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ニュイが目を覚ました。
辺りはすでに真っ暗。
ニュイはどうやら朝から夜まで寝てしまったようだ。
ただ目を覚ましたのはその所為ではない。
外から肉を焼くような音と、そのいい薫りが漂ってきたからだ。
ニュイは慌てて馬車の戸を開けると、そこには肉にかぶりつくシャムがいて、そ
の隣には火に焼かれている肉があった。
「肉ぅぅぅ!!」
無理もない。寝ていたとはいえ、かれこれ半日は何も食べていないんだし。と、
シャムは思った。
ただ、女の子だよね?
という疑問は残ったが。
いつのまにかニュイは、シャムの食べていた肉を奪い取って食べだした。
「あっ!!・・・ちょっと。」
「はむっ・・もぐ・・・・んぐっ。いいじゃない!!こっちは全然食べてないんだ
から!!」
「・・・まぁ・・・いいけどさ、がっつくと喉詰まるよ?」
「ぅぅあい!!(うるさい!!)」
そう言われたシャムは、肩をすくめて肉を焼くことに専念した。
(ちょっと待った・・・さっきこれシャムが食べてた・・ってことは・・・!?か・
・かん・・。)
「んんん!!!・・・けほっ・・・ふぅ。」
「・・・大丈夫?」
「大丈夫!!た・・た、ただむせただけだから!!」
「・・・・・・?」
腹の虫が治まったニュイが、あとで真っ赤になっていたのだが、シャムは気のせ
いだと思った。
―グルルルル・・・
「「・・ん?」」
夜行性なのは、草食だけではない。
食料が夜に出てくるのならば、捕食者も夜に出てくるのだ。
今回、現われたのは、狼のような生物なのだが・・・
「で、でかい・・・」のである。
高さが人の身長程もある。
立ち上がったら倍くらいではないだろうか・・・。
シャムの行動は速かった。「・・・タイプ大盾」
そう呟くと手足の袖から銀色の物体が飛び出してきて、右手に収束。
あっという間に大きな盾の形になった。
その盾を構えて突っ込み、盾を思いっきりぶつけて、狼を気絶させた。
「・・相変わらず早いわあんた。」
自分が呆然としている間に倒された獣を見て、ニュイは呆れたように言った。
「これって魔物?」
ニュイがそう問うと、シャムは首を横に振って否定した。
「じゃあこれただの狼?・・・ってあんたちょっとくらい喋りなさい!!」
そう言ってシャムにチョップをいれるニュイ。
「痛っ・・・。」
ヒットしたことに一言、殴られたより恨みに質問は無視する。
―細やかな復讐。これがシャムクオリティーなのである。
「ねぇ・・・・。」
「・・・・・。」
「質問に答えろ!!」
「・・・・・。」
「・・ちょっと・・。」
「・・・・・。」
「あぅ・・・。」
「・・・・・。」
「・・・。」
「・・・・・。」
「殴ってすいません質問に答えてください。」
「・・わかんない・・・。」
「はぁ!?こんだけ引っ張っといてわかんないの!?」
「・・・・・。」
「・・ごめんなさい。」
「・・・多分だけど、獣が魔法で巨大化しただけだと思う。」
「へぇ・・・。(初めからそう言ってくれればいいのに)」
「・・・?」
「なんでもないわ。」
「短すぎる!!」と感じた方はご一報ください・・・・?