第8話 レベルラッシュ!
咲耶とミカの復帰を待っている間、俺達3人は狩場の話をしていた。
「エルさん達はコボルトを狩ってたんだ」
「はい、東のエリアから20分程歩いた場所です」
「俺達は南門から20分位進んだ場所でゴブリンを狩ってたな」
「どうやら東西南北で出現するモブに違いがあるようだな」
「なら今回はどっちへ行く?」
「そうだなぁフルパーティーでの戦闘は初めてになるから、立ち回りの確認も含め倒しなれたゴブリンかコボルトが妥当だろうな」
「因みにPTのリーダーはツキシロさん、アンタか?」
「私はツキシロさんでいいと思いますよ。レベルも1番上ですし」
「さん、は要らないぞ!呼捨てでいいからな!」
「なら俺等もエルとアールで呼んでくれ!狩場はツキシロに任せる」
「分かった。なら東のコボルトを狩ろう」
狩場が決まった時…
「お待たせっ!」
「おかえりなさい」
「あれ、咲耶ちゃんまだ来てないの?」
「もうすぐ来るだろ?」
「遅くなっちゃった…ごめんなさい」
「ほらな!」
「これで全員揃ったな!コボルトを狩る事になったから、15分後に広場に集合な」
俺達はバラバラに準備を始めた。
俺もハンターギルドへ行き所持していた魔石17個を買取って貰い1850Gを手に入れ、新たなスキルを購入する為スキルリストを見せてもらった。
「レインアローは5000Gか…今の所持金が8880Gだから買えない事もないが…」
スキル一覧を眺めながら悩んで居た時、1つのスキルに目が止まった。
「パラライズアロー7500G…麻痺矢か」
説明には対象を10秒間麻痺させると書かれていた。
「このパラライズをくれ!」
「パラライズですね、お待ち下さい」
俺は市民証を準備しスキル書を待った。
「お待たせしました、こちらがパラライズアローのスキル書です」
市民証を翳し決済してからスキル書を読み込ませステータスを開いた。
※ ※ ※ ※ ※ ※
名前:ツキシロ
Lv:15
HP:900/900
MP:550/550
AP:250
職業:ハンター
副職:錬金術師
所持金:1380G
所持品:アイテムバッグ(小)
スキル:アロー/連射(P)/パラライズショット
※ ※ ※ ※ ※ ※
スキル連射の(P)が気になったのでエスタに確認した。
――『エスタ、スキルの横の(P)ってなんだ?』
『パッシブスキルの意味です』
――『ところであれから何分経った?』
『8分40秒です』
――『広場まで掛かる時間は?』
『マスターの移動速度で約4分です』
「よしっ、なら行くか…」
俺はギルドを出て広場へ急いだ。
広場に着くと既に咲耶、エル、アールの3人が待機していた。
「ミカはまだか?」
「まだみたいたよ」
「なら、ミカを待ってる間にPT組んどくか」
俺はパーティーウインドウを出して各自を誘った。
[咲耶がPTに参加しました。これにより取得経験値が1.2倍になります]
[エルがPTに参加しました。これにより取得経験値が1.4倍になります]
[アールがPTに参加しました。これにより取得経験値が1.6倍になります]
「1.6倍か…ウマウマだな」
「ミカちゃん入ったら1.8倍!?」
と、そこへ時間ギリギリでミカがやって来た。
「はぁはぁ…ごめん、ごめん…スキル選んでたら手間取っちゃった」
俺は直ぐミカを誘った。
[ミカンがPTに参加しました。フルパーティーにより取得経験値が2倍になります]
「ふえっ!2倍?」
「まさかの2倍かよ!」
「す、凄いね…経験値2倍になるなんて」
フルパーティーだとボーナスが加算される仕様だとは誰も思わなかった。
「じゃあ準備も終わったからコボルト狩りに行くぞ」
俺達はアールを先頭に東へ向かった。
歩くこと20分…目的地のコボルトの巣窟に到着したのだが…
「すげえー人集だな」
「これじゃあ狩り出来ないねっ」
「もう少し進んでみるか?どうする、ツキシロ」
「そうだな、先に進むか」
この人集の中で狩りをしても数十分に1体って感じになりそうなので先に進む事を選んだ。
俺達は人が少ない場所を求め先を進んだ。
そして、念願の人が少ない場所に辿り着いたのだが。
「なにあれ…」
「いや、まさかね…」
「おいおい、冗談だろ?どうすんだよリーダー」
「ははっ、まさかトロールとは…」
「トロールって言うの?あの大きいモンスター」
「大きいだけなら気にしないんだが…」
「だよな!選りに選ってトロールに当たるなんてよ…アイツは物理耐性持ちなんだよ」
今の俺達は8割がた物理攻撃になるのだ。
「今の俺達じゃ相性最悪だからな」
「少し戻った所のやつを狩るか?」
「その方が良さそうね。ここだと咲耶ちゃん1人に負担掛ける事になるでしょうから」
「えーっと、それって魔法しか効かないって事ですか?」
「ま、そういう事だよ」
「トロールはもう少しレベルが上がってからだな」
「じゃ戻るぜリーダー」
トロール討伐を避け、少し手前のモンスターを倒す事にした。
「少し人は多いが狩りは出来そうだな」
「矢で釣るから、その後はアールに任せるぞ」
「おおよ!」
俺はモンスターへ矢を放った。
[モンスターとエンカウントしました]
「挑発!」
アールの挑発スキルで敵視が俺からアールに移った。
「コカトリスかよ」
「トカゲみたいな見た目なのに、鳥をイメージさせる名前なんだぁ」
【Lv10コカトリス】しかもLv10だった。
「石化来るぞ!」
アールの声に合わせ、俺は準備していた矢を放った。
「パラライズショット!」
矢は一直線にコカトリスへ飛んでいきコカトリスの肩口に突き刺さった。
「ギャシャァァァー」
「今だ、麻痺してる間に攻め込め!」
「ナイスだツキシロ!」
「サンダーウェーブ」
咲耶の新しいスキルがコカトリスに直撃。
「ダブルスラッシュ!」
ミカも新スキルで追撃。
「シャイニングレイン」
ダメ押しにエルの光属性攻撃でコカトリスは息絶えた。
[レベルが上がりました]
[咲耶のレベルが上がりました]
[エルのレベルが上がりました]
[アールのレベルが上がりました]
[ミカンのレベルが上がりました]
[レベルが上がりました]
[咲耶のレベルが上がりました]
[エルのレベルが上がりました]
[アールのレベルが上がりました]
[ミカンのレベルが上がりました]
[咲耶のレベルが上がりました]
[エルのレベルが上がりました]
[アールのレベルが上がりました]
[ミカンのレベルが上がりました]
「えっ、えっ?なにこの通知ラッシュ」
「コカトリス1匹でこんなに上がるとはな」
「レベ上げ祭だな…」
「一気に3つも上がっちゃいましたよ」
PT恩恵が予想以上の効果を発揮した。
「PTとしての連携もバッチリだったよな」
「そうですね。とくに麻痺効果がいい役割をしていましたから」
「挑発で気を引いてくれたから、確実に当てる事が出来たってのもあるからな」
「攻撃も雷、斬撃、光と見事だったと思うぞ!盾を構えて見てたが、余裕があったからな」
「俺はミカがどんな攻撃するのかドキドキだったけどな」
「ええぇ、どういう意味よっ!」
「スラッシュあるなんて知らんかったからな…投擲するんだろうかって思ってたんだよ」
「流石のあたしでも、あの表皮に対してナイフ投げないよっ!」
「まぁまぁ、仲が宜しい事ですね。それにしても、こうもあっさり討伐出来てしまうとは良いPTって事なんでしょうね」
エルが言う様に、戦略的に全く問題ないPTなのは確かだった。
「暫くここで狩り続けるんだろ?」
「トロールはまだキツイからな…効率的に多少悪いが暫くはコカトリスを狩るのが無難だろう」
俺達は他のプレイヤーを避けながらコカトリスを探し林の中を歩き回った。
「鳥頭のトカゲさん、あまり居ないねっ」
「あっちの山岳に行ってみるか…」
「判断は任せる!」
林を突き抜ければ山々が連なる山岳地帯だった。
赤茶色の地表を見る限り火山地帯が近いのだろう。
「この地表…」
「あぁ、恐らく火山地帯だろうな」
「火山って、よくドラゴンとかの住処にされてるよね?」
「ドラゴンですか!?」
「確かに多くのゲームやアニメでは、火山=竜って設定が多いかもな」
「反対側が無難だな…」
引き返そうとした時だった。
赤茶けた地表が〝ボコッボコッ〝と音を鳴らしながら盛り上がりだした。
「何か来るかもしれんぞ!」
俺達は即座に戦闘態勢をとった。
地表が割れ現れたのは、赤茶色のボディを持つゴーレムだった。
「ちっ、今度はゴーレムかよ」
「土ゴーレムってとこか」
[モンスターとエンカウントしました]
【Lv15 グランドゴーレム】
「仕方ない…狩るしかないな」
「パラライズショット」
俺の放った麻痺矢はゴーレムに弾かれた。
「ちっ、腕で弾き落とされたか…」
「俺が注意を引くから、もう一度今のを頼む」
「挑発!」
ゴーレムの向きがアールに向いた。
「今だツキシロ!」
「パラライズショット」
放った矢はゴーレムの右腕に突き刺さった。
だが、ゴーレムは動いていた。
左腕を振り上げアールの頭上に振り下ろした。
「「アール!」」
アールは片膝をつき、盾を頭上に掲げゴーレムの攻撃を耐えていた。
俺はゴーレムのサイドに回り脚に向けて麻痺矢を放った。
ゴーレムはバランスを崩しアールへの攻撃が緩んだ。
「咲耶!雷撃だ」
俺の声に反応し咲耶が魔法を撃った。
「サンダーウェーブ」
ゴーレムの躯体全体がバチバチと放電していた。
「誰か水の攻撃出来ないか?」
「氷なら…」
「それで構わない、撃ってくれ咲耶」
「ブリザード!」
咲耶の氷魔法がゴーレムに纏わりつき体表が黒ずみ始めた。
「ミカ!スラッシュだ」
「えっ、うん…ダブルスラッシュ!」
ミカの攻撃でゴーレムの右腕と右脚が砕けた。
「エルはアールに回復を」
「ヒール!」
俺は弓を構えアローショットを連発した。
ゴーレムの身体に無数の矢が刺さった。
そして「ゴオォォオオ」と言う声のあと消滅していった。
[レベルが上がりました]
[咲耶のレベルが上がりました]
[エルのレベルが上がりました]
[アールのレベルが上がりました]
[ミカンのレベルが上がりました]
[レベルが上がりました]
[咲耶のレベルが上がりました]
[エルのレベルが上がりました]
[アールのレベルが上がりました]
[ミカのレベルが上がりました]
[レベルが上がりました]
[咲耶のレベルが上がりました]
[エルのレベルが上がりました]
[アールのレベルが上がりました]
[ミカのレベルが上がりました]
[グランドシールドを獲得しました]
「うわっまたラッシュだよっ、通知オフ欲しくなるわっ」
「レベル上がるのは嬉しいですが、ホントこれには萎えちゃいますね」
「それより、グランドシールドってのが手に入ったぞ」
「アール用だな」
「いいのか貰って?」
「盾だからな」
俺はアイテムを選択しアールに贈った。
アールは直ぐにグランドシールドを装備した。
「素材は青銅っぽいな」
「さっきの盾より全然イイと思うよっ!大きいし頑丈そうだしっ!」
「そうよね、今までは木の盾だったからね」
「取り敢えずは今日はここまでにしないか?」
「そだねっ!」
「私もそろそろお風呂に入りたいから」
「じゃあ街に戻りましょう」
全員一致で街へ帰還することにした。
街までは凡そ30分の距離があり、歩きながら転送が出来れば…などと考えていた。