03 失態
そんな感じで、いろいろありながらも楽しい生活を送っていたのですが、
「来たよ、サイリ!」
なんですか、スーミャ。
って、お手紙?
「合格通知、だって!」
はいはい、アレですね。
キルヴァニア王都の巡回司法官支部で募集をかけていた、失われた古代王国の遺跡調査の件。
応募者多数につき結果発表は後日、でしたね。
「じゃあ、支度してくるね」
はい、しっかり準備してくださいな。
……ふむふむ、現時点では依頼終了までの期間は未定、
今回の調査は、複数ある遺跡群の一番手前の遺跡のみ、
厳選された少人数先鋭パーティーによる遺跡調査が主目的の探索任務、と。
国によって封鎖されていた未踏破地域の探索ってことは、魔物もお宝も、探索が進行するほどなにが出るかは分からないって感じなのかな。
いかにも冒険!
なのだけど、気になることがひとつ。
『機密保持のため、任務中は外部との連絡を制限する処置を施させていただきます』
つまり、『Gふなずし』みたいな遠距離通信装備は持ち込み禁止ってことでしょ。
うーん、アリシエラさんが心血を注いで育ててきた『Gふなずし』システムが、ここにきて裏目に。
『探索』『通信』『ナビ』を一台に集約した万能型複合機器の弊害ってヤツですかね。
全ての機能をひとつに集約させると、そのうちのひとつに綻びが生じるとその全てに問題が波及してしまう。
スマホをもっと便利にしようとどんどこ機能が追加されたせいで、確かにいろいろ出来るようにはなったけど、操作やら設定やらなにやらが複雑化しすぎてかえって不便になっちゃった、みたいな。
いや、それは別問題でしたね。
まあとりあえず、こっちに必要なのは『探索』能力のある魔導具だから、
アリシエラさんにお願いして、以前モノカさんたちが使っていたシンプルな探査魔導具を貸してもらおうかな。
「それについてはすでに私の方からアリシエラさんに相談済み、だ」
さすがはイリーシャさん。
手が早いのはちっちゃい子相手だけじゃない、
ゴツリッ
マジイテェ!
「頼む、サイリ殿」
「私に剣を抜かせるな」
……すみません、最近調子に乗り過ぎてて、歯止めがかかって無いですよね
自分を抑えきれない感じでアブないなとは思っているのですが……
「一度シナギさんたちに相談すると良かろう」
「今のままでは、そのうち取り返しがつかない失態に苦しむことになるぞ」
……肝に銘じます。
……
僕の一番の問題は、相手とのコミュニケーションをその場しのぎの考え無しでやっちゃうところ、だと思う。
だから、調子に乗りすぎて相手に嫌な思いをさせたり、ジェノサイドみたいな取り返しの付かないことを起こしてしまったりする。
対処法は知ってる。
会話する際は、よく考えてから誠実かつ簡潔に話すこと。
行動する際は、よく考えてから慎重に実行すること。
って、それが出来なかったから、引きこもりに逃げたわけで。
……今回は、固有スキルに頼ってみようかな。
自分が駄目なヤツだってことは自分が一番よく分かってる。
それでも、自分を変えるなんてイヤだ。
だから、本当は固有スキルなんか自分に使いたく無い。
けど、自分の駄目なところを変えずに受け入れてもらおうなんて……やっぱり甘いよね。
自分の駄目なところ……
お調子者、反省しない、人の気持ちを思いやれない、
そういうのを全部無くせば、まともな人間になれる、よね。
……だから、
自分自身に"自我を封印"を付与。