02 ゆるみ
スーミャとイリーシャさんは、今は冒険者としてがんばっている、ヴァンパイアハーフコンビ。
スーミャはタリシュネイア王国の元お姫さま。
いろいろあって国との関係を断って、今は冒険者稼業を邁進中。
見た目はやんちゃな娘さんなのですが、王族の血統を持つヴァンパイアハーフというチートな出自を活かして夜間討伐などで大活躍。
いや、普段は本当に普通のやんちゃっ娘、
「てやっ」
いてぇ!
「サイリが変なことを考えてたら遠慮なくおしおきしなさいって、イリーシャが言ってたっ」
ちょっと、スーミャ。
お年頃の女の子は暴力を振るう前にまずは、
「うりゃっ」
イテェ!
「サイリが普段より早口の時は気を付けなさいって、イリーシャが言ってたっ」
……ごめんなさい。
えーと、つまりは、スーミャがやんちゃっ娘を通り越して暴れん坊(元)プリンセスになっちゃったのは、
あそこにいるちっちゃくて可愛らしい童顔の守護騎士さまのせいだ、と。
これはひと言、釘を刺さねばなりますまい。
ちょっと、イリーシャさん。
おたくの相方さんがすっごく暴力的なバイオレンスっ娘になっちゃった責任の所在についてなんですけど。
ぽかり
痛ぇ!
「わけわからんことをうだうだ言ってないで、少しは己れを律する態度を見せるが良い」
「最近のサイリ殿は、どうにも弛みすぎではないのだろうか」
「何もせずハンモックばかりだった頃と違って、積極的にだらけていると言うか、嬉々として緩んでると言うか」
「そんなだから、あのアランさんそっくりなまなざしばかりが目立つのだぞ」
がびーん!
サイリ、超ショック。
まさか家族にそこまでダメっ子扱いされていたとは。
いえ、アランさんがダメっ子って言ってるわけじゃ無いのですよ、念のため。
それにしても、僕なりに家長として、結構やることやってきたつもりなんだけどなぁ。
えーと、まずはこの千々に乱れた心を落ち着かせねば。
つまりは、瞑想に最も適した場所へ。
それすなわち、マイハンモック。
いつもの木陰に来てみれば、と。
はい、いらっしゃいますね。
ちっちゃな妖精さんのフィナさんと、ちっちゃなお人形さんのフィグミさん、
ちっちゃ可愛いペアが、お気に入りの編みカゴの中で、
ぴったり寄り添い合いながら、すやすやおねむ、ですよ。
なぜか夜しか活動出来ないフィグミさんに、フィナさんがお付き合いしてお昼寝してくれているのです。
決して編みカゴ依存症で寝っぱなし、なのではありませんよ……たぶん。
まあ、そんな感じなので、傷心の僕も隣でハンモックしても良いかな。
いいとも。
セルフいいともせざるを得ない淋しさが、眠りに誘なうパスポートってな感じですかね。
……では、おやすみなさい。
zzz……