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19 後日


 あれから、それなりにいろいろありましたが、我が家はそれなりに落ち着いております。



 キルヴァニア王都の巡回司法官支部は、綱紀粛正の嵐が吹き荒れて、問題分子は一掃されたそうです。


 イリーシャさんが出発の時に言い渋っていたのは、あの支部に関する黒い噂がいくつもあったことだとか。


 出発前に僕が知っちゃうと、どう転んでも揉めそうだったので、ひとまず救助活動が済んでから、だったそうですが、結果はご存知の通り。


 まあ、今回は珍しくジェノサイド無しってことで、結果オーライかな、と。




 ソルシュガヤについて。


 冒険者としてやっていけなくなったのは、チームモノカのアイネさんにご執心しすぎてやらかしたせい。


 アイネさんから聞いた話しによると、当時ソロ冒険者として名を馳せていたアイネさんに、何度も何度も言い寄って、挙句の果てにストーカー認定され冒険者ギルドを追放されたのだそうです。


 で、キルヴァニア王都巡回司法官支部副支部長のゴルテンザに拾われて、おとなしく悪事の片棒を担いでいたのだとか。


 ソルシュガヤ本人は、出世してそれなりの地位を得たらアイネさんを追っかける気満々だったそうで、トドメを刺さなかったことを後悔しちゃいましたよ。



「大丈夫、今度会ったらシナギさんに『ぶなしめじ』してもらうからっ」


 本当に気を付けてくださいね、アイネさん。


 そして、がんばって、シナギさん。




 ネージュメシエについて。


 エルサニア王国の宮廷魔道士だった彼女は、


 当時戦争中だったクルゼス王国との戦いで多大な戦果を上げた英雄だったそうです。


 ただ、強力な攻撃魔法をブッ放す魅力に取り憑かれだしてからおかしくなっちゃったそうで、


 フレンドリーファイア当たり前なイカれた魔法使いとなってしまい、しまいにはエルサニア王国を追放処分に。


 で、ゴルテンザに拾われて、おとなしく悪事の片棒を担いでいたのだとか。


 ネージュメシエ本人は、失われた古代王国の秘匿魔法を手に入れたら、エルサニア王国に復讐する気満々だったそうで、トドメを刺さなかったことを後悔しちゃいましたよ。



「あの娘は、流石の僕でもノーサンキューなイカれっぷりだったね」


「あなたがそんなことを言うなんて、よっぽどのことですよ」


「ひどいよ、セルマ」


 えーと、当時のお話し、いろいろとお辛いこともあるでしょうに、すみませんでした、メイジさん。



「戦争は人を変えるって言うけど、あの娘のアレは戦争のせいじゃ無かったと思うよ」

「サイリさんも、シリアスばっかりじゃなく、バランス良く暮らしてね」


 はい、おふたりとも、今日はありがとうございました。


「まいどどーも」


「また来てくださいね」



 メイジさんとセルマさん、おふたりがらぶらぶなことが、なによりの平和の証し、なのです。




 ケッセルミスタについて。


 大手の商隊キャラバンの下働きだった彼の人生が変わったのは、所属していたキャラバンを抜けた後、突然羽振りが良くなったから。


 今回の件の精査のために使われた深層自白剤によってもたらされた情報は、僕らにとってとても重いものでした。


 ケッセルミスタが羽振りが良くなったのは、所属していたキャラバンの極秘情報を強盗団に売り渡したから。


 ヤツが売り渡した日程や警備状況などの情報のせいで、当時最大手だったそのキャラバンは皆殺しにされたそうです。



 いや、生存者が3名。


 当時、子供だったリベリカさん、フルミネさん、アルマーヤさん。


 孤児院に入れられた3人は、その後ミスキさんの養女となり、今は『黒猫嵐の魔導急便』として国内外を問わず、冒険者たちを支える存在に。


 事の経緯をルシェリさんから知らされた3人とミスキさんから、泣きながらハグされたのは、すごくつらかったです。



 ケッセルミスタ本人は、当時手に入れた大金を使い切って、ゴルテンザから誘われるままに悪事の片棒を担ぎ、巡回司法官組織を丸ごと食いものにする気満々だったそうで、


 今さらだけど、アイツにトドメを刺さなかったこと、本気で後悔しました。



「巡回司法官として、皆さんの思いに恥じぬ処罰を、必ず……」


 お願いします、ルシェリさん……




 そして、ヤカナハム。


 研究者としては超一流と評価されていたアイツが、晩年誰からも相手にされずに隠遁生活をしていたのは、研究第一で人間関係には全く無頓着だったから。


 むしろ研究を続けたい一心で周りと衝突するばかり、さすがに若造じゃなくてその道の大家ですので、煙たがられはしても、積極的に邪険にされたわけじゃ無かった。


 ただ、学者界の時流から置いていかれていると感じて焦っても、時すでに遅し。



 そんな感じで鬱々としていたところに、盗賊とはいえ自分を必要としてくれる人が。


 そして、フィナさん誘拐事件に加担。


 枯れ木に火がついたのでしょうね。


 もう善悪がどうこうなんて関係無い、ゴルテンザの誘いに乗って遺跡目指してまっしぐら。



 孫より若いレマリィが縛られている姿を見ても何も感じず、遺跡の中でひとり大発奮。


 あのチンピラ3人がドン引きするほどの熱中っぷりだったとか。



 ヤカナハム本人は、僕が遺跡を更地にしたことを聞いて抜け殻状態だそうです。


 トドメを刺す価値も無いヤツだと思うけど、少し溜飲が下がりました。




 最後に、ゴルテンザ。


 キルヴァニア王都巡回司法官支部副支部長まで昇り詰めるには、並大抵じゃ無い苦労があったようです。


 悪事的な意味で。


 そういうのが全部、本人の口から、絶賛ダダ漏れ中。


 悪事の数が多すぎて精査が大変らしいけど、それこそが司法官の腕の見せ所、だよね。



 深層自白剤、実に良い仕事をしてくれております。


 さすがはクロ先生がベースを開発した秘薬、ですね。


 今までそれを使っていた側が、情け容赦無く使われていることが、正義、かな。



 悪党サイドの後日談は、そんな感じで。



 そうそう、あの連中が遭難したフリをしていたのは、ヤカナハムの研究が成果を出すまであそこに居座るつもりだったから、だそうです。


 つまり、ゴルテンザが何度も送り込む予定だった救援物資たっぷりの救助隊を襲って長居するつもりだった、と。


 満足いく結果が出たら、トンズラする気満々だった、ですって。



 ……ガバガバすぎやしませんか、そんなの計画とも呼べないでしょ。


 なんだか、裏の裏がありそうな、もやんとした感じです。



 連中の誤算は、本部のルシェリさんがゴルテンザを無視して僕に直接連絡を取ったこと。


 どうやら、エルサニア王都司法官本部では、キルヴァニア王都支部のやらかしてたアレコレが、諸々問題視されていたようで。



 出来ればそういうことは事前に知らせてほしいのですがね。


 まあ、いろいろやらかしたせいで司法官の皆さんからの信用を失ってしまった僕に問題がある、と言われると、ぐうの音も出ません。



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