11 不穏
『ゾディアック』の取説もひと通り目を通したし、
次は自分のこと、かな。
つまり、今回の冒険中はどんな付与を掛けようかってこと。
なにせ脅威がなんなのかがまだ分からないし、つまりは、ナニを重点的に強化すれば良いのか分からんのです。
第一次部隊の遭難の原因が分かるまでは、捜索系の探査能力マシマシと、罠対策の状態異常無効化、くらいで良いかな。
なにせアリシエラさんの魔導具ですら動作が安定していないし。
……もう一回『Gふなずし』で広域探索してみようかな。
って、連携している腕輪魔導具『コニタン』の画面がおかしい。
普段は、僕たちが『鑑定』でステータスを見るときみたいに、目の前に画面がポップアップするはずなんだけど、
画面が揺れると言うか、チラつくと言うか。
『ジャミングでしょうか』
フィグミさんも、身体におかしなところを感じたら、すぐに知らせてね。
ちょっと早いけど、みんなも起こした方が良いかな。
みんなが寝ているテントは、モノカさんたちも使っているのと同じモノ。
『空間』魔法で一軒家並みの快適広々空間が売りの、
アリシエラさん謹製、通称『一軒家テント』
えーと、ヨコシマな気持ちはこれっぽっちも無いですからね。
あくまで家族への注意喚起のためのテント潜入、ですよ。
乙女のパラダイスを土足で踏みにじる邪悪な家長では無いのです。
ええ、無いのです。
『私が行ってきましょうか』
……よろしくお願いします、フィグミさん。
ふう、これで無用なえっちっちトラブルは回避。
さすがはフィグミさん、本当に頼りになるお姉さんっぷりですね。
これが、"亀の甲より歳の功"ってことでしょうか。
もちろん、フィグミさん本人の前で、歳の話題はNGもいいとこですよ。
いくつになっても乙女は乙女。
"三つ子の魂百まで"ってことですね。
この場合の三つ子って三人兄弟じゃなくて、三歳児ってことだそうですから、お間違い無く。
……はて、フィグミさん、遅いな。
…………あれ、テントは?
誰か起きて、撤収したのかな。
って、中に人が居る状態で撤収するわけ無いだろ。
慌てて駆け寄ると、テントを敷いていた跡に、一枚の紙が。
『仲間を無事に返して欲しかったら大人しく待ってろ』
…………やりやがったな。




