡の探索関連については手出し無用。
人命最優先ですので、救出時における遺跡保全等に関する責任は一切問わない。
以上でよろしいのですね。
「そうです、人命最優先、でお願いします」
「もちろんサイリさんたち皆さんも、です」
「……ご無事で」
はい、ルシェリさん。
それでは、行ってきます。
……
えーと、再確認っと。
第一次探索部隊は5名。
リーダーは、ソルシュガヤさん。
巡回司法官戦闘訓練所教官で、元はかなりの有名冒険者。
近接戦闘の達人で冒険者としてもかなりの腕利きだった、と。
なんでこんな人が教官なんてやってるのかな。
「それについては情報があるのだが、詳しいことは任務終了後に」
了解、イリーシャさん。
次はサブリーダー、ネージュメシエさん。
巡回司法官魔法教習所教官で、元はエルサニア王国の宮廷魔道士。
攻撃・防御なんでもござれの凄腕の魔法使い、と。
なんでこんな人も教官なんてやってるのかな。
「それについても情報があるのだが、詳しいことは任務終了後に」
……了解、イリーシャさん。
えーと次は、パーティーサポーター、ケッセルミスタさん。
巡回司法官資材管理部門の副責任者で、元は大手商隊キャラバン在籍。
生活魔法全般を得意としており、特に『転送』と『収納』魔法が得意。
うーん、まあ長期の探索任務だと、そういう人も必要かもね。
「……情報があるのだが、詳しいことは任務終了後に」
もしもし、イリーシャさん。
もしかして事前に知っておいた方が良い情報だったりしません?
「サイリ殿には、後ほどまとめて……」
……了解です。
後は、と。
ヤカナハムさん。
古代王国研究の第一人者で、最近現役復帰したばかり。
……もしかして、この人って。
「サイリ殿もよくご存知の……」
……ご存知なんてもんじゃないでしょ、イリーシャさん。
フィナさんは会いたくないんじゃないかな。
「ううん、あの時は顔も見ていないし」
僕は正直会いたくないですけどね。
フィナさん誘拐事件の時に犯人に協力したのは脅されてやむを得ずとはいえ、こんな人を探索部隊に入れるなんて……
「それについても情報が」
もういいですよぅ、イリーシャさん。
後でまとめて教えてもらいますから、覚悟しておいてくださいね。
「その時が来たら、根掘り葉掘り聞くが良い」
めっちゃほりほりしちゃいますからねっ。
最後に、レマリィ……
って、なんで見習いがこんな探索チームに入ってるの。
そもそも、厳選された先鋭チームにする、ってのが募集要項にあったはずですけど。
「ヤカナハム老人のお世話、だそうだ」
つまり、厳選されたチーム5名のうちのひとりはお世話が必要な老人で、もうひとりは見習いになったばかりのひよっこだ、と。
遭難して当たり前じゃん、こんなの。
誰が決めたんだかな、こんなメンツ。
「それについても情報が」
はいはい、了解、イリーシャさん。
とっとと救出して、さっさと脱出して、
ぱっぱと我が家へ帰りましょ。
みんな、ケガだけはしないようにね。
こんなまともじゃ無い依頼で家族の安全がおびやかされるなんて、
全部終わったらキルヴァニア王都巡回司法官支部、いや、エルサニア王都本部に文句言いに行かなきゃ。
ナルンも大変だろうけど、背中の編みカゴ、あまり揺らさないでね。
フィグミさんは起きないと思うけど。
『はーい、サイリパパも転ばないでね』
はーい、ナルンは優しいね。
では、サイリ家一同、安全第一で出発進行!