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二人は馬車から降り、ある一点を見つめていた。
「ここ・・・街道・・だよね?」
「・・・そのはず・・。」
二人はようやく道に出ることができた。
「何でこんなボロボロなの」」
しかし道といっても、ただでこぼこした石畳が続く何とも荒廃した道だった。
「・・・もしかして・・潰れてる?」
「なにが?」
「・・近くの街・・。」
「まさか・・・。」
「・・・これだよ?」
そういってシャムは道を指差す。
「・・・たしかに、じゃあ翔ぶ?」
「・・・ダメ・・翔ぶには売らないと。」
「なにそれ?エゴ?」
「・・・いや、発動条件。」
「なんてこった・・・・。」
がっくりと膝をつくニュイ。
「・・・どんまい。」
シャムは、ぽんぽんとニュイの肩を叩いた。
「こっからさきどうすんのよ?いっても廃墟じゃ意味ないじゃん。」
「・・・そこから道があるかもしれないから。」
「そっか!!ならちゃっちゃと行こう!!」
そういってニュイはダッシュで走っていった。
「はやくね?・・・まぁ、ニュイだし仕方ないかな。」
そうシャムは独りごちた。
「はーやーくー!!」
遠くからニュイが叫ぶのが聞こえ、シャムは少しだけ笑った。
「・・・お疲れ様。」
ニュイが疲れてへばったところを捕獲して馬車に乗せたシャムは、言った。
「はぁ・・・はぁ・・・う・・うるさ・い・・。」
息を切らしながらニュイは言う。
「はははははっ!!おまえらおもしろいな。」
いつの間にか乗っていた男にニュイは顔をしかめる。
知らない人に、突然笑われたのだ。
無理もないだろう。
「あなた・・・・なんでいるんですか?」
ニュイの声は低かった。
「・・・街まで案内してくれるって。」
そんなシャムの説明に、男は補足する。
「馬車に乗せてもらう代わりに道を案内するって俺がいったのさ。」
「そうですか。では、短い間宜しくお願いしますね。」
「おぅ、こちらこそヨロシク。」
ニュイには、シャムがなぜこの男を乗せたのかわからなかった。
実際のところ、シャムと旅をするのは今回が初めてだ。だが、それでもシャムがこんなにも簡単に商品のある馬車に近付けたことが、ニュイには意外だった。
「・・・契約は、護る事。」
いままで黙っていたシャムが口を開いた。
「わかってら、はぁ。俺なんだか、邪険にされてない?」
「わかっているなら聞かないでください。」
「ひどっ!!」
ニュイの毒舌によよよと泣き崩れる男。
「えっ・・・えっ?」
その泣き真似が真に迫っていたわけではないが。
なんというか、ニュイは騙されやすい気質なのだ。
純粋に育った、と言うべきなのか。
「ちょっ・・・大丈夫ですか?泣かないでくださいよ。」
パニック状態でも背中をさすってくれるニュイに、罪悪感が募り、男は普通ならばれそうな嘘を突き通すはめになった。
「・・・だ、大丈夫だから。もう、もう大丈夫。」
「本当に?」
「・・おう。」
「本当の本当に?」
「そうだって。」
そんな寸劇を繰り返す二人を見て、シャムは独りばれないように笑っていたとか。
すいあせん、日をまたぎました。